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日本の出版社である株式会社早川書房から以前に発行されていた アガサ・クリスティー作「エッジウェア卿の死」の文庫版表紙 (カバーイラスト:真鍋博氏) |
英国の TV 会社 ITV 社による制作の下、「Agatha Christie’s Poirot」の第47話(第7シリーズ)として、2000年1月19日に放映されたアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「エッジウェア卿の死(Lord Edgware Dies)」(1933年)のTV ドラマ版の場合、原作対比、以下のような差異が見受けられる。
(4)
<原作>
女芸人カーロッタ・アダムズ(Carlotta Adams)による舞台が終わった後、エルキュール・ポワロとアーサー・ヘイスティングス大尉(Captain Artuhr Hastings)は、サヴォイホテル(Savoy Hotel → 2016年6月12日付ブログで紹介済)へと移動して、夕食をとる。
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サヴォイホテルの正面玄関 |
サヴォイホテルのレストランにおいて夕食をしていたメンバーは、以下の通り。
*ポワロ / ヘイスティングス大尉の2人
*ジェーン・ウィルキンスン(Jane Wilkinson - 米国出身の舞台女優)/ ブライアン・マーティン(Bryan Martin - 映画俳優)/ ウィドバーン夫妻の4人
*カーロッタ・アダムズ / ドナルド・ロス(Donald Ross - 若い俳優)の2人
なお、上記の3組は、別々に食事をしている。また、ウィドバーン夫妻の2人は、物語において、重要な役割を果たしていない。
上記の夕食の途中、ブライアン・マーティンと一緒に居たジェーン・ウィルキンスンが、ポワロの席を訪れて、内密の会話を求める。
<英国 TV ドラマ版>
女芸人カーロッタ・アダムズによる舞台が終わった後、劇場において、ジェーン・ウィルキンスンが、ポワロを呼び止めて、内密の会話を求める。
更に、カーロッタ・アダムズも、ポワロの元を訪れて、食事へ誘う。カーロッタ・アダムズによる誘いに基づいて、以下のメンバーが一緒に食事をする。
*ポワロ
*ヘイスティングス大尉
*ジェーン・ウィルキンスン
*ブライアン・マーティン
*カーロッタ・アダムズ
*ペニー・ドライヴァー(Penny Driver - カーロッタ・アダムズの友人 / 帽子屋を営む)
*ロナルド・マーシュ(Ronald Marsh - エッジウェア卿(Lord Edgware)の甥 / 劇場のプロデューサー(theatrical producer))
また、皆が食事をする場所は、原作のサヴォイホテルとは異なり、カーロッタ・アダムズによる舞台が行われた劇場のバーだと思われる。
(5)
<原作>
ジェーン・ウィルキンスンは、ポワロとヘイスティングス大尉の2人を自分が宿泊しているサヴォイホテルの3階の部屋へ誘い、そこで夫のエッジウェア卿との離婚の段取りを依頼する。
<英国 TV ドラマ版>
カーロッタ・アダムズ達との食事が終わった後、劇場のバーにおいて、ジェーン・ウィルキンスンは、ポワロに対して、夫のエッジウェア卿との離婚の段取りを依頼する。
(6)
<原作>
ジェーン・ウィルキンスンから「離婚話に応じない夫を説得してもらいたい。」という依頼を受けたポワロ(とヘイスティングス大尉)が、その2-3日後、リージェントゲート(Regent Gate → 2025年3月23日付ブログで紹介済)にあるエッジウェア卿の邸を訪問したところ、彼は「6ヶ月も前に、離婚に同意する旨を彼女宛に手紙で既に伝えた。」と答えるのであった。(但し、エッジウェア卿がその手紙をどこに送ったのかについては、言及されていない。)話のくい違いに納得がいかないポワロであったが、そのまま帰宅せざるを得なかった。
リージェンツパーク内に設置されている リージェンツパークの俯瞰地図 |
<英国 TV ドラマ版>
ジェーン・ウィルキンスンから「離婚話に応じない夫を説得してもらいたい。」という依頼を受けたポワロ(とヘイスティングス大尉)が、リージェントゲートにあるエッジウェア卿の邸を訪問したところ、彼は「1ヶ月前に、離婚に同意する旨を彼女宛に手紙で既に伝えた。」と答えている。また、エッジウェア卿は、その手紙をジェーン・ウィルキンスンが出演している リージェンシー劇場(Regency Theatre)宛に送った旨も告げている。
