2024年2月6日火曜日

アガサ・クリスティーのトランプ(Agatha Christie - Playing Cards)- その8

 英国の Laurence King Publishing Group Ltd. より、昨年(2023年)に発行されたアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)をテーマにしたトランプの各カードについて、引き続き、紹介したい。


(25)7 ♠️「アリアドニ・オリヴァー(Ariadne Oliver)」



アリアドニ・オリヴァーは、フィンランド人探偵(Sven Hjerson)を主人公とするシリーズで有名な女性推理作家で、アガサ・クリスティー自身が彼女のモデルと言われている。

彼女は、リンゴが大好きで、いつも齧っているが、ある事件を契機に、リンゴを食べられなくなってしまう。


登場作品

<長編>

*「ひらいたトランプ(Cards on the Table)」(1936年)- エルキュール・ポワロシリーズ

*「マギンティー夫人は死んだ(Mrs. McGinty’s Dead)」(1952年)- エルキュール・ポワロシリーズ

*「死者のあやまち(Dead Man’s Folly)」(1956年)- エルキュール・ポワロシリーズ

*「蒼ざめた馬(The Pale Horse)」(1961年)- ノンシリーズ

*「第三の女(The Third Girl)」(1966年)- エルキュール・ポワロシリーズ

*「ハロウィーンパーティー(Hallowe’en Party)」(1969年)- エルキュール・ポワロシリーズ

*「象は忘れない(Elephants Can Remember)」(1972年)- エルキュール・ポワロシリーズ

<短編集>

*「パーカー・パイン登場(Parker Pyne Investigates)」(1934年)- パーカー・パインシリーズ

 ・「退屈している軍人の事件(The Case of the Discontented Solider)」→ 当作品が、アリアドニ・オリヴァーの初登場作品に該る。


(26)7 ❤️「七つの目覚まし時計(Seven Alarm Clocks)」



長編「七つの時計(The Seven Dials Mystery)」(1929年)において、ケイタラム卿から借り受けているチムニーズ館(Chimneys)で、鉄鋼王であるサー・オズワルド・クート(Sir Oswald Coote)がパーティーを開催した。チムニーズ館には、以下の4人が、宿泊客として、滞在していた。


*ジェラルド(ジェリー)・ウェイド(Gerald (Gerry) Wade / 外交官)

*ロナルド(ロニー)・デヴァルー(Ronald (Ronny) Devereux / 外交官)

*ビル・エヴァズレー(Bill Eversleigh / 外交官)

*ジミー・セシジャー(Jimmy Thesiger / 金持ちの御曹司)


ジェリー・ウェイドは、毎日、昼近くまで寝ているため、他の3人は、彼を起こすための悪戯を思い付き、夜中、彼の部屋に8個の目覚まし時計をセットした。

しかし、翌朝、目覚まし時計が鳴っても、ジェリー・ウェイドは、目を覚ますことはなかった。何故ならば、彼は多量の睡眠薬を飲んで死亡していたのである。その上、他の3人が彼のベッドに置いた筈の目覚まし時計のうち、7個は暖炉の上に並べられており、残りの1個は庭に投げ捨てられていた。


本作品は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第9作目に該る。


(23)7 ♣️「スカーフ(Scarf)」



長編「予告殺人(A Murder is Announced)」(1950年)において、養鶏業者であるミス・ヒンチクリフ(Miss Hinchcliffe)の同居人であるエイミー・マーガとロイド(Amy Murgatroyd)が、事件の核心となることを思い出した時、何者かによって、スカーフで絞殺される。


英国の Harper Collins Publishers 社から出版されている
アガサ・クリスティー作ミス・ジェイン・マープルシリーズ
「予告殺人」のペーパーバック版の表紙

<イラスト:ビル・ブラッグ氏(Mr. Bill Bragg)>


長編「マギンティー夫人は死んだ(Mrs. McGinty’s Dead)」(1952年)において、速記タイピストのシェイラ・ウェッブ(Sheila Webb)の同僚であるエドナ・ブレント(Edna Brent)が、電話ボックス内で、何者かによって、スカーフで絞殺される。


英国の Harper Collins Publishers 社から出版されている
アガサ・クリスティー作エルキュール・ポワロシリーズ
「マギンティー夫人は死んだ」のペーパーバック版の表紙

