2020年12月20日日曜日

P・D・ジェイムズ作「ヤドリギ殺人事件他」(The Mistletoe Murder and Other Stories by P. D. James) - その2

英国の Faber & Faber Ltd. が発行する
P・D・ジェイムズ作「ヤドリギ殺人事件他」のペーパーバック版の裏表紙
(Cover design by Faber Cover Illustration Ms. Angela Harding)

P・D・ジェイムズ(Phyllis Dorothy James:1920年ー2014年)作の短編集「ヤドリギ殺人事件他(The Mistletoe Murder and Other Stories)」には、4つの作品が収録されている。

前半の2作品はノンシリーズで、後半の2作品には、スコットランドヤードのアダム・ダリグリッシュシリーズに属している。


(3)「ボックスデールの相続(The Boxdale Inheritance)」(1979年)


スコットランドヤードのアダム・ダリグリッシュ主任警視(Chief Superintendent Adam Dalgliesh)は、彼の父親の友人で、彼の名付け親でもあるヒュバート・ボックスデール司祭(Canon Hubert Boxdale)の元を訪れていた。


ボックスデール司祭は、ある件で頭を悩ませていた。

彼の大伯母に該るアリー(Great Aunt Allie)が、彼女の88歳の誕生日を祝うために、ある富豪がヨットで催したパーティーの席上、ヨットから転落して死亡した。彼女の死去に伴い、ボックスデール司祭は、彼女の遺産である5万ポンドを相続することになった。

ところが、彼の大伯母には、67年前に、年老いた夫を砒素で毒殺したのではないかという疑惑があったのである。



(4)「クリスマスの12の手掛かり(The Twelve Clues of Christmas)」(1996年)


雪が降り積もるクリスマスイヴ(12月24日)の夕方、巡査部長(Sergeant)に昇進したばかりのアダム・ダリグリッシュは、サフォーク州(Suffolk)にある叔母のコテージでクリスマスを過ごすべく、車を走らせていた。


そこへ、暗闇の中から、突然、彼の車のまでに、人が飛び出してきた。車を停めて、窓を下ろしたアダムに対して、ヘルムート・ハーカーヴィル(Helmut Harkerville)と名乗る男性は、「ハーカーヴィルホール(Harkerville Hall)で、叔父が自殺した。家の電話が故障中なので、警察に連絡をとるために、電話がある場所まで乗せて行ってほしい。」と頼み込む。

アダムは、5分程前に公衆電話ボックスを通り過ぎたばかりで、彼の叔母のコテージまでは、後10分程だった。叔母に迷惑をかけることを避けるため、アダムは、ヘルムートを乗せて、公衆電話ボックスのところまで戻ることにした。


警察への通報と叔母への連絡を受けたアダムは、ヘルムートを車でハーカーヴィルホールへ送って行くことになったが、それだけでは済まず、この事件に関わっていくことになる。


本短編集は、クリスマスの時期を舞台にした作品が多く、クリスマス用に出版社である Faber & Faber Ltd. が企画したものではないかと思う。

ノンシリーズ2作品とアダム・ダリグリッシュシリーズ2作品という組み合わせになっているが、特に、ノンシリーズ2作品については、著者であるP・D・ジェイムズが物語のラストに記した一文が、非常に印象深い。


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