2024年4月7日日曜日

アガサ・クリスティーの世界<ジグソーパズル>(The World of Agatha Christie )- その41

(89)ベラドンナ(Belladonna)


株式会社廣川書店が出版している
滝戸道夫 / 指田豊編「改訂版 カラーグラフィック 薬用植物」から抜粋。

目:ナス目(Solanales)

科:ナス科(Solanaceae)

属:オオカミナスビ属(Atropa)


学名の「Belladonna」は、イタリア語で「美しい女性」を意味する「bella donna」から由来している。

これは、多くの女性達が、瞳孔を拡大させる散瞳剤として、この実の抽出物を使用したためで、瞳孔の拡大により、瞳が潤んで見えるので、側からは、美しい女性のように思えたのである。イタリアのルネッサンス時代には、女性の化粧法として、かなり流行していた。


原産:西欧


最近では、北アフリカ、西アジアや北アメリカにも分布。


多年生草木


茎:高さは1m位

根:太く肉質、帯白色で、長く分岐。

花:紫褐色で、釣鐘状。

実:花が咲いた後、緑色の実をつけると、1㎝ 程に膨らみ、黒紫色に熟す。猛毒を含む。ベラドンナの実をブルーベリー等と誤認して食した結果、食中毒を起こした例が報告されている。


ベラドンナの化学式(構造式)-
Bloomsbury Publishing Plc から出版された
キャサリン・ハーカップ作「アガサ・クリスティーと14の毒薬
(A is for Arsenic - The Poisons of Agatha Christie by Kathryn Harkup)」の
ペーパーバック版から抜粋。

ベラドンナは、全草に有毒性があり、根茎と根が特に毒性が強い。また、葉の表面にも、油が浮いていて、これに触れると、かぶれがおき、特に酷い場合には、潰瘍になる。

ただし、用法や用量を守って使用する限り、有用であり、ベラドンナに含まれるベラドンナ総アルカロイド成分には、鼻水を抑える効果があることから、多くの市販鼻炎薬に使われている。


ベラドンナを摂取した場合の副作用として、主な毒の成分であるトロパンアルカロイドにより、


*嘔吐

*散瞳

*異常興奮


等を引き起こし、最悪の場合には、死に至るので、取扱いに注意が必要。


2024年4月6日土曜日

天気(Weather)記念切手


2024年2月1日に英国のロイヤルメール(Royal Mail)から発行された天気予報(Weather Forecasting)に関する8種類の記念切手(→ 2024年3月31日 / 4月3日付ブログで紹介済)に加えて、2001年3月13日に発行された天気(Weather)に関する4種類の記念切手についても、御紹介したい。

4種類の記念切手を合わせると、1枚の絵になる構成である。


< 左上 - Rain (雨)
「どしゃ降り」は、英語で「Raining cats and dogs」と言うため、
猫と犬が多数描かれている。 >


< 右上 - Fair (晴れ) >

< 左下 - Much Rain (大雨)/ Stormy (嵐) >

< 右下 - Set Fair (快晴)/ Very Dry (乾燥) >


2024年4月5日金曜日

ロジャー・スカーレット作「エンジェル家の殺人」(Murder Among the Angells by Roger Scarlett)- その2

東京創元社から創元推理文庫の1冊として
1987年に初版が出版された
ロジャー・スカーレット作「エンジェル家の殺人」内に付されている
「エンジェル邸の見取図」


日本の推理作家である横溝正史(Seishi Yokomizo:1902年ー1981年)が、金田一耕助(Kosuke Kindaichi)シリーズの第1作目に該る長編推理小説「本陣殺人事件(The Honjin Murders)」を執筆する際に、着想を得た米国の推理作家であるロジャー・スカーレット(Roger Scarlett)作「エンジェル家の殺人(Murder Among the Angells)」(1932年)は、3月初旬の火曜日の朝、第一線から既に退いている弁護士のアンダーウッド(Mr. Underwood)が、チャールズ川(River Charles)沿いに建つビーコンストリート236番地(236 Beacon Street)の邸宅を訪れたところから、物語が始まる。

なお、ロジャー・スカーレットは、実は、イヴリン・ペイジ(Evelyn Page:1902年ー1977年)とドロシー・ブレア(Dorothy Blair:1903年ー1976年)と言う女性2人のペンネームである。


