2015年11月28日土曜日

オックスフォード ボドリアン図書館(Bodleian Library)

ボドリアン図書館の内庭から見上げた尖塔(その1)

サー・アーサー・コナン・ドイル作「三人の学生(The Three Students)」において、シャーロック・ホームズとジョン・ワトスンの二人は、ある調査の関係で、有名な大学の街の一つで数週間を過ごしていた。

ボドリアン図書館の内庭(その1)

当時、私達は図書館の近くにある家具付きの下宿に滞在していた。その図書館で、シャーロック・ホームズは、英国の古い勅許状について、とても骨の折れる調査を進めていたのである。その調査は非常に著しい成果を収めたので、このことについて、私はいずれ物語を書くことになるかもしれない。ある晩、私達の知人で、セントルカ大学寮の個別指導教員兼講師であるヒルトン・ソームズ氏が私達の下宿にやって来た。ソームズ氏は、神経質で激しやすい気性をした長身で痩せた人物だった。彼が落ち着きのない人物だと、私は普段から知っていたが、他ならぬこの時、彼は動揺を全く抑えきれない様子で、何か非常に大変なことが起きたことは一目瞭然であった。

ボドリアン図書館の内庭から見上げた尖塔(その2)

We were residing at the time in furnished lodgings close to a library where Sherlock Holmes was pursing some laborious researches in early English charters - researches which led to results so striking that they may be the subject of one of my future narratives. Here it was that one evening we received a visit from an acquaintance, Mr Hilton Soames, tutor and lecturer at the College of St Luke's. Mr Soames was a tall, spare man, of a nervous and excitable temperament. I had always known him to be restless in his manner, but on this particular occasion he was in such a state of uncontrollable agitation that it was clear something very unusual had occurred.

ボドリアン図書館の内庭(その2)

コナン・ドイルの原作上、ホームズとワトスンが滞在していた大学の街がどこなのかについては、明確になっていないが、これをオックスフォード市(Oxford)だと考えると、彼らの下宿の近くにあった図書館とは、ボドリアン図書館(Bodleian Library)だと推測される。なお、ボドリアン図書館は、先週紹介したオックスフォード大学(University of Oxford)の図書館である。

ラドクリフカメラ越しに見た
University Church of St. Mary the Virgin

ボドリアン図書館よりも前に、オックスフォードには14世紀に図書館が創設され、イングランド王国の国王ヘンリー4世(Henry Ⅳ:1367年ー1413年 在位期間:1399年ー1413年)の四男グロスター公爵ランカスターのハムフレー(Humphrey of Lancaster, Duke of Gloucester:1390年ー1447年)が15世紀前半に多くの蔵書を寄付した。16世紀後半になると、図書館が顧みられなくなったため、女王エリザベス1世(Elizabeth I:1533年ー1603年 在位期間:1558年ー1603年)時代に外交官を務め、学者でもあったサー・トマス・ボードリー(Sir Thomas Bodley:1545年ー1613年)がオックスフォード大学の総長(Vice-Chancellor)に働きかけて、図書館を復興させ、1602年11月8日に再オープンした。これが、現在のボドリアン図書館である。
更に、1610年、サー・トマス・ボードリーは、ボドリアン図書館を英国の法定納本図書館に指定した。この納本制度に基づいて、英国内で流通する出版物がボドリアン図書館に納められることになり、蔵書数が一気に増加して、それに伴い、図書館のスペースも拡大された。

ラドクリフカメラの全景

その後も、ボドリアン図書館は拡大を続け、隣接して建つラドクリフカメラ(Radcliffe Camera)には、ボドリアン図書館に繋がる地下通路が建設された。
ラドクリフカメラは、元々、新図書館の建設を計画していた医師ジョン・ラドクリフ(John Radcliffe:1652年ー1714年)の遺言に基づき、英国の建築家ジェイムズ・ギブス(James Gibbs:1682年ー1754年)が
設計し、1737年から1748年にかけて建設が行われ、1749年4月にオックスフォード大学のラドクリフ科学図書館としてオープンした。建物の名前は、医師ジョン・ラドクリフの「ラドクリフ」と建物の特徴である「丸天井の部屋」を意味するラテン語の「カメラ」が組み合わされている。
ボドリアン図書館と地下通路で接続されて以降、自然科学の蔵書は別の建物へ移されて、ラドクリフカメラは同図書館の附属閲覧室となった。

ラドクリフカメラ越しに見たコドリントン図書館
(Codrington Library)

ボドリアン図書館は更に拡大を続け、1940年には通りの反対側に、英国の建築家サー・ジャイルズ・ギルバート・スコット(Sir Giles Gilbert Scott:1880年ー1960年)設計の新ボドリアン図書館( New Bodleian Library)が完成して、英国内では大英図書館(British Library)に続く第二の蔵書規模を誇る図書館となっている。一方で、多額の寄付を受けて、所蔵資料のデジタル化も進められている。

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