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1929年2月7日(木)の晩(午後7時半過ぎ)、名探偵エルキュール・ポワロは、お気に入りの珈琲館「Pleasant’s Coffee House」において、一人、至福の時を過ごしていた。しかし、そんな束の間の休息時間は、一人の若い女性によって破られる。
ポワロが居る珈琲館へ、半狂乱の女性が駆け込んで来たのである。彼女の様子から察するに、彼女は何者かに追われているようだった。ポワロが彼女に事情を尋ねると、ジェニー(Jenny)と名乗った彼女は、「自分は狙われていて、殺される可能性が高いが、誰にも止められない。自分が殺されたとしたら、それは正義が為されたことを意味する。だから、自分が殺されても、決して警察にも通報しないでほしい。」と、ポワロに対して懇願すると、夜の街へと姿を消した。
同じ頃、ロンドンの一流ホテルの一つであるブロックシャムホテル(Bloxham Hotel)では、大事件が発生していた。
ホテルの宿泊客3人が、各自の部屋で毒殺されているのが、発見されされたのである。被害者達は、以下の通り。
(1)ハリエット・シッペル夫人(Mrs. Harriet Sippel):121号室に宿泊 - 毒が入った紅茶を飲んで死亡。
(2)リチャード・ネグス氏(Mr. Richard Negus):238号室に宿泊 - 毒が入ったシェリー酒を飲んで死亡。
(3)アイダ・グランズベリー嬢(Miss Ida Gransbury):317号室に宿泊 - 毒が入った紅茶を飲んで死亡。
午後8時過ぎ、「121号室 / 238号室 / 317号室の宿泊客達が、安らかな眠りにつくことは、決してない(May They Never Rest in Peace. 121. 238. 317.)。」と書かれたメモが、何者かによって、ホテルのフロントに置かれているのが見つかり、ホテル側がマスターキーを使って調べたところ、3人とも死亡しているのが判ったのだ。しかも、全ての被害者の口の中に、「PIJ」と刻まれたモノグラム(イニシャルの図案)付きのカフスボタンが入れられていたのである。一体、何の為に?
友人で、スコットランドヤードの若手警部であるエドワード・キャッチプール(Edward Catchpool)から事件の相談を受けたポワロは、捜査に乗り出す。被害者は、珈琲館に駆け込んで来たジェニーと名乗る女性ではなかったが、二つの出来事には、何か関連性があるのだろうか?
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