東京創元社から創元推理文庫の1冊として
1987年に初版が出版された
ロジャー・スカーレット作「エンジェル家の殺人」内に付されている
「地下室平面図」

L字型をした陰気な灰色の石造りの建物は、内部で対角線を引いたように二分されており、それぞれの区画には、年老いた双子の兄弟が、それぞれの家族の長として暮らしていた。


東京創元社から創元推理文庫の1冊として
1987年に初版が出版された
ロジャー・スカーレット作「エンジェル家の殺人」内に付されている
「1階平面図」

<ダライアス家の住人>

(1)ダライアス・エンジェル(Darius Angell):双子の兄

(2)ピーター・エンジェル(Peter Angell):ダライアスの長男

(3)ディヴィッド・エンジェル(David Angell):ダライアスの次男

(4)スーザン・コッドマン(Susan Codman):ダライアスの義理の妹


<キャロラス家の住人>

(5)キャロラス・エンジェル(Carolus Angell):双子の弟

(6)カール・エンジェル(Carl Angell):キャロラスの養子

(7)カレン・アダムズ(Karen Adams):キャロラスの養子

(8)ホイットニー・アダムズ(Whitney Adams):カレンの夫

(9)ブラード:キャロラス家の執事


東京創元社から創元推理文庫の1冊として
1987年に初版が出版された
ロジャー・スカーレット作「エンジェル家の殺人」内に付されている
「2階平面図」

双子の兄弟であるダライアス・エンジェルとキャロラス・エンジェルの2人は、相手よりも長生きすることに躍起となっていた。

何故ならば、彼らの亡き父の遺言により、相手よりも1秒でも長生きした方が、亡き父が残した全財産を相続できることに定められていたからであった。


東京創元社から創元推理文庫の1冊として
1987年に初版が出版された
ロジャー・スカーレット作「エンジェル家の殺人」内に付されている
「3階平面図」

双子の弟であるキャロラス・エンジェルは、長生きするために、若い頃から、健康に非常に気を付けていたが、双子の兄であるダライアス・エンジェルは、そんな弟の生き方を歯牙にも掛けなかった。

ところが、自分の死期が近いことを悟った今、ダライアス・エンジェルは、一文無しで残される可能性が高い長男のピーター・エンジェルと次男のディヴィッド・エンジェルのことを心配し、亡き父の遺言の内容を変更して、どちらが先に亡くなったとしても、亡き父が残した全財産を等分に分けることにしようと、キャロラス・エンジェルに対して、交渉しようと考えていた。

東京創元社から創元推理文庫の1冊として
1987年に初版が出版された
ロジャー・スカーレット作「エンジェル家の殺人」内に付されている
「4階(屋根裏部屋)平面図」

そのことが、これから起こる全ての悲劇の始まりだった。


2024年4月4日木曜日

アガサ・クリスティーの世界<ジグソーパズル>(The World of Agatha Christie )- その40

英国の Orion Publishing Group Ltd. から出ている「アガサ・クリスティーの世界(The World of Agatha Christie)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)の生涯や彼女が執筆した作品等に関連した90個の手掛かりについて、前回に続き、紹介していきたい。


今回も、アガサ・クリスティーが執筆した作品に関連する手掛かりの紹介となる。


(89)ベラドンナ(Belladonna)



本ジグソーパズル内において、アガサ・クリスティーが腰掛けている椅子の右側にある窓の外に、「ベラドンナ」が植えられている。


これから連想されるのは、アガサ・クリスティーが1947年に発表したエルキュール・ポワロシリーズ作品の短編集「ヘラクレスの冒険(The Labours of Hercules)」である。


英国の Harper Collins Publishers 社から出版されている
アガサ・クリスティー作エルキュール・ポワロシリーズ
「ヘラクレスの冒険」のペーパーバック版の表紙

名探偵エルキュール・ポワロは、「ヘラクレス(Hercules)と言う同名の英雄とは、似ても似つかない。」と、彼の友人であるバートン医師(Dr. Burton)から馬鹿にされて、プライドを大いに傷付けられた。

そこで、ポワロは、ほんの僅かな関わりでも構わないので、神話の中の英雄ヘラクレスが挑んだ有名な難業に関連するものに限り、探偵稼業から引退する前に、12の事件だけを引き受けることに決めた。

