2025年3月5日水曜日

アガサ・クリスティー作「二十四羽の黒つぐみ」(Four-and-Twenty Blackbirds Agatha Christie)- その1

英国の Harper Collins Publishers 社から以前出版されていた
アガサ・クリスティー作エルキュール・ポワロシリーズ
「クリスマスプディングの冒険」のペーパーバック版表紙


アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1953年に発表したミス・マープルシリーズの長編第6作目「ポケットにライ麦を(A Pocket Full of Rye)」は、マザーグース(Mother Goose)の童謡の歌詞通りに、殺人事件が発生する「見立て殺人」をテーマにした作品である。


ビル・ブラッグ氏Mr. Bill Braggが描く
ミス・マープルシリーズの長編第6作目である

「ポケットにライ麦を」の一場面で、

投資信託会社の社長であるレックス・フォーテスキュー(Rex Fortescue)が、

オフィスにおいて、朝の紅茶を飲んだ後、急逝する前のシーンが描かれている。

床に伸びた影は、彼の個人秘書である

アイリーン・グローヴナー(Miss Irene Grosvenor)だと思われる。

Harper Collins Publishers 社から出版されている

「ポケットにライ麦を」のペーパーバック版の表紙には、

ビル・ブラッグ氏によるイラストが、

紅茶が入ったポットの形に切り取られているものが使用されている。


この童謡は「6ペンスの唄を歌おう(Sing a Song of Sixpence → 2024年9月7日付ブログで紹介済)」で、物語において、ミス・ジェイン・マープルがスコットランドヤードのニール警部(Inspector Neele)に対して歌って聞かせている。

なお、歌詞は以下の通り。


< 英語原詞 >


Sing a song of sixpence,

A pocket full of rye,
Four and twenty blackbirds,
Baked in a pie.


When the pie was opened,
The birds began to sing,
Was not that a dainty dish,
To set before the king ?

The king was in his counting-house,
Counting out his money,
The queen was in the parlour,
Eating bread and honey.

The maid was in the garden,
Hanging out the clothes,
There came a little blackbird,
And snapped off her nose.

< 日本語訳(宇野利泰訳) >

六ペンスの歌をうたおう

ポケットに ライ麦を

詰めて歌うは 街の唄

くろつぐみを二十四 パイに焼き

切って差出しゃ 鳴きいだす

お城料理の すばらしさ


王様お倉で 宝をかぞえ

女王は広間で パンに蜂蜜

若い腰元 庭へ出て

乾しに並べた お召もの

そこへ小鳥が 飛んできて

可愛いお鼻を 突っついた


ジズソーパズル内の右側の窓の外の縁には、
ミス・ジェイン・マープルが節をつけて歌い出したマザーグースの童謡の中に出てくる
黒鶫(クロツグミ)がとまっている。-
ジグソーパズル「アガサ・クリスティーの世界(The World of Agatha Christie)」の一部


黒鶫<クロツグミ>(blackbird)は、スズメ目ツグミ科の鳥で、雄の場合、体が黒く、目の周りが黄色で、嘴も黄色い。ヨーロッパにおいて、黒鶫は「春の訪れを告げる鳥」として親しまれており、スウェーデンでは、国鳥に指定されている。


童謡「6ペンスの唄を歌おう」内に出てくる「二十四羽の黒つぐみ(Four and twenty blackbirds)」を題名とするエルキュール・ポワロシリーズの作品が存在する。


それは、短編「二十四羽の黒つぐみ(Four-and-Twenty Blackbirds)」で、1960年に刊行された短編集「クリスマスプディングの冒険(The Adventure of Christmas Pudding)」に収録されている。


短編「二十四羽の黒つぐみ」は、米国において、「コーリアズマガジン(Collier’s Magazine)」1940年11月9日号に発表された後、英国では、「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」1941年3月号に、「ポワロと常連のお客(Poirot and the Regular Customer)」と言う題名で掲載されている。


物語は、ある夜、エルキュール・ポワロが、チェルシー地区(Chelsea)内のキングスロード(King’s Road)沿いにあるレストラン「ギャラント エンデヴァー(Gallant Endeavour)」において、友人のヘンリー・ボニントン(Henry Bonnington)と食事をしている場面から始まる。 


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