2015年6月6日土曜日

ロンドン モーティマーストリート(Mortimer Street)

モーティマーストリートを東方面に望む
―突き当たりは、リージェントストリート

サー・アーサー・コナン・ドイル作「最後の事件(The Final Problem)」の冒頭、ベーカーストリート221Bを突然訪れた犯罪界のナポレオンと呼ばれるジェイムズ・モリアーティー教授(Professor James Moriarty)に、自分から手を引くように告げられたシャーロック・ホームズは、これをキッパリと断る。そのため、ホームズはモリアーティー教授配下の者に命を狙われることになった。



1891年4月24日の昼間、オックスフォードストリート(Oxford Street)へ出かけたホームズであったが、最初は、ベンティンクストリート(Bentinck Street)とウェルベックストリート(Welbeck Street)の角で、突然暴走して来た二頭立て馬車に轢き殺されそうになった。二度目は、ヴェアストリート(Vere Street)を歩いていると、ある家の屋根からレンガが落ちてきて、ホームズの足下で粉々に砕け散ったのであった。
スコットランドヤードがモリアーティー教授を含めた一味を一網打尽にするまでの間、ホームズはジョン・ワトスンと一緒に欧州大陸へと身を隠すことにした。彼らはヴィクトリア駅(Victoria Station)から欧州大陸へ向かう計画である。ホームズからワトスンへの説明は続く。

南北に走るグレートティッチフィールドストリート
(Great Titchfield Street)から見たモーティマーストリート

「どこで君と落ち合えばいいんだい?」
「ヴィクトリア駅でだ。先頭から二両目の一等車を僕達用に予約しておく。」
「それじゃ、その客車で落ち合うんだな。」
「そうだ。」
私はホームズに今夜は自分の家に泊まっていくように言ってみたが、無駄だった。
ホームズは、私の家に居ると厄介事を招きかねないと考えており、そのため、私の家から立ち去るつもりであることが、私には明らかだった。明日の計画について早口で話をすると、彼は立ち上がり、私と一緒に庭へ出た。そして、彼はモーティマーストリートに続く塀を乗り越えると、すぐに笛を吹いて、ハンサム型馬車(二人乗り一頭立て二輪の辻馬車)を呼んだ。庭に居る私には、ホームズが馬車に乗って去って行く音が聞こえた。

モーティマーストリートとグレートティッチフィールドストリートの角に
建つ建物の外壁に架けられているブループラーク

'Where shall I meet you?'
'At the station. The second first-class carriage from the front will be reserved for us.'
'The carriage is our rendezvous, then.'
'Yes.'
It was in vain that I asked Holmes to remain for the evening. It was evident to me that he thought he might bring trouble to the roof he was under, and that that was the motive which impelled him to go. With a few hurried words as to our plans for the morrow he rose and came out with me into the garden, clambering over the wall which leads into Mortimer Street, and immediately whistling for a hansom, in which I heard him drive away.

モーティマーストリートを西方面に望む―
突き当たりは、トッテナムコートロード

モーティマーストリート(Mortimer Street)は、地下鉄オックスフォードサーカス駅(Oxford Circus Tube Station)と地下鉄トッテナムコートロード駅(Tottenham Court Road Tube Station)を結ぶオックスフォードストリート(Oxford Street)の北側にあり、東西に並行して走る通りである。
また、モーティマーストリートは、リージェンツパーク(Regent's Park)へ向かって南北に走るリージェントストリート(Regent Street)から東側に延びている。リージェントストリートの西側には、ホームズ作品に複数回登場するランガムホテル(Langham Hotelー「四つの署名」、「ボヘミアの醜聞」や「レディー・フランシス・カーファックスの失踪」に登場)やハーレーストリート(Harley Streetー「入院患者」や「悪魔の足」に登場)等がある。モーティマーストリートは東へ延びる途中、グッジストリート(Goodge Streetー「青いガーネット」に登場)と名前を変えて、トッテナムコートロード(Tottenham Court Road)に突き当たる。

モーティマーストリートとグレートポートランドストリート
(Great Portland Street)の角に建つパブ「ザ・ジョージ(The George)」

ワトスンは、複数に渡る結婚生活の都度、ベーカーストリート221Bでのホームズとの共同生活を解消しているが、パディントン駅(Paddington Station)近辺、ハーレーストリート近くのクイーンアンストリート(Queen Anne Street)や今回のモーティマーストリート等、生活のベースを変えているものの、基本的には、何かあれば、ホームズが住むベーカーストリート221Bへ直ぐに駆け付けられるように、地下鉄ベーカーストリート駅(Baker Street Tube Station)に近い場所となっている。なお、今回、ワトスンがモーティマーストリートに庭が面した家に住んでいたのは、同じ道路沿いにミドルセックス病院(Middlesex Hospital)があったためかもしれない。


モーティマーストリートを南へ下ったところにある
マーケットプレイス(Market Place)―レストランが数多く営業している

モーティマーストリートは、買い物客や観光客等で賑わうオックスフォードストリートから北側にやや離れているため、発展から取り残されていた感じがあった。ただし、賃料が非常に高いオックスフォードストリート沿いを嫌った服飾関係の店舗が近年いくつかモーティマーストリート近辺にオープンしており、少しずつではあるものの、お洒落な通りとなりつつある。


マーガレットストリート(Margaret Street)と
グレートティッチストリートの角に建つフラット
「ザ・オードレーハウス(The Audley House)」

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