東京創元社が発行する創元推理文庫「白い僧院の殺人」の表紙− カバーイラスト:ヤマモト マサアキ氏 カバーデザイン:折原 若緒氏 カバーフォーマット:本山 木犀氏 |
「白い僧院の殺人(The White Priory Murders)」は、米国のペンシルヴェニア州(Pennsylvania)に出生して、英国人のクラリス・クルーヴス(Clarice Cleaves)との結婚後、1932年から1946年にかけて英国のブリストル(Bristol)に居を構えていた米国の推理作家で、「不可能犯罪の巨匠」とも呼ばれているジョン・ディクスン・カー(John Dickson Carr:1906年ー1977年)が、別のペンネームであるカーター・ディクスン(Carter Dickson)名義で1934年に発表した推理小説で、「黒死荘の殺人(The Plague Court Murders→2018年5月6日 / 5月12日付ブログで紹介済)」(1934年)に続くヘンリー・メルヴェール卿(Sir Henry Merrivale)シリーズの長編第2作目に該る。当作品は、1934年に米国のモロウ社(Morrow)から、そして、1935年に英国のハイネマン社(Heinemann)から出版された。
物語は、米国の外交官を務めるジェイムズ・ボイントン・ベネットが、英国の陸軍省情報部長の要職にある伯父のヘンリー・メルヴェール卿のオフィスを訪れるところから始まる。
女優のマーシャ・テイト(Marcia Tait)は、ロンドンの舞台において、彼女の経歴のデビューを飾ったものの、残念ながら、劇評家達に「彼女に芝居は無理だ。」と手厳しくやり込められた結果、失意のうちに米国のハリウッドへと渡った。奇跡的な巡り合わせで知り合った映画監督であるカール・レインジャーの手腕と広報担当者であるティム・エメリーの成果により、6ヶ月後、マーシャ・テイトは、ハリウッドにおいて、人気女優となった。
そんなマーシャ・テイトが、突然、ハリウッドからロンドンに戻って来ることになった。新作の舞台に主演するためであった。彼女の野心は、ただ一つ。以前、ロンドンで彼女の芝居を酷評した劇評家達に一泡吹かせて、復讐するのが、目的と言えた。
彼女が主演する予定の新作の芝居は、以下の通り。
・演目: チャールズ2世(Charles IIー王政復古期ステュアート朝のイングランド、スコットランド及びアイルランドの王 / 1630年ー1685年 在位期間:1660年ー1685年)の私生活
・主演: マーシャ・テイト、ジャーヴィス・ウィラード(英国きっての性格俳優)
・製作: ジョン・ブーン
・脚本: モーリス・ブーン(ジョン・ブーンの兄 / オックスフォード大学の元首席学監で、「17世紀の政治経済史講義」を執筆)
ジョン・ブーンの友人で、マーシャ・テイトの魅力にあてられた新聞業界の大物であるカニフェスト卿が、その芝居に出資するという話も出ていた。
ハリウッドのシネアーツ社は、マーシャ・テイトに対して、1ヶ月の猶予を与え、撮影所に早く戻るよう、伝えたものの、彼女にはハリウッドへ戻るつもりは全くなく、映画監督のカール・レインジャーと広報担当者のティム・エメリーの二人が、彼女をハリウッドへ連れ戻すべく、ロンドンへと向かう前に彼女が滞在していたニューヨークへと慌ててやって来た。
ジェイムズ・ベネットは、ニューヨークにおいて、マーシャ・テイト一行と知り合いになった。米国政府から英国政府に宛てた決まり文句だらけの親善文書を携えて、英国へ赴くことになったジェイムズ・ベネットは、偶然、マーシャ・テイト一行と同じ定期航路船ベレンガリア号に乗船して、一緒にロンドンに到着したのであった。
そんな不穏な雰囲気が流れる中、ある事件が勃発する。何者かがロンドンに居るマーシャ・テイトの元へ毒入りチョコレートの箱を送ってきたのである。
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