2014年12月28日日曜日

ロンドン クレイグスコート(Craig's Court)


サー・アーサー・コナン・ドイル作「ソア橋の謎(The Problem of Thor Bridge)」は、次のような前置きから始まる。
「チャリングクロスにあるコックス銀行の貴重品保管庫のどこかに、旅行に伴う傷みがひどいブリキの文書箱が預けられている。文書箱の蓋には、「元インド軍所属、医学博士ジョン・H・ワトスン」という私の名前が書かれている。文書箱には大量の書類が詰まっていて、それらのほとんどは、シャーロック・ホームズが様々な折りに手がけた奇妙な事件に関する数々の記録である。それらの事件のいくつかは、少なからず興味深いものだが、完全な失敗で終わっている。最終的な解決の部分が欠けている訳で、そのままの形で語っても仕方がない。解答がない問題は、研究者にとっては面白いのかもしれないが、気楽に読書をしようとする人を怒らせることになるのは間違いない。(Somewhere in the vaults of the bank of Cox and Co., at Charing Cross, there is a travel-worn and battered tin despatch-box with my name, John H. Watson, MD, Late Indian Army, painted upon the lid. It is crammed with papers nearly all of which are records of cases to illustrate the curious problems which Mr. Sherlock Holmes had at various times to examine. Some, and not the least interesting, were complete failures, and as such will hardly bear narrating, since no final explanation is forthcoming. A problem without a solution may interest the student, but can hardly fail to annoy the casual reader.)」

コックス銀行がかつて入居していたと思われる建物

トラファルガースクエア(Trafalgar Square)/チャリングクロス交差点(Charing Cross)からホワイトホール通り(Whitehallー英国首相官邸や各省庁等が集中している通り)を南下して、左手に最初に現れる道を曲がると、クレイグスコート(Craig's Court)に入る。
クレイグスコートに突き当たったところの右手にある建物に、陸軍の資金調達や銀行業を司った「コックス銀行(Cox and Co.)」がかつて入居していた。

クレイグスコートの突き当たり正面にある建物ー現在建替え中

クレイグスコートに突き当たったところの左手にある建物―
手前にパブがあるため、外で飲んでいる客が多い

ただし、第二次世界大戦(1939年ー1945年)の際、コックス銀行が入居していた建物の周辺は、ロンドンの中でも、ドイツ軍による爆撃により甚大な被害を蒙っており、コックス銀行の建物自体も当時破壊されてしまったため、現在の建物はその後再建されたものである。よって、コックス銀行の貴重品保管庫に預けられていたワトスンの未発表事件記録は、ドイツ軍による爆撃で全て焼失してしまった可能性が非常に高い。

0 件のコメント:

コメントを投稿