長編「複数の時計(The Clocks)」(1963年)において、戯曲家のロビン・アップワード(Robin Upward)の養母であるローラ・アップワード(Laura Upward)が、何者かによって、スカーフで絞殺される。


英国の Harper Collins Publishers 社から出版されている
アガサ・クリスティー作エルキュール・ポワロシリーズ
「複数の時計」のペーパーバック版の表紙


「予告殺人」は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第40作目に該り、ミス・ジェイン・マープルシリーズの長編のうち、第4作目に該っている。

「マギンティー夫人は死んだ」は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第42作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第24作目に該っている。

「複数の時計」は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第54作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第29作目に該っている。


(28)7 ♦️「自由公債(Liberty Bonds)」



短編「百万ドル債券盗難事件(The Million Dollar Bond Robbery)」(短編集「ポワロ登場(Poirot Investigates)」(1924年)に収録)の場合、フィリップ・リッジウェイ(Philip Ridgeway)の婚約者であるエズミー・ダルリーシュ(Esmee Dalgleish)が、エルキュール・ポワロの元を事件の相談に訪れるところから始まる。

彼女によると、フィリップ・リッジウェイは、ロンドン&スコティッシュ銀行(London and Scottish Bank)に勤務しており、同行の副支店長ヴァヴァソア氏(Mr Vavasour)の甥である。フィリップ・リッジウェイは、伯父で副支店長のヴァヴァソア氏と支店長のショー氏(Mr Shaw)の指示を受けて、米国における同行の信用枠を増額するため、1百万ドルの自由公債をニューヨークへ運搬する役目を請け負った。1百万ドルの自由公債は、フィリップの面前でカウントされ、封印された上で、特別な鍵でしか解錠できない革製の旅行鞄に入れられた。

ところが、フィリップ・リッジウェイが乗船した汽船オリンピア(Olympia)がニューヨークに着く数時間前に、鞄の中から自由公債が全て紛失していることが判明。ニューヨーク税関が船を封鎖して、船内を捜索するも、紛失した自由公債は発見できなかった。更に、紛失した自由公債は、汽船オリンピアがニューヨークに着く前に売却されていたことが、後で判ったのである。果たして、1百万ドルの自由公債はどのようにして盗難されたのか?

フィリップの婚約者エズミーの依頼を受けて、ポワロが捜査に乗り出すのであった。


英国の Harper Collins Publishers 社から出版されている
アガサ・クリスティー作エルキュール・ポワロシリーズ
「ポワロ登場」のペーパーバック版の表紙

2024年2月5日月曜日

シャーロック・ホームズのトランプ(Sherlock Holmes - Playing Cards)- その11

英国の Laurence King Publishing Group Ltd. より、一昨年(2022年)に発行されたシャーロック・ホームズをテーマにしたトランプの各カードについて、前回に引き続き、紹介したい。


(37)10 ❤️「ベイカーストリート221B(221B Baker Street → 2014年6月22日 / 6月29日付ブログで紹介済)」



シャーロック・ホームズは、当初、
ロンドンのモンタギューストリート(Montague Street → 2014年5月25日付ブログで紹介済)に部屋を借りて、諮問探偵を開業した。

英国で出版された「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」
1903年10月号「空き家の冒険(The Empty House
→ 2022年5月27日 / 7月1日 / 7月10日 / 7月17日 /
7月24日 / 7月29日 / 8月3日 / 8月6日付ブログで紹介済)
に掲載された挿絵 -

ロンドンに帰還したシャーロック・ホームズは、
ジェイムズ・モリアーティー教授(Professor James Moriaty)の部下で、
彼の右腕でもあるセバスチャン・モラン大佐
(Colonel Sebastian Moran)を捕まえるべく、
ジョン・H・ワトスンを連れて、通りを挟んで、
ベイカーストリート221Bの向かい側に建つ
カムデンハウス(Camden House)へとやって来た。
画面左側の人物がワトスンで、画面右側の人物がホームズ。
挿絵:シドニー・エドワード・パジェット

(Sidney Edward Paget 1860年 - 1908年


その後、ホームズは、セントバーソロミュー病院(St. Bartholomew's Hospital → 2014年6月14日付ブログで紹介済)のスタンフォード青年(Stamford)から、第二次アフガニスタン戦争(Second Afghan War)への従軍で負傷退役したジョン・H・ワトスンを紹介され、ベイカーストリート221Bで共同生活を始めた。

