2016年4月30日土曜日

ロンドン パル・マル通り(Pall Mall)

夕暮れが迫るパル・マル通り

サー・アーサー・コナン・ドイル作「ギリシア語通訳(The Greek Interpreter)」は、シャーロック・ホームズがジョン・ワトスンに対して、自分の兄であるマイクロフト・ホームズ(Mycroft Holmes)の話をするところから始まる。



マイクロフトは、シャーロックとは7歳違いで、表面上は下級役人であるが、実際には英国政府の政策全般を調整する重要なポストを務めている。シャーロックは、「マイクロフトの卓越した頭脳は自分以上で、自分よりも優れた探偵になれただろう。」と高く評価している。


パル・マル通りからトラファルガースクエア方面を望む

「君の兄さんは探偵を生業にしていないのかい?」
「とんでもない。僕にとって生活の糧になっていることが、彼にとっては道楽者の単なる趣味に過ぎないのさ。兄は数字には物凄く強いから、いくつかの政府機関で会計監査を担当しているのさ。兄はパル・マル通りに住み、毎朝角を曲がってホワイトホールまで歩いて行って、毎晩戻って来るんだ。年がら年中、兄は他の運動を全くしないし、他の場所にも出かけない。唯一の例外が、兄の家のちょうど真向かいにあるディオゲネスクラブだけなんだ。」

パル・マル通りの南側からセントジェイムズ宮殿方面を望む

'It is not his profession, then?'
'By no means. What is to me a means of livelihood is to him the merest hobby of a dilettante. He had an extraordinary faculty for figures, and its the books in some of the government departments. Mycroft lodges in Pall Mall, and he walks round the corner into Whitehall every morning and back every evening. From year's end to year's end he takes no other exercise, and is seen nowhere else, except only in the Diogenes Club, which is just opposite his rooms.'

パル・マル通りの北側からセントジェイムズ宮殿方面を望む

シャーロック・ホームズの兄であるマイクロフト・ホームズが創設した「ディオゲネスクラブ(Diogenes Club)」は、パル・マル通り(Pall Mall)にある。


パル・マル通りの場合、北側をピカデリーサーカス(Piccadilly Circus)に、西側をグリーンパーク(Green Park)に、南側をセントジェイムズパーク(St. James's Park)に、そして、東側をトラファルガースクエア(Trafalgar Square)に囲まれている。通りの東側はトラファルガースクエアから西側はチャールズ王太子(Prince Charles)が住むセントジェイムズ宮殿(St. James's Palace)まで至っている。チャリングクロス(Charing Cross)からバッキンガム宮殿(Buckingham Palace)まで延びるザ・マル通り(The Mall)とほぼ並行して走るパル・マル通り近辺には、紳士クラブが数多く集中している。


マイクロフトが創立発起人兼会員となっている「ディオゲネスクラブ」には、社交嫌いな人間ばかりが集まっている。よって、当クラブでは、「来客室以外では、他の人に口をきいてはいけない。」等、非常に風変わりな規則が厳しく運用されている。



ちなみに、シャーロック・ホームズシリーズの作者であるサー・アーサー・コナン・ドイルは、作家達が集う紳士クラブ「アセニアムクラブ(Athenaem Cub)」の会員で、このクラブはパル・マル通り沿いのウォーターループレイス(Waterloo Place)に今も存在している。


ウォーターループレイスにある紳士クラブ「アセニアムクラブ」

シャーロック・ホームズ作品は全部で60作(長編4作+短編56作)あるが、その中でマイクロフト・ホームズが登場するのは、次の4作のみである。
(1)ギリシア語通訳 (The Greek Interpreter)
(2)最後の事件(The Final Problem)
(3)空き家の冒険(The Empty House)
(4)ブルース・パーティントン型設計図(The Bruce-Partington Plans)


ウォーターループレイスからパル・マル通りを望む
左手に建つのは、紳士クラブ「アセニアムクラブ」


0 件のコメント:

コメントを投稿