2014年12月6日土曜日

ロンドン チャリングクロス病院(Charing Cross Hospital)/ 現チャリングクロス警察署(Charing Cross Police Station)

チャリングクロス病院だった建物は、
現在、チャリングクロス警察署になっている

サー・アーサー・コナン・ドイル作「高名な依頼人(The Illustrious Client)」において、匿名の依頼人のために、サー・ジェイムズ・デマリー大佐(Colonel Sir James Damery)がベーカーストリート221Bのシャーロック・ホームズの元を訪れる。1902年9月3日午後4時半のことである。

デマリー大佐によると、ド・メルヴィル将軍(General de Merville)の令嬢ヴァイオレット・ド・メルヴィル(Violet de Merville)がオーストリアのアデルバート・グルーナー男爵(Baron Adelbert Gruner:現在、英国キングストン(Kingston)近くのヴァーノンロッジ(Vernon Lodge)に居住)に夢中になり、彼と結婚しようとしていた。実際、グルーナー男爵はハンサムであるが、非常に残虐な男である。本人曰く、彼が当時結婚していた妻は事故で死亡したと言って、プラハでの裁判では罪を免れたが、本当は彼が自分の妻を自ら殺害したものと一般には考えられていた。

ド・メルヴィル将軍をはじめ、ヴァイオレット・ド・メルヴィルの周りの者は彼女にグルーナー男爵との結婚を思いとどまるよう言い含めたものの、彼女の態度は非常に頑なで、どんな説得にも耳を貸そうとはしなかった。
「ド・メルヴィル嬢とグルーナー男爵の結婚をなんとか阻止してほしい。」というデマリー大佐の依頼を受けたホームズは早速行動を開始する。ホームズは、まずキングストンに住むグルーナー男爵を訪問し、直接交渉に及ぶが、残念ながら、これは失敗に終わってしまう。次に、ホームズは、グルーナー男爵によって人生を台無しにされたキティー・ウィンター(Kitty Winter)を伴い、ロンドンのバークリースクエア(Berkeley Square)に住むド・メルヴィル嬢を訪ねて説得を試みるが、彼女は全く聞く耳を持たなかったのである。

エイガーストリートからみた
チャリングクロス警察署の建物正面

ここから、グルーナー男爵が取った次の一手は早かった。
ド・メルヴィル嬢との会見の二日後、昼の12時頃、リージェントストリート(Regent Streetーピカデリーサーカス(Piccadilly Circus)から北方面にのびる大通り)沿いにあるカフェ・ロイヤル(Cafe Royal)の前の路上で、ホームズはグルーナー男爵が放った手下達の襲撃を受けて、瀕死の大怪我を負ってしまう。そのため、怪我の手当と治療のため、ホームズはチャリングクロス病院(Charing Cross Hospital)へと運ばれたのである。

ウィリアム4世ストリート(左)とエイガーストリート(右)がぶつかる角から
チャリングクロス警察署を望む

トラファルガースクエア(Trafalgar Square)から東にのびるストランド通り(Strand)を少し北に入ると、ウィリアム4世ストリート(William IV Street)とエイガーストリート(Agar Street)がぶつかる角にある建物が、かつてチャリングクロス病院であった。ただし、現在は、チャリングクロス警察署(Charing Cross Police Station)がこの建物を使用している。
エイガーストリートを間にして、チャリングクロス警察署の反対側の建物には、ジンバブウェ大使館(Zimbabwe Embassy)があり、大使館前の歩道で同国のストリートミュージシャンと思われる人達が演奏しているのをよく見かける。

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