2015年7月12日日曜日

ロンドン マウントストリート117番地(117 Mount Street)

ポワロとジャップ主任警部が肉を買った精肉店「アレンズ・オブ・メイフェア」(その1)

アガサ・クリスティー作「ヒッコリーロードの殺人(Hickory, Dickory, Dock)」(1955年)は、有能な秘書フェリシティー・レモン(Miss Felicity Lemon)がタイプした手紙に、エルキュール・ポワロが誤字を3つも見つけるところから始まる。ポワロがミス・レモンに尋ねると、彼女のタイプミスの原因が、彼女の姉で、今はヒッコリーロード26番地(26 Hickory Road)にある学生寮で寮母をしている未亡人のハバード夫人(Mrs. Hubbard)から彼女が相談を受けていたたためであることが判明する。


ミス・レモンによると、姉のハバード夫人が寮母を務めている学生寮では、非常に奇妙なことが連続して発生していたのである。夜会靴、ブレスレット、聴診器、電球、古いフランネルのズボン、チョコレートが入った箱、硼酸の粉末、浴用塩、料理の本やダイヤモンドの指輪(後に、食事中のスープ皿の中から見つかった)等、全く関連性がないものが次々と紛失していた。更に、それに加えて、ズタズタに切り裂かれた絹のスカーフ、切り刻まれたリュックサック、そして、緑のインクで台無しになった学校のノート等が見つかり、盗難行為だけではなく、野蛮かつ不可解な行為も横行していたのだ。

ポワロとジャップ主任警部が肉を買った精肉店
「アレンズ・オブ・メイフェア」(その2)

ここのところ、興味を引く事件がなくて退屈気味だったポワロは、これ以上、ミス・レモンのタイプミスが続くことを避けるべく、彼女への手助けを申し出る。ポワロは、まずハバード夫人に自分の事務所に来てもらい、更に詳しい事情を尋ねるとともに、学生寮に現在住んでいる学生達の情報についても、彼女からヒアリングする。ポワロの灰色の脳細胞が、一見平和そうに見える学生寮の内で何か良からぬ企みが秘かに進行していると彼に告げる。そこで、ポワロはハバード夫人と再度話をして、学生寮に住む面々に犯罪捜査にかかる講演を行うという名目で、ヒッコリーロード26番地を訪ねることに決めた。
何ら脈絡がないと思えた盗難事件であったが、学生寮内での恐ろしい連続殺人事件へと発展するのであった。

ポワロとジャップ主任警部が肉を買った精肉店
「アレンズ・オブ・メイフェア」(その3)

英国のTV会社 ITV1 が放映したポワロシリーズ「Agatha Christie's Poirot」の「ヒッコリーロードの殺人」(1995年)の回において、物語の冒頭、ポワロとスコットランドヤードのジャップ主任警部(Chief Inspector Japp)が精肉店で肉を買う場面が出てくるが、これはロンドンの高級地区メイフェア(Mayfair)内にあるマウントストリート(Mount Street)で撮影されている。
具体的に言うと、マウントストリート117番地(117 Mount Street)にある「アレンズ・オブ・メイフェア(Allens of Mayfair)」という精肉店で、バークレースクエア(Berkeley Squareーシャーロック・ホームズシリーズ「高名な依頼人(The Illustrious Client)」に出てくる)のすぐ近くに位置している。TV版の放映は1995年であるが、20年経った今でも、当時と同じままである。
なお、クリスティーの原作では、ジャップ主任警部ではなく、シャープ警部(Inspector Sharpe)が登場する。

左右に延びるサウスオードレーストリートからマウントストリートを東方面に望む

マウントストリートの西側は、ハイドパーク(Hyde Parkーシャーロック・ホームズシリーズ「独身の貴族(The Noble Bachelor)」に出てくる)に並行して南北に延びるパークレーン(Park Laneーシャーロック・ホームズ「空き家の冒険(The Emputy House)」に出てくる)から始まり、東側はバークリースクエアから北へ延びるデーヴィスストリート(Davies Street)で終わる通りである。
マウントストリートは、メイフェア地区内にあるショッピング街の一つで、特に通りの中間部分、西側のサウスオードレーストリート(South Audley Street)/東側のカルロスプレイス通り(Carlos Place)と交差する辺りには、有名なブランド店舗が立ち並んでいる。この通り沿いの建物は、1階が店舗で、2階以上がフラット等の住居になっているケースが非常に多い。

コノートホテル全景

また、マウントストリートの西端には、グローヴナーハウスホテル(Grosvenor House)が、東端近くには、コノートホテル(The Connaught)が建っていて、このショッピング街の活気を支えている。

マウントストリートガーデンズの入口に
設置されているオブジェ

マウントストリートの南側には、マウントストリートガーデンズ(Mount Street Gardens)があり、日中でも、近くにショッピング街があるとは思えない程、静かな空間が提供されている。

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