2017年2月19日日曜日

ロンドン デヴォンシャークローズ(Devonshire Close)

TV 版のポワロシリーズ「ホロー荘の殺人「」において、物語の冒頭、
外科医ジョン・クリストウが訪れた不倫相手の彫刻家ヘンリエッタ・サヴァナクが住む
アトリエ兼フラットの撮影が行われたデヴォンシャークローズ

アガサ・クリスティー作「ホロー荘の殺人(The Hollow)」(1946年)は、ある年の9月末の週末、行政官だったサー・ヘンリー・アンカテル(Sir Henry Angkatell)と夫人のルーシー・アンカテル(Lucy Angkatell)は、友人のクリストウ夫妻をロンドン近くの自宅ホロー荘へ招待して、彼らをもてなす計画をするところから、話が始まる。


夫のジョン・クリストウ(John Christow)はハーリーストリート(Harley Streetー2015年4月11日付ブログで紹介済)で成功をおさめた外科医で、夫人のガーダ・クリストウ(Gerda Christow)は純真かつ無邪気な性格で、夫のジョンに対して崇拝に近い位の愛情を捧げていた。ただ、ガーダは簡単な室内ゲームも満足にできないのが、ルーシー・アンカテルにとって頭の痛い点だった。

デヴォンシャークローズの入口

クリストウ夫妻の他には、以下の人物が招待されていた。

(1)ミッジ・ハードキャッスル(Midge Hardcastle):ルーシー・アンカテルの従妹で、服飾関係の店員として働いている。
(2)エドワード・アンカテル(Edward Angkatell):サー・ヘンリー・アンカテルの従弟で、アンカテル家の領地エインズウィック(Ainswick)の法廷相続人。
(3)ヘンリエッタ・サヴァナク(Henrietta Savernake):彫刻家
(4)デイヴィッド・アンカテル(David Angkatell):ルーシー・アンカテルの従兄弟で、学生。

更に、ルーシー・アンカテルがバグダッドで出会ったエルキュール・ポワロが偶然ホロー荘の近くに別荘を借りていたため、彼女は彼を日曜日の昼食に招いていた。


招待客が到着して、週末が始まると、ルーシー・アンカテルの心配が的中することになった。ミッジ・ハードキャッスルはエドワード・アンカテルのことを愛していたが、当人のエドワード・アンカテルはヘンリエッタ・サヴァナクにエインズウィックの女主人になってほしいと思っている。ところが、ヘンリエッタ・サヴァナクはジョン・クリストウと不倫関係にあったのだ。そして、デイヴィッド・アンカテルはそんな彼らを嫌っていた。


ポワロの向かいの別荘を借りている女優のヴェロニカ・クレイ(Veronica Clay)がきらしたマッチを借りようとホロー荘へとやって来たで、状況は更に緊迫度を増した。ヴェロニカ・クレイは以前ジョン・クリストウと交際しており、彼に外科医の仕事を捨てて、自分と一緒にハリウッドへ来るように誘ったが、彼は彼女の要請を断り、彼女としては、それを良しとはしていなかった。そして、これが15年振りの再会であった。ジョン・クリストウは、以前のようにヴェロニカ・クレイの魅力に抗いできず、結局、彼女を別荘まで送って行くことになった。ジョン・クリストウが、午前3時にヴェロニカ・クレイの別荘からホロー荘へと戻って来た際、誰かに見られているように感じた。ところが、誰の姿も見当たらず、妻のガーダが寝室で寝ていることを確認すると、ジョン・クリストウは安心して、床に就くのであった。


翌日の日曜日、ルーシー・アンカテルに昼食へ招かれたポワロは、ホロー荘を訪れた。執事のガジョン(Gudgeon)に案内されて、昼食前の一杯のため、プールの側の東屋(あずまや)へ向かったポワロであったが、プールのところにホロー荘の主夫妻や招待客達が集まっているのを目にする。そして、彼らが囲んでいたのは、銃で撃たれ、血を流して倒れているジョン・クリストウと、銃を手にして傍らに立つガーダ・クリストウという芝居染みた光景であった。当初、ポワロは、名探偵である自分を歓迎するための余興だと考えたが、直ぐに冗談事ではないことが判る。正に、ポワロの目の前で、本物の殺人事件が発生したのであった。


英国の TV 会社 ITV1 で放映されたポワロシリーズ「Agatha Christie's Poirot」の「ホロー荘の殺人」(2004年)では、物語の冒頭、ジョン・クリストウが不倫相手であるヘンリエッタ・サヴァナクのアトリエ兼フラットを車で訪れるシーンから始まる。物語では、ヘンリエッタ・サヴァナクのアトリエ兼フラットは、(ロンドンの高級住宅街の一つである)チェルシー地区(Chelsea)にあると言及されているが、実際には、チェルシー地区ではないデヴォンシャークローズ(Devonshire Close)で撮影されている。


デヴォンシャークローズは、シティー・オブ・ウェストミンスター区(City of Westminster)のマリルボーン地区(Marylebone)内にある。具体的には、地下鉄オックスフォードサーカス駅(Oxford Circus Tube Station)方面から地下鉄マーブルアーチ駅(Marble Arch Tube Station)へと西に向かうオックスフォードストリート(Oxford Streetー2016年5月28日付ブログで紹介済)とユーストン駅(Euston Stationー2015年10月31日付ブログで紹介済)の前を通って、キングスクロス駅(King's Cross Station)/セントパンクラス駅(St. Pancras Station)方面から地下鉄ベーカーストリート駅(Baker Street Tube Station)へと西に向かうマリルボーンロード(Marylebone Road)の二つの幹線道路によって南北を挟まれた地域内に所在している。
デヴォンシャークローズは、デヴォンシャーストリート(Devonshire Street)の南側に位置しており、上空から見ると、「H」型をした行き止まりの通りである。正確には、「H」の横棒の下からもう一つ短い通りが南側へと延びている。


デヴォンシャークローズ前のデヴォンシャーストリート―
画面奥を左右に横切るのが、ハーリーストリート

デヴォンシャークローズからデヴォンシャーストリートへと出て西へ進むと、そこはハーリーストリートで、ジョン・クリストウの医院兼住居は、ハーリーストリート沿いにある建物を使用して撮影されている。つまり、ストーリー上は、ジョン・クリストウの医院兼住居とヘンリエッタ・サヴァナクのアトリエ兼フラットは、距離的にかなり離れているが、撮影上は目と鼻の先で行われているのである。

0 件のコメント:

コメントを投稿