そして、英雄ヘラクレスと同様に、ポワロが挑む事件が、以下の12件である。


*「ネメアのライオン(The Nemean Lion)」(1939年)

*「レルネーのヒドラ(The Learnean Hydra)」(1939年)

*「アルカディアの鹿(The Arcadian Deer)」(1940年)

*「エルマントスのイノシシ(The Erymanthian Boar)」(1940年)

*「アウゲイアス王の大牛舎(The Augean Stables)」(1940年)

*「ステュムパロスの鳥(The Stymphalean Birds)」(1939年)

*「クレタ島の雄牛(The Cretan Bull)」(1939年)

*「ディオメーデスの馬(The Horses of Diomedes)」(1940年)

*「ヒッポリュテの帯(The Girdle of Hyppolita)」(1939年)

*「ゲリュオンの牛たち(The Flock of Geryon)」(1940年)

*「ヘスぺリスたちのリンゴ(The Apples of Hesperides)」(1940年)

*「ケルベロスの捕獲(The Capture of Cerberus)」(1947年)


上記の12件のうち、「クレタ島の雄牛」において、エルキュール・ポワロは、ダイアナ・メイベリー(Diana Maberly)と言う若い女性から、相談を受ける。

彼女によると、ヒュー・チャンドラー(Hugh Chandler)と言う男性と婚約していたのだが、突然、彼がその婚約を解消した、とのこと。彼曰く、彼の家系には、祖父や大伯母をはじめ、代々、狂気が遺伝しており、自分自身も間もなく狂人になると恐怖していたのである。

ダイアナ・メイベリーから相談を受けたポワロは、問題のヒュー・チャンドラーの家を訪れるのであった。

本作品において、ベラドンナが使用されている。


2024年4月3日水曜日

天気予報(Weather Forecasting)記念切手 - その2

2024年2月1日に、英国のロイヤルメール(Royal Mail)から、天気予報(Weather Forecasting)に関する8種類の記念切手が発行されたので、前回に引き続き、御紹介したい。


< Weather observers were vital to the success of the D-Day invasion in 1944 >


< Radar and computers improved forecasting accuracy from the 1950s >

< Barbara Edwards became the first British female TV weather presenter in 1974 >

< Supercomputers and satellites help track the Earth's weather today >

2024年4月2日火曜日

ロジャー・スカーレット作「エンジェル家の殺人」(Murder Among the Angells by Roger Scarlett)- その1

東京創元社から創元推理文庫の1冊として
1987年に初版が出版された
ロジャー・スカーレット作「エンジェル家の殺人」の表紙
<カバーイラスト:ひらい たかこ
カバーデザイン:矢島 高光>


日本の推理作家である横溝正史(Seishi Yokomizo:1902年ー1981年)による長編推理小説で、金田一耕助(Kosuke Kindaichi)シリーズの第1作目に該る「本陣殺人事件(The Honjin Murders)」は、降り積もった雪で囲まれた日本家屋での密室殺人事件を取り扱っており、第二次世界大戦(1939年ー1945年)/ 太平洋戦争(1941年-1945年)の翌年、つまり、1946年(昭和21年)4月から同年12月にかけて、雑誌「宝石」に連載された。

作者の横溝正史は、「本陣殺人事件」を執筆する上で、米国の推理作家であるロジャー・スカーレット(Roger Scarlett)作「エンジェル家の殺人(Murder Among the Angells)」(1932年)に着想を得たと語っている。


ロジャー・スカーレットは、実は、イヴリン・ペイジ(Evelyn Page:1902年ー1977年)とドロシー・ブレア(Dorothy Blair:1903年ー1976年)と言う女性2人のペンネームである。


イヴリン・ペイジの経歴は、以下の通り。

1902年(11月9日):ウィリアム・ハンセルとサラ・ペイジ夫妻の子として、ペンシルヴァニア州(Commonwealth of Pennsylvania)フィラデルフィア(Philadelphia)に出生。

1923年:ブリン・モー・カレッジ(Bryn Mawr College)文学部を卒業。

1926年:ブリン・モー・カレッジ大学院修士課程を終了。

その後、出版社に勤務して、フリーランスのライターとしても活躍。

1942年ー1945年:海軍飛行研究所と空軍の飛行検査官(aircarft inspector)