そして、長編4作と短編56作の計60作の事件は、ここをベースにして、進んでいくのである。


残念ながら、ベイカーストリート221Bは、架空の住所である。


(38)10 ♠️ライヘンバッハの滝(The Reichenbach Falls)



ライヘンバッハの滝は、スイスのマイリンゲン(Meiringen)にある実在の滝で、「最後の事件(The Final Problem → 2022年5月1日 / 5月8日 / 5月11日付ブログで紹介済)において、同滝の断崖絶壁で、シャーロック・ホームズと「犯罪界のナポレオン(Napoleon of crime)」と呼ばれるジェイムズ・モリアーティー教授と決闘を行なっている。


英国で出版された「ストランドマガジン」
1893年12月号「最後の事件」に掲載された挿絵 -
ライヘンバッハの滝の断崖絶壁において、
シャーロック・ホームズが、復讐のために、
彼をここまで追跡して来たジェイムズ・モリアーティー教授と
命を賭けて格闘する場面が描かれている。
画面奥の人物がホームズで、
画面手前の人物がジェイムズ・モリアーティー教授。
挿絵:シドニー・エドワード・パジェット(1860年 - 1908年)


なお、「最後の事件」は、ホームズシリーズの短編小説56作のうち、24番目に発表された作品で、英国では、「ストランドマガジン」の1893年12月号に、また、米国では、「マクルーアマガジン(McClure’s Magazine)」の1893年12月号に掲載された。

また、同作品は、1893年に発行されたホームズシリーズの第2短編集「シャーロック・ホームズの回想(The Memoirs of Sherlock Holmes)」に収録されている。


(39)10 ♦️「バスカヴィル館(Baskerville Hall)」



バスカヴィル館は、「バスカヴィル家の犬(The Hound of the Baskervilles)」において、主要な舞台となる場所である。


英国で出版された「ストランドマガジン」の
「バスカヴィル家の犬」に掲載された挿絵 -
「第6章 バスカヴィル館(Baskerville Hall)」
サー・チャールズ・バスカヴィル(Sir Charles Baskerville)の後を継いで、
バスカヴィル家の新しい当主となった
サー・ヘンリー・バスカヴィル(Sir Henry Baskerville)が、
バスカヴィル館に到着する場面が描かれている。
画面左側から、ジェイムズ・モーティマー医師(Dr. James Mortimer)、
御者、ジョン・H・ワトスン、サー・ヘンリー・バスカヴィル、
バスカヴィル館の執事であるバリモア(Barrymore)と
バリモア夫人(Mrs. Barrymore)。
残念ながら、バスカヴィル館の全体像が描かれた挿絵は、存在していない。
挿絵:シドニー・エドワード・パジェット(1860年 - 1908年)


なお、「バスカヴィル家の犬」は、ホームズシリーズの長編第3作目で、英国では、「ストランドマガジン」の1901年8月号から1902年4月号にかけて連載された後、単行本化


(40)10 ♣️スコットランドヤード(Scotland Yard)



スコットランドヤードは、英国の首都ロンドンのほぼ全域を管轄する警察組織である「ロンドン警視庁(Metroploitan Police Service)」の本部を指す名称である。


この名称は、ロンドン警視庁本部の初代庁舎がホワイトホールプレイス4番地(4 Whitehall Place)に所在していた際、その裏口がグレイトスコットランドヤード(Great Scotland Yard)と言う通りに面していたことに由来している。この裏口が一般入口になったため、時を経るに従って、この通りの名前が、ロンドン警視庁と同義となったのである。


2024年2月4日日曜日

アガサ・クリスティー エルキュール・ポワロ 2024年カレンダー(Agatha Christie - Hercule Poirot - Calendar 2024)- 「アクロイド殺し(The Murder of Roger Ackroyd)」

表紙が、キングスアボット村(King's Abbot)に住むジェイムズ・シェパード医師(Dr. James Sheppard)が「わたし」という語り手になって、事件を記録する際に使用する羽根ペンとインク瓶の形に切り取られている。


アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)の作品を出版している英国の Harper Collins Publishers 社から出ているエルキュール・ポワロ(Hercule Poirot)シリーズのペーパーバック版の表紙を使った2024年カレンダーのうち、10番目を紹介したい。


(10)長編「アクロイド殺し(The Murder of Roger Ackroyd)」(1926年)


