ニューエンドスクエア通りの東端から見上げたバーハウス |
米国のペンシルヴェニア州(Pennsylvania)に出生して、英国人のクラリス・クルーヴス(Clarice Cleaves)との結婚後、1932年から1946年にかけて英国のブリストル(Bristol)に居を構えていた米国の推理作家で、「不可能犯罪の巨匠」とも呼ばれているジョン・ディクスン・カー(John Dickson Carr:1906年ー1977年)が1939年に発表した推理小説で、ギディオン・フェル博士(Dr. Gideon Fell)シリーズの長編第11作目に該る「テニスコートの殺人」(The Problem of the Wire Cage→2018年8月12日 / 8月19日付ブログで紹介済)において、フランク・ドランス(Frank Dorrance)の絞殺死体が発見されたテニスコートがあるニコラス・ヤング邸は、ロンドン北西部郊外の高級住宅街ハムステッド地区(Hampstead→2018年8月26日付ブログで紹介済)内にあるという設定になっているが、ハムステッド地区内には、バーハウス(Burgh House)と呼ばれる建物が所在している。
バーハウスは、地理的には、地下鉄ハムステッド駅(Hampstead Tube Station)とハムステッドヒース(Hampstead Heath→2015年4月25日付ブログで紹介済)の間に位置している。
バーハウスへ行くには、二通りの行き方がある。一つ目は、地下鉄ハムステッド駅の前を通って、ハムステッドヒースへと向かうヒースストリート(Heath Street)を北上し、途中の右手に見えるニューエンド通り(New End)へと右折。ニューエンド通りがニューエンドスクエア通りへと名前を変え、そして、更にウィローロード(Willow Road)へと名前を変える四つ角の北西部分に、バーハウスは建っている。二つ目は、地下鉄ハムステッド駅の前を通って、地下鉄ベルサイズパーク駅(Belsize Park Tube Station)へと向かうハムステッドハイストリート(Hampstead High Street)をまず東へと進み、途中の左手に見えるフラスクウォーク(Flask Walk)へと左折して、北上する。フラスクウォークがウェルウォーク(Well Walk)へと名前を変える四つ角の北西部分に、バーハウスはある。バーハウスは、非常に閑静な高級住宅街内に所在している。
ニューエンドスクエア通り近辺には、 高級住宅街が広がっている |
バーハウスは、1704年に建設された。建設当時、英国は、ステュアート朝最後の君主で、最後のイングランド王国 / スコットランド王国君主(在位期間:1702年ー1707年)、最初のグレートブリテン王国君主(在位期間:1707年ー1714年)およびアイルランド女王だったアン女王(Anne Stuart:1665年ー1714年)が統治していた。
当時、ハムステッド鉱泉(Hampstead Wells Spa)がまだ湧き出ていた頃で、当スパのウィリアム・ギボンス医師(Dr. William Gibbons)が1707年にバーハウスに移り住んだ。
バーハウスの入口 |
その後、バーハウスの使用者(住民)は、個人や英国陸軍等を転々とするが、有名なところでは、小説「ジャングルブック(The Jungle Book)」等で知られる英国の小説家 / 詩人であるジョーゼフ・ラドヤード・キップリング(Joseph Rudyard Kipling:1865年ー1936年)の娘夫婦が、1933年から1937年までの間、バーハウスに住んでおり、ジョーゼフ・ラドヤード・キップリングは、亡くなる直前の1936年に、娘夫婦に会うために、バーハウスを訪れている。
ニューエンドスクエア通りの反対側から見たバーハウスの全景 |
ジョーゼフ・ラドヤード・キップリングの娘夫婦が住んだ後、暫くの間、バーハウスは無人であったが、当時のハムステッド区議会(Hampstead Borough Council)が1946年にバーハウスを購入して、1947年にコミュニティーセンターとしてオープンした。
その後、バーハウス内の各所に腐食部分が見つかったため、当時のカムデン区議会(Camden Council)が1977年にバーハウスを無期限に閉鎖した。カムデン区議会としては、バーハウスを改修の上、商業目的に使用する計画をしていたが、ハムステッド地区の住民による「Keep Burgh House」運動という大反対を受けたため、バーハウスをハムステッド地区の住民へと貸し出すこととなった。
ウェルウォーク(Well Walk)から見上げたバーハウス |
そして、改修工事後、1979年9月、バーハウスは、ハムステッド地区の歴史や文化等を伝える「ハムステッド博物館(Hampstead Museum)」として再オープンして、現在に至っている。ハムステッド博物館としては、主に 1F (日本で言う2階)が使用されており、それ以外のスペースは、ハムステッド地区の住民によるアート作品等の展示会に使われている他、コンサートや結婚式等も行われている。なお、地階には、カフェが併設されている。
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