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英国の Harper Collins Publishers 社から現在出版されていた アガサ・クリスティー作エルキュール・ポワロシリーズ 「クリスマスプディングの冒険」のペーパーバック版表紙 |
アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)によるエルキュール・ポワロシリーズの短編で、1960年に刊行された短編集「クリスマスプディングの冒険(The Adventure of Christmas Pudding)」に収録されている「二十四羽の黒つぐみ(Four-and-Twenty Blackbirds)」(1940年)は、ある夜、エルキュール・ポワロが、チェルシー地区(Chelsea)内のキングスロード(King’s Road)沿いにあるレストラン「ギャラント エンデヴァー(Gallant Endeavour)」において、友人のヘンリー・ボニントン(Henry Bonnington)と食事をしている場面から始まる。
レストランのウェイトレスであるモリー(Molly)は、客の食べ物の好き嫌いを覚えていることが御自慢だった。
「人の好みは、いつも同じなのか?偶には、食べるものを変えたくはないのか?」と尋ねるポワロに対して、モリーは、「殿方は、お変えになりません。御婦人方は、いろいろなものがお好きですが、殿方は、いつも同じものをお召し上がりになります。」と答える。
モリーの答えを受けたヘンリー・ボニントンは、レストランの隅に座る髭の老人を指差すと、「あの老人は、10年近くの間、毎週、同じ曜日(火曜日と木曜日)の夜に現れ、同じ席で同じ食事をとるんだ。それなのに、彼の名前、住所や職業を、誰一人知らないんだ。」と、ポワロに語る。
ポワロ達が座るテーブルへ食事を運んで来たモリーが、ポワロ達が髭の老人を見ていることに気付くと、彼らに対して、「あの老人は、先週、いつもとは違う曜日(月曜日)にもやって来て、更に、今までに注文したことがない食事を注文したんです。」と話すのを聞いて、ポワロは非常に興味を惹かれる。
髭の老人を「古時計さん(Old Father Time)」と呼んでいるモリーによると、
*髭の老人が、初めての来店以来、キドニープディング(suet pudding)、黒イチゴ(blackberries)やポタージュスープ(thick soup)を注文したことは全くない。
*にもかかわらず、先週の月曜日の晩には、トマトのポタージュスープ(thick tomato soup)、ビーフステーキ(beefsteak)、キドニープディング(kidney pudding)、更に、黒イチゴのタルト(blackberry tart)を注文。
とのことだった。
3週間後、地下鉄でヘンリー・ボニントンと再会したポワロは、ヘンリー・ボニントンから「例の髭の老人が、1週間、レストランに姿を見せていない。」と告げられる。
更に興味を覚えたポワロは、チュルシー地区内で最近亡くなった人のリストの中から、髭の老人に該当する人物として、ヘンリー・ガスコイン(Henry Gascoigne)を見つけ出すと、彼の検視医であるマックアンドリュー医師(Dr. MacAndrew)の元を訪ねる。
ポワロが調査した結果、
*ヘンリー・ガスコインは、一人暮らしで、11月3日(木曜日)の夜、自宅(フラット)の階段から転落死。
*胃の内容物から、彼が亡くなったのは、食後2-3時間後。当日、午後7時過ぎにレストラン「ギャラント エンデヴァー」で食事をしていたので、彼の死亡時刻は午後10時頃と推定。
*ヘンリー・ガスコインには、キングストンヒル(Kingston Hill)に住む双子の兄であるアンソニー・ガスコイン(Anthony Gascoigne)が居たが、長い闘病生活の末、弟ヘンリーと同じ日の午後に死亡。
*双子の兄弟であるアンソニー・ガスコイン / ヘンリー・ガスコインにとって、生存している唯一の親族は、ウィンブルドン(Wimbledon)に住む甥であるジョージ・ロリマー(George Lorrimer)。
*階段から転落死したヘンリー・ガスコインのポケットには、ジョージ・ロリマーが出した手紙が入っており、手紙の日付は11月3日で、郵便局の消印は11月3日の午後4時半となっていた。
等が判明。
レストラン「ギャラント エンデヴァー」を再度訪れたポワロは、当日の夜、ヘンリー・ガスコインが食べたものが、
*マリガトニースープ(mulligatawny soup - 肉の濃厚な出し汁に鶏肉、野菜やクリーム等を入れたインドのカレースープ)
*羊肉(mutton)
*黒イチゴとリンゴ入りのパイ(blackberry and apple pie)
*チーズ(cheese)
で、いつもの習慣とは違う食事をまたしていたことが聞き付けた。
また、ヘンリー・ガスコインの歯が、年齢の割りには非常に白かったことから、階段から転落した彼が、当日の夜、黒イチゴとリンゴ入りのパイを食べたとは、どうしても考えられなかったのである。

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