(7)
<原作>
リージェントゲートのエッジウェア卿邸を出たポワロ達は、サヴォイホテルへ赴き、同ホテルに宿泊しているジェーン・ウィルキンスンに対して、「6ヶ月も前に、エッジウェア卿は、離婚に同意する旨を貴方宛に手紙で既に伝えている」旨を告げている。
しかし、ポワロから話を聞いた彼女は、「夫からそのような手紙を受け取っていない。」と答えている。
<英国 TV ドラマ版>
リージェントゲートのエッジウェア卿邸を出たポワロ達は、ジェーン・ウィルキンスンのフラットを訪れ、彼女に対して、「1ヶ月も前に、エッジウェア卿は、離婚に同意する旨を貴方宛に手紙で既に伝えている」旨を告げている。
(8)
<原作>
上記の後、物語は翌朝(6月30日の午前9時半)へと飛び、スコットランドヤードのジャップ警部(Inspector Japp)が、ポワロの元を訪れる。
チャーターハウス スクエア6-9番地 フローリンコート (Florin Court, 6-9 Charterhouse Square → 2014年6月29日付ブログで紹介済)が、 ポワロが住むホワイトヘイヴンマンションズ(Whitehaven Mansions)として、撮影に使用されている。 |
ジャップ警部から、ポワロとヘイスティングス大尉の2人は、「前夜、エッジウェア卿が、リージェントゲートの自邸の書斎において、頸部を刺され、殺害された。」と知らされる。
<英国 TV ドラマ版>
原作とは異なり、英国 TV ドラマ版の場合、エッジウェア卿が、リージェントゲートの自邸の書斎において、頸部を刺され、殺害されるまでの経緯が、順番に語られる。
*ジェラルディン・マーシュ(Geraldine Marsh - エッジウェア卿の先妻の娘)が、リージェントゲートのエッジウェア卿邸を出て、ロイヤルオペラハウス(Royal Opera House → 2015年8月29日付ブログで紹介済)のオペラ観劇に出かける。
ボウストリート(Bow Street)の南側から見たロイヤルオペラハウス |
*エッジウェア卿は、自邸の書斎において、秘書のミス・キャロル(Miss Carroll)から手渡された書類に署名を行う。
*ポワロ、ヘイスティングス大尉、ミス・フェリシティー・レモン(Miss Felicity Lemon)とジャップ主任警部(Chief Inspector Japp)の4人は、ポワロのフラットにおいて、ポワロが用意した食事でディナー中。
*ジェーン・ウィルキンスンは、サー・モンタギュー・コーナー(Sir Montague Corner - ロンドンのホルボーン地区(Holbron)に在住)が開催した晩餐会に出席中。食事の途中である午後9時半頃、彼女宛に電話があり、電話口へ呼び出される。
*ペニー・ドライヴァーが経営する帽子屋をブライアン・マーティンが訪れる。
そして、エッジウェア卿邸の前にある電話ボックスから女性が出て来て、エッジウェア卿邸へと向かう。
青色や緑色のレンガが鮮やかに輝くデベナムハウス (Debenham House → 2016年2月21日付ブログで紹介済)が、 エッジウェア卿邸の外観として、撮影に使用されている。 |
執事のアルトン(Alton)が、玄関口で彼女を出迎え、エッジウェア卿の書斎へと案内する。秘書のミス・キャロルは、階段の上から、アルトンに案内されて、エッジウェア卿の書斎へと向かう女性を見かける。
(9)
<原作>
スコットランドヤードのジャップ警部が、ポワロの元を訪れて、ポワロとヘイスティングス大尉の2人に対して、「前夜、エッジウェア卿が、リージェントゲートの自邸の書斎において、頸部を刺され、殺害された。」と告げるが、ポワロ自身は、エッジウェア卿邸へ赴いて、エッジウェア卿の死体を調べることはしていない。
<英国 TV ドラマ版>
エッジウェア卿の刺殺体は、翌朝の8時に、執事のアルトンが発見。
スコットランドヤードのジャップ主任警部からの知らせを受けて、ポワロとヘイスティングス大尉の2人は、リージェントゲートのエッジウェア卿邸へと呼びされ、ジャップ主任警部に出迎えられる。

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