本作品は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第6作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第3作目に該っている。

本作品の場合、元々、1925年7月16日から同年9月16日にかけて、「ロンドン イーヴニング ニュース(London Evening News)」紙上、「Who Killed Ackroyd?」というタイトルで、54話の連載小説として掲載され、その後、1冊の書籍として刊行された。



本作品では、キングスアボット村(King's Abbot)に住むジェイムズ・シェパード医師(Dr. James Sheppard)が「わたし」という語り手になって、事件を記録している。

同村のキングスパドック館(King's Paddock)に住むドロシー・フェラーズ夫人(Mrs. Dorothy Ferrars)は、裕福な未亡人で、村のもう一人の富豪であるロジャー・アクロイド(Roger Ackroyd)との再婚が噂されていたが、9月17日(金)の朝、亡くなっているのが発見された。

検死を実施した結果、「わたし」は睡眠薬の過剰摂取と判断したが、噂好きな姉のキャロライン・シェパード(Caroline Sheppard)は、夫人の死を自殺だと出張するのであった。何故ならば、同村では、ドロシー・フェラーズ夫人が、酒好きで、だらしのない夫アシュリー・フェラーズ(Ashley Ferrars)を殺害したという噂も流布していたからである。


外出した「わたし」は、偶然出会ったロジャー・アクロイドから「相談したいことがある。」と言われ、彼が住むフェルンリーパーク館(Fernly Park)での夕食に招待された。

その日の午後7時半に、彼の屋敷を訪ねた「わたし」は、(1)ロジャー・アクロイド、(2)彼の義理の妹で、未亡人のセシル・アクロイド夫人(Mrs. Cecil Ackroyd)、(3)セシル・アクロイド夫人の娘フローラ・アクロイド(Flora Ackroyd)、(4)ロジャー・アクロイドの旧友ヘクター・ブラント少佐(Major Hector Blunt)、そして、(5)ロジャー・アクロイドの秘書ジェフリー・レイモンド(Geoffrey Raymond)と食事をした際、その席上、フローラ・アクロイドが、ロジャー・アクロイドの養子ラルフ・ペイトン大尉(Captain Ralph Paton)との婚約を発表する。


食事の後、書斎へ移動した「わたし」は、ロジャー・アクロイドから悩みを打ち明けられる。

彼によると、昨日(9月16日)、再婚を考えていたドロシー・フェラーズ夫人から「夫のアシュリー・フェラーズを毒殺した。」と告白された、と言うのである。その上、彼女はそのことで正体不明の何者かに強請られていた、とのことだった。

ちょうどそこに、ドロシー・フェラーズ夫人からの手紙が届く。ロジャー・アクロイドは、その手紙を開封しようとしたが、彼女を強請っていた恐喝者の名前を知らせる内容が書かれているものと考えた彼は「落ち着いて、後で一人でゆっくりと読むつもりだ。」と告げると、「わたし」に帰宅を促すのであった。


徒歩での帰宅途中、「わたし」は見知らぬ男性にフェルンリーパーク館、即ち、ロジャー・アクロイド邸への道を尋ねられる。

「わたし」が自宅に戻ると、急に電話の音が鳴り響く。「わたし」が受話器をとると、それは、ロジャー・アクロイドの執事ジョン・パーカー(John Parker)だった。彼によると、ロジャー・アクロイドが部屋で亡くなっている、とのことだった。

「わたし」は、姉のキャロラインにそのことを知らせると、車に飛び乗り、ロジャー・アクロイド邸へと戻った。


ロジャー・アクロイド邸に着いた「わたし」を出迎えたジョン・パーカーに電話のことを尋ねると、彼は「そんな電話をした覚えはない。」と答えるのであった。

ロジャー・アクロイドのことが心配になった「わたし」が、ジョン・パーカーと一緒に、彼の部屋へ赴くと、彼は刺殺されていて、ドロシー・フェラーズ夫人から届いた手紙も消えていた。


フローラ・アクロイドの婚約者で、ロジャー・アクロイドの遺産を相続することになるラルフ・ペイトン大尉が姿を消したため、地元警察は、彼を有力な容疑者と考え、彼の行方を追う。

ラルフ・ペイトン大尉の身を案じたフローラ・アクロイドは、私立探偵業から隠退し、キングスアボット村の「わたし」の隣りに引っ越して、カボチャ栽培に精を出していたエルキュール・ポワロに、事件の真相解明を依頼するのであった。


2024年2月3日土曜日

ピーター・スワンスン作「8つの完璧な殺人」(Rules for Perfect Murders by Peter Swanson) - その2

英国の Faber & Faber Limited から
2020年に刊行されている

ピーター・スワンスン作「8つの完璧な殺人」のペーパーバック版の裏表紙
(Design by Faber +
Cover image by Kasia Baumann / Getty.Shutterstock)


米国の小説家であるピーター・スワンスン(Peter Swanson:1968年ー)が2020年に発表した「8つの完璧な殺人(Rules for Perfect Murders)」の場合、クリスマス間近のある日、マサチューセッツ州(Commonwealth of Massachusetts)のボストン(Boston)でミステリー専門書店 Old Devils Bookstore を経営している店主マルコム・カーショー(Malcolm Kershaw)の元を、FBI の女性捜査官(Special Agent)が訪れるところから、物語が始まる。


グウェン・マルヴィー(Gwen Mulvey)と名乗った FBI 捜査官は、マルコム・カーショーに対して、数名の人物の名前を挙げた。


(1)ロビン・キャラハン(Robin Callahan)- ローカルニュースのキャスター(local news anchor)/ 1年半前に、コンコード(Concord)の自宅において、何者かによって射殺。


(2)ジェイ・ブラッドショー(Jay Bradshaw)- デニス(Dennis)在住 / 8月に、自宅の車庫において、何者かによって撲殺。


(3)イーサン・バード(Ethan Byrd)- 大学生 / 1年前に行方不明となり、その約3週間後に、州公園に埋められているのが発見。


彼らの名前に心当たりがないマルコム・カーショーに対して、グウェン・マルヴィー FBI 捜査官は、驚くべきことを告げた。

マルコム・カーショーが、以前、ミステリー専門書店 Old Devils Bookstore のブログに掲載した「8つの完璧な殺人(Eight Perfect Murders)」のリストに含まれている作品の手口に似た殺人事件が続いている、と言うのだった。


マルコム・カーショーは、1999年に大学を卒業した後、Redline Bookstore に5年間勤務していたが、妻を乳癌で亡くして、すっかりと気落ちした店主が店を閉めることに伴い、2004年に Old Devils Bookstore に転職した。

その際、当時の店主であるジョン・ヘイリー(John Haley)に言われて、店のブログを開設した時に、最初の記事として、彼は、「完璧な殺人」が出てくる犯罪小説8作品を選んで、店のブログにリストを掲載していたのである。


そのリストに掲載された犯罪小説8作品は、以下の通り。


(1)アラン・アレクサンダー・ミルン(Alan Alexander Milne:1882年ー1956年)作「赤い館の秘密(The Red House Mystery)」(1922年)

(2)アントニー・バークリー・コックス(Anthony Berkeley Cox:1893年ー1971年)作「殺意(Malice Aforethought)」(1931年)

(3)アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「ABC 殺人事件(The A.B.C. Murders)」(1936年)

(4)ジェイムズ・マラハン・ケイン(James Mallahan Cain:1892年ー1977年)作「殺人保険(Double Indemnity)」(1943年)

(5)パトリシア・ハイスミス(Patricia Highsmith:1921年ー1995年)作「見知らぬ乗客(Strangers on a Train)」(1950年)

(6)ジョン・ダン・マクドナルド(John Dann MacDonald:1916年ー1986年)作「溺死者(The Drowner)」(1963年)

(7)アイラ・レヴィン(Ira Levin:1929年ー2007年)作「死の罠(Deathtrap)」(1978年)

(8)ドナ・タート(Donna Tartt:1963年ー)作「黙約(The Secret History)」(1992年) 


グウェン・マルヴィー FBI 捜査官による推測通り、犯人は、マルコム・カーショーがミステリー専門書店 Old Devils Bookstore のブログに掲載したリストに従って、殺人を行っているのか?


2024年2月2日金曜日

アガサ・クリスティーのトランプ(Agatha Christie - Playing Cards)- その7

英国の Laurence King Publishing Group Ltd. より、昨年(2023年)に発行されたアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)をテーマにしたトランプの各カードについて、引き続き、紹介したい。


(21)6 ♠️「ハーリー・クィン(Harley Quin)」



ハーリー・クィンは、アガサ・クリスティーのシリーズ探偵の一人で、経歴や職業等、全てが不明のため、彼女が創り出した探偵の中では、最も謎めいた存在となっている。

ハーリー・クィンシリーズの場合、クィン氏は自分で謎を解くことはしないで、恋愛がらみの事件が発生する場所に突然現れると、サタースウェイト氏(Mr. Satterthwaite → 2024年1月16日付ブログで紹介済)に対して、示唆を与えるだけである。クィン氏による示唆を受けて、実際に、謎を解くのは、サタースウェイト氏自身である。事件が解決した後、クィン氏は、サタースウェイト氏の前から、忽然とその姿を消してしまう。


登場作品

<長編>

なし

<短編集>

*「謎のクィン氏(The Mysterious Mr. Quin)」(1930年)- ハーリー・クィンシリーズ

 ・「クィン氏登場(The Coming of Mr. Quin)」

 ・「窓ガラスに映る影(The Shadow on the Glass)」

 ・「<鈴と道化服>亭奇聞(At the ‘Bells and Motley’)」

 ・「空のしるし(The Sign in the Sky)」

 ・「クルピエの真情(The Soul of the Croupler)」

 ・「海から来た男(The Man from the Sea)」

 ・「闇からの声(The Voice in the Dark)」

 ・「ヘレンの顔(The Face of Helen)」

 ・「死んだ道化役者(The Dead Harlequin)」

 ・「翼の折れた鳥(The Bird with the Broken Wing)」

 ・「世界の果て(The World’s End)」

 ・「道化師の小径(Harlequin’s Lane)」

*「愛の探偵たち(Three Blind Mice and Other Stories)」(1950年)

 ・「愛の探偵たち(The Love Detectives)」- ハーリー・クィンシリーズ

*「マン島の黄金(While the Light Last)」

 ・「クィン氏のティーセット(The Harlequin Tea Set)」- ハーリー・クィンシリーズ


(22)6 ❤️「ヴェルヴェットのストール(Velvet Stole)」



長編「ナイルに死す(Death on the Nile)」(1937年)において、ナイル河を遡る遊覧船に乗船した英国で最も裕福な女性で、弱冠20歳のリネット・リッジウェイ(Linnet Ridgeway)が、自室で就寝中に、何者かによって射殺される。犯人は、大富豪の貴婦人であるヴァン・スカイラー(Van Schuyler)ヴェルヴェットのストールで拳銃を包み、サイレンサーのように使用したのである。


本作品は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第22作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第15作目に該っている。


英国の Harper Collins Publishers 社から出版されている
アガサ・クリスティー作エルキュール・ポワロシリーズ
「ナイルに死す」のペーパーバック版の表紙


(23)6 ♣️「砂糖ハンマー(Sugar Hammer)」



長編「マギンティー夫人は死んだ(Mrs. McGinty’s Dead)」(1952年)において、いくつかの家で掃除婦として働いていたマギンティー夫人(Mrs. McGinty)が、何者かによって殺害される。彼女を殺害する凶器として、砂糖ハンマーが使用されている。


本作品は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第42作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第24作目に該っている。


英国の Harper Collins Publishers 社から出版されている
アガサ・クリスティー作エルキュール・ポワロシリーズ
「マギンティー夫人は死んだ」のペーパーバック版の表紙

(24)6 ♦️「ラマット王国の王家の宝石(Crown Jewels of Ramat)」



長編「鳩のなかの猫(Cat Among the Pigeons)」(1959年)において、中東のラマット王国(Ramat)では、若き国王であるアリ・ユースフ(Prince Ali Yusuf)は民主化を進めていたが、国王に対する革命(coup d'etat)が勃発する。

自身に迫る危機を事前に察したアリ・ユースフ国王は、彼の親友で、彼のお抱え飛行士でもあるボブ・ローリンスン(Bob Rawlinson)に対して、数十万ポンドの価値にもなる王家の宝石を密かに国外へ運び出すことを依頼した。アリ・ユースフ国王からの依頼を受けたボブ・ローリンスンは、咄嗟に姉のジョアン・サットクリフ(Joan Sutcliffe)と姪のジェニファー・サットクリフ(Jennifer Sutcliffe - 肺炎(pneumonia)が治った後の転地療養を兼ねている)が2ヶ月間滞在しているホテル(Ritz Savoy Hotel)の部屋を訪ねたが、生憎と、彼女達は外出中で留守だった。そこで、ボブ・ローリンスンは、姪のジェニファーが使っているテニス用のラケットの握り部分に宝石が入った包みを隠すと、ホテルの部屋を出た。ボブ・ローリンスンとしては、自分の行動を誰にも見られていないつもりでいたが、実際には、彼の行動は、何者か(謎の女性)に見られていたのである。

母親のジョアン・サットクリフと娘のジェニファーは、数十万ポンドにものぼる宝石が自分達の目と鼻の先にあるとは夢にも思わず、ジェニファーの学校入学に合わせて、ラマット王国から英国へと帰国した。

その後、アリ・ユースフ国王は、ボブ・ローリンスンと一緒に、飛行機でラマット王国を脱出しようと試みたが、途中で事故により墜落した結果、2人とも亡くなってしまう。


英国の Harper Collins Publishers 社から出版されている
アガサ・クリスティー作エルキュール・ポワロシリーズ
「鳩のなかの猫」のペーパーバック版の表紙


本作品は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第51作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第24作目に該っている。


2024年2月1日木曜日

シャーロック・ホームズのトランプ(Sherlock Holmes - Playing Cards)- その10

英国の Laurence King Publishing Group Ltd. より、一昨年(2022年)に発行されたシャーロック・ホームズをテーマにしたトランプの各カードについて、前回に引き続き、紹介したい。


(33)9 ❤️「メアリー・モースタン(Mary Morstan)」



メアリー・モースタンは、「四つの署名(The Sign of the Four → 2017年8月12日付ブログで紹介済 / ホームズシリーズの長編第2作目で、「リピンコット・マンスリー・マガジン(Lippincott’s Monthly Magazine)」の1890年2月号に掲載)」において、ベイカーストリート221B(221B Baker Street → 2014年6月22日 / 6月29日付ブログで紹介済)のシャーロック・ホームズの元を訪れて、風変わりな事件の調査依頼をする。


元英国陸軍インド派遣軍の大尉だった彼女の父親アーサー・モースタン(Captain Arthur Morstan)は、インドから英国に戻った10年前に、謎の失踪を遂げていた。彼はロンドンのランガムホテル(Langham Hotel → 2014年7月6日付ブログで紹介済)に滞在していたが、娘のモースタン嬢が彼を訪ねると、身の回り品や荷物等を部屋に残したまま、姿を消しており、その後の消息が判らなかった。そして、6年前から年に1回、「未知の友」を名乗る正体不明の人物から彼女宛に大粒の真珠が送られてくるようになり、今回、その人物から面会を求める手紙が届いたのである。

彼女の依頼に応じて、ホームズとジョン・H・ワトスンの2人は、彼女に同行して、待ち合わせ場所のライシアム劇場(Lyceum Theatreー2014年7月12日付ブログで紹介済)へと向かった。そして、ホームズ達一行は、そこで正体不明の人物によって手配された馬車に乗り込むのであった。

なお、事件が解決した後、メアリー・モースタンは、ワトスン夫人となる。


なお、「四つの署名」は、ホームズシリーズの長編第2作目で、「リピンコット・マンスリー・マガジン(Lippincott’s Monthly Magazine)」の1890年2月号に掲載された後、単行本化


(34)9 ♠️ジャック・ステイプルトン(Jack Stapleton)



ジャック・ステイプルトンは、「バスカヴィル家の犬(The Hound of the Baskervilles)」において、デヴォン州(Devon)南部に広がる荒野ダートムーア(Dartmoor)内に所在するメリピットハウス(Merripit House)に住む昆虫学者である。


彼は、ダートムーアに伝わる魔犬伝説を使い、バスカヴィル家の当主であるサー・チャールズ・バスカヴィル(Sir Charles Baskerville)を心臓麻痺へと追い込み、後を継いだサー・ヘンリー・バスカヴィル(Sir Henry Baskerville)の命も奪おうとした。


英国で出版された「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」の
「バスカヴィル家の犬」に掲載された挿絵 -
第7章「メリピットハウスのステイプルトン兄妹
(The Stapletons of Merripit House)」
バスカヴィル館(Baskerville Hall)に到着した翌朝、
サー・ヘンリー・バスカヴィルは膨大な書類仕事を抱えていたため、
ジョン・H・ワトスンは、一人でダートムーアへの散歩へと出かけた。
すると、後ろから声を掛ける人物が居た。
彼は、メリピットハウスに住む昆虫学者のジャック・ステイプルトンで、
どうやら、ワトスンのことを
サー・ヘンリー・バスカヴィルだと間違えているようだった。
画面左側の人物がワトスンで、
画面右側の人物がジャック・ステイプルトン。
挿絵:シドニー・エドワード・パジェット
(Sidney Edward Paget:1860年ー1908年)

なお、「バスカヴィル家の犬」は、ホームズシリーズの長編第3作目で、英国では、「ストランドマガジン」の1901年8月号から1902年4月号にかけて連載された後、単行本化


(35)9 ♦️「レジナルド・マスグレイヴ(Reginald Musgrave)



レジナルド・マスグレイヴは、「マスグレイヴ家の儀式書(The Musgrave Ritual)」に登場する人物で、名門出身の上、シャーロック・ホームズのカレッジ時代からの友人でもあった。


「マスグレイヴ家の儀式書」事件は、ホームズがジョン・H・ワトスンと出会う前に、彼の旧友から持ち込まれた事件である。

彼は、父親の死去に伴い、サセックス州(Sussex)の西部に所在するハールストン領主館(Manor House of Hurlstone)の主人となった。

リチャード・ブラントン(Richard Brunton)は、マスグレイヴ家に20年間も執事として仕えている、これ以上を望めない貴重な存在であったが、一家に伝わる古文書「マスグレイヴ家の儀式書」を彼が勝手に読んでいるのを、レジナルド・マスグレイヴが見つけ、その場で解雇を言い渡した。

レジナルド・マスグレイヴは、リチャード・ブラントンに対して、荷造りに1週間の猶予を与えたが、面子を潰されたリチャード・ブラントンは、靴、時計やお金等を残したまま、2日後に姿を消してしまう。

更に、リチャード・ブラントンと恋愛関係にあったメイドのレイチェル・ハウェルズ(Rachel Howells)は、リチャード・ブラントンに捨てられたショックのため、ヒステリー状態になり、看病している看護婦が目を離した隙に、彼女も姿を消した。

彼女が残した足跡を追ったところ、池の淵へ行ったことが判ったため、池の中を攫ったが、彼女の死体は見つからなかった。

地元の警察では埒が明かないとうことで、旧友のレジナルド・マスグレイヴから相談を受けたホームズは、「マスグレイヴ家の儀式書」に記された「それは、誰のものか?(Whose was it?)」と言う質問と「去りし人のものなり。(His who is gone.)」と言う答えで始まる儀式文が、何か重要なものを隠している場所を示している問答だと考えて、その解明に取り組むのであった。


「ストランドマガジン」の
1893年5月号「マスグレイヴ家の儀式書」に掲載された挿絵 -
シャーロック・ホームズと同じ大学で、顔見知り程度に過ぎなかった
レジナルド・マスグレイヴが、
指紋探偵業を始めたホームズが住む
モンタギューストリート(Montague Street → 2014年5月25日付ブログで紹介済)を訪れる。
大学を卒業して以来、4年ぶりの再会だった。
挿絵:シドニー・エドワード・パジェット(860年 - 1908年)


「マスグレイヴ家の儀式書」は、ホームズシリーズの短編小説56作のうち、18番目に発表された作品で、英国では、「ストランドマガジン」の1893年5月号に、また、米国では、「ハーパーズ ウィークリー(Harper’s Weekly)」の1893年5月13日号に掲載された。

また、同作品は、1893年に発行されたホームズシリーズの第2短編集「シャーロック・ホームズの回想(The Memoirs of Sherlock Holmes)」に収録されている。


(36)9 ♣️トビアス・グレッグスン警部(Inspector Tobias Gregson)



トビアス・グレッグスン警部は、アセルニー・ジョーンズ警部(Inspector Athelney Jones → 2024年x月x日付ブログで紹介済)やスタンリー・ホプキンス警部(Inspector Stanley Hopkins → 2024年x月x日付ブログで紹介済)と同じく、スコットランドヤードの警察官である。


「ストランドマガジン」の
1908年9月号「ウィステリア荘」に掲載された挿絵 -
サリー州(Surrey)エッシャー(Esher)近くのウェステリア荘に住む
アロイシアス・ガルシア