ボールコート内に建つシンプソンズ タヴァーン |
アガサ・クリスティー作「二十四羽の黒つぐみ(Four and Twenty Blackbirds)」は、1960年に刊行された短編集「クリスマスプディングの冒険(The Adventure of Christmas Pudding)」に収録されている作品である。
ある夜、エルキュール・ポワロが、友人のヘンリー・ボニントン(Henry Bonnington)と一緒に、友人行きつけのレストランで食事をしていた時のことだった。ヘンリー・ボニントンがある席に座る髭の老人を指差すと、「あの老人は同じ曜日(火曜日と木曜日)に現れ、同じ席で同じ食事をとるんだ。」と、ポワロに語る。ポワロ達が座るテーブルへ食事を運んで来たウェイトレスが、ポワロ達が髭の老人を見ていることに気付くと、彼らに対して、「あの老人は、先週、いつもとは違う曜日(月曜日)にもやって来て、今までに注文したことがない食事を注文したんです。」と話すのを聞いて、ポワロは非常に興味を惹かれる。
コーンヒル通り側にあるボールコートの入口 |
ボールコートの入口には、 奥にシンプソンズ タヴァーンがあることを示す看板が架けられている |
3週間後、地下鉄でヘンリー・ボニントンに再会したポワロは、あの老人が1週間近くレストランに姿を見せていないと知らされる。髭の老人の行動に興味を覚えたポワロであったが、その老人が死亡していたことを新聞で知ることになる。ポワロが老人のかかりつけの医師に会ったところ、老人は独り暮らしで、自宅の階段から誤って転落したことによる事故死だと告げられる。その直前、老人は例の行きつけのレストランで食事をしたようである。そうだとすると、デザートにブラックベリーのタルトを食べた筈だが、老人の歯は年齢の割には白くきれいであったと言う。
果たして、老人の死は、本当に事故死だろうか?ポワロの灰色の脳細胞が動き出す。
コーンヒル通り側からボールコートの奥を望む |
英国の TV 会社 ITV1 で放映されたポワロシリーズ「Agatha Christie's Poirot」の「二十四羽の黒つぐみ」(1989年)の回において、物語の冒頭、友人の歯科医ボニントンと一緒に、ポワロがボニントン行きつけのレストランで夕食を注文しようとしていると、レストランのウェイトレスであるモリー(Molly)が彼ら二人に話しかける。モリーによると、今も店内に居る常連客の老人は、いつも同じ曜日(水曜日の晩と土曜日の晩)にやって来て、同じ席に座り、同じ注文をするのだが、何故か、先週は違う曜日(月曜日の晩)にも現れて、いつもと違う注文をしたと言う。モリーの話を聞いたポワロは、その常連客である老人がとったいつもと違う行動に興味を惹かれるのであった。
ボールコート内の風景 |
ボールコート内から空を見上げたところ |
アガサ・クリスティーの原作では、ポワロが友人のボニントンと一緒に夕食をとったレストランは、ロンドンの高級住宅街チェルシー地区(Chelsea)のキングスロード(King's Road)にある「Gallant Endeavour」となっているが、TV 版では、シンプソンズ タヴァーン(Simpson's Tavern)がレストランの外観として、撮影に使用されている。
シンプソンズ タヴァーンの建物 |
シンプソンズ タヴァーンは、ロンドンの経済活動の中心地であるシティー地区(City)内にある。具体的には、地下鉄バンク駅(Bank Tube Station)からコーンヒル通り(Cornhill)を東へ進み、しばらく行った右手にあるバーチンレーン(Birchin Lane)の次に右手に見えるボールコート(Ball Court)という細い通りを入った突き当たりに、シンプソンズ タヴァーンは建っている。このような細い通りの奥にレストランがあるとは通常思えないので、コーンヒル通り側、そして、裏通りであるキャッスルコート(Castle Court)側にも、シンプソンズ タヴァーンがここにあることを示す看板や金属プレートが架けられている。
シンプソンズ タヴァーンの入口 |
元々、ロンドン東部で魚料理を出すレストランを営業していたトマス・シンプソン(Thomas Simpson)が、1757年に当地にシンプソンズ タヴァーンを開店して、以降250年以上にわたって営業を続けている。
女性の入店が認められるようになったのは、1916年になってからである。
ボールコート内からコーンヒル通りを逆に望む |
ちなみに、シンプソンズ タヴァーンの営業時間は、
・月曜日: 午前11時半ー午後3時半(ラストオーダー)
・火曜日ー金曜日: 午前8時半ー午後3時半(ラストオーダー)
・土曜日ー日曜日: 休み
となっている。
裏通りのキャッスルコート側にも、 シンプソンズ タヴァーンが奥にあることを示す 金属プレートが架けられている |
アガサ・クリスティーの原作では、ポワロと一緒に食事をする友人ヘンリー・ボニントンの職業については触れられていないが、TV 版では、歯科医となっている。
一方、常連客である髭の老人がレストランで食事をする曜日に関して、アガサ・クリスティーの原作では、「火曜日と木曜日」となっているが、TV 版では、「水曜日と土曜日」となっていて、細かい点において、設定の差異が見受けられる。
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