1945年ー1949年:陸軍婦人部隊(Women’s Army Corps)の医療部隊に配属され、後に軍曹(sergeant)に昇進。

1949年ー1956年:マサチューセッツ州(Commonwealth of Massachusetts)ノーサンプトン(Northampton)のスミスカレッジ(Smith College)の専任講師となり、後に助教授(assistant professor)に昇格。

1956年ー1964年:コネティカット州(Commonwealth of Connecticut)ニューロンドン(New London)のコネティカットカレッジ(Connecticut College)へと移り、英語学の助教授(1956年ー1962年)、そして、歴史学の助教授(1962年ー1964年)を務める。

彼女は、単独の著作として、長編小説「The Chestnut Tree」(1964年)と学術書「American Genesis : Pre-Colonial writing in the North」(1973年)を発表している。


一方のドロシー・ブレアの経歴は、以下の通り。

1903年:地元の医師の子として、モンタナ州(Commonwealth of Monata)ボーズマン(Bozeman)に出生。

1924年:ヴァサーカレッジ(Vassar College)を卒業。


イヴリン・ペイジとドロシー・ブレアの2人は、大学卒業後、マサチューセッツ州ボストン(Boston)にあるホートンミフリンハーコート(Houghton Mifflin Harcourt)と言う出版社で、編集者として働いている時に出会い、共同生活を始める。

そして、彼女達は、ロジャー・スカーレットと言うペンネームを使い、僅か4年の間に、長編推理小説を5作発表した。


(1)「ビーコン街の殺人(The Beacon Hill Murders)」(1930年)

(2)「白魔(Back-Bay Murder Mystery)」(1930年)

(3)「猫の足(Cat’s Paw)」(1931年)

(4)「エンジェル家の殺人」(1932年)

(5)「ローリング邸の殺人(In the First Degree)」(1933年)


上記の5作は、いずれも、米国のダブルデー社(Doubleday, Doran & Co.)から出版されている。

残念ながら、その後、彼女達は、推理小説の筆を断ってしまった。


イヴリン・ペイジとドロシー・ブレアの2人がロジャー・スカーレットとして活動した期間は、非常に短期間だったこともあり、米国では、すっかりと忘れ去られた作家である。

一方、日本では、明智小五郎シリーズ等で有名な日本の推理作家 / 怪奇・恐怖小説家 / アンソロジストである江戸川乱歩(1894年ー1965年)が「エンジェル家の殺人」を「三角館の恐怖」(1951年)として翻案していることもあって、米国とは異なり、未だに知名度が高い作家である。


2024年4月1日月曜日

アガサ・クリスティーの世界<ジグソーパズル>(The World of Agatha Christie )- その39

(88)ジギタリス(Digitalis)


株式会社北隆館が出版している
牧野富太郎著「学生版 原色牧野日本植物図鑑」から抜粋。

目:シソ目(Lamiales)

科:オオバコ科(Plantaginaceae)

属:ジギタリス属(Digitalis)


学名の「Digitalis」は、ラテン語で「指」を意味する「digitus」に由来するが、これは、花の形が「指サック」に似ているからである。

数字の「digit」やコンピューター用語の「digital」は、学名の「Digitalis」と語源を同じにしている。


株式会社廣川書店が出版している
滝戸道夫 / 指田豊編「改訂版 カラーグラフィック 薬用植物」から抜粋。

原産:欧州南部


地中海沿岸を中心にして、中央アジアから欧州や北アフリカに分布。


2年生、または、多年生草木


一般に、「Digitalis purpurea」と言う種が、観賞用、または、薬用に栽培されている。


茎:直立 / 高さは1m位

葉:長さ15 - 25㎝ / 細かい縮緬(チリメン)じわがあり、前面に短軟毛を有して、苦味あり。

花:紫紅色で、7 - 8月に開花。


ジギタリスは、全草に有毒性があるが、強心剤として、心臓病に用いられている。

ジギタリスを多量に摂取した場合の副作用として、


*不整脈や動悸等の循環器症状

*嘔気・嘔吐等の消化器症状

*頭痛・眩暈等の神経症状

*黄視症(視野が黄色く映る症状)


等があるので、取扱いに注意が必要。