画面右端の家が、A.A.ミルンが住んでいたマロードストリート13番地 |
「赤い館の秘密(The Red House Mystery)」では、英国のカントリーサイドにある「赤い館(The Red House)」と呼ばれる屋敷にて事件が発生する。
その「赤い館」には、主人のマーク・アブレット(Mark Ablett)やいとこのマシュー・ケイリー(Matthew Cayley)が住み、その日、屋敷内でハウスパーティーを催していた。その最中、マークの兄で、アブレット家の厄介者であるロバート・アブレット(Robert Ablett)が15年振りにオーストラリアから英国に戻り、マークを訪ねて来る。噂通り、ロバートは非常に粗暴なふるまいを見せる。
同じ頃、アントニー・ギリンガム(Antony Gillingham)が、彼の友人で、「赤い館」に宿泊しているビル・ベヴァリー(Bill Beveley)に会いにやって来る。屋敷内に入ったギリンガムは、事務室のドアを叩くケイリーに遭遇する。ケイリーは「伯父のロバートとマークの2人が事務室内に居るが、中から銃声のような音が聞こえた。」と話す。そこで、ギリンガムはケイリーと一緒に屋敷の外側に回り、窓から事務室を覗き込む。事務室内で人が倒れているのを発見した2人は窓から事務室内に入り込むと、ケイリーは「倒れている人はロバートで、既に死亡している。」とギリンガムに告げる。ただし、ロバートと一緒に事務所内に居たマークの姿がどこにもなかった。それでは、マークがロバートを殺害したのか?そして、マークは一体どこに姿を消したのか?
その後、警察が到着するが、事件の内容に違和感を覚えたギリンガムは、友人のべヴァリーにワトスン役を頼み、素人探偵として独自に事件の調査を進めていくのであった。果たして、事件の真相は如何に?
「赤い館の秘密」(1921年に発表+1922年に単行本化)を執筆したアラン・アレクサンダー・ミルン(Alan Alexander Milne:1882年ー1956年)は、ロンドンのキルバーン(Kilburn)生まれのスコットランド人で、児童文学作家、劇作家、そして、詩人として有名である。
彼の代表作は、以下の「クマのプーさん」シリーズで、これらは、彼の一人息子であるクリストファー・ロビン・ミルン(Christopher Robin Milne:1920年ー1996年)のために書かれたものである。
(1)「クマのプーさん(Winnie-the-Pooh)」(1926年)
(2)「プー横丁の家(The House at Pooh Corner)」(1928年)
(3)詩集「クリストファー・ロビンのうた(When We Were Very Young)」(1924年)
(4)詩集「クマのプーさんとぼく(Now We Are Six)」(1927年)
なお、上記のシリーズ作品には、挿絵画家のアーネスト・ハワード・シェパード(Ernest Howard Shepard:1879年ー1976年)がイラストを添えており、これらのイラストを含め、今日でも世界中で愛されている。
「赤い館の秘密」は、A.A.ミルンが執筆した唯一の推理長編であるが、当時としては衝撃的であったトリックから、古典的な名作の一つとして数えられている。
近くにあるロイヤルブロンプトン病院(Royal Brompton Hospital)に 面するブリテンストリート(Britten Street)沿いで花を咲かせる樹々 |
A.A.ミルンは、若かりし頃、アマチュアのクリケットチームでプレイしており、スコットランド人つながりで、同じチームには、シャーロック・ホームズシリーズの作者であるサー・アーサー・コナン・ドイルとピーターパン(Peter Pan)の生みの親で、児童文学作家で劇作家のサー・ジェイムズ・マシュー・バリー(Sir James Matthew Barrie:1860年ー1937年)も在籍していた。
A.A.ミルンがロンドンで住んでいた家がチェルシー地区(Chelsea)内にある。サークルライン(Circle Line)とディストリクトライン(District Line)が通る地下鉄スローンスクエア駅(Sloane Square Tube Station)からチェルシー地区へ向かって南西に延びるキングスロード(King's Road)の中間辺りを北側に入ったマロードストリート13番地(13 Mallord Street)がそれである。焦茶色をしたレンガ造りで、セミデタッチ形式の家がマロードストリート沿いに建ち並んでいるが、その一つにA.A.ミルンは住んでおり、それを示すイングリッシュヘリテージ(English Heritage)管理のブループラークが家の外壁に架けられている。
キングスロード沿いにあるブランドショップの建物 |
近くにあるシドニーストリート(Sydney Street)沿いに建つ セントルークス教会(St. Luke's Church)と セントルークスガーデンズ(St. Luke's Gardens) |
マロードストリートが西側で突き当たるザ・ヴェール通り(The Vale) |
キングスロード沿いには、地下鉄スローンスクエア駅の辺りからデパート、ブランドショップやレストラン等の各種店舗が軒を連ねており、特に週末は買い物客や観光客等で非常に賑わって、やや騒々しい位である。ただ、キングスロードからそれて一本内側に入ると、そこは非常に閑静な高級住宅街で、キングスロードに並行しているマロードストリート沿いもその一つである。日中でも通りを歩いている人をほとんど見かけない。マロードストリートの両側には、付近の住民が駐めている車で一杯で、車が行き交うには非常に難儀する位の狭さになっている。
ザ・ヴェール通り側から見たマロードストリート― 通りの両側に付近の住民の車が駐められており、 奥に行く程、車が行き交うのは非常に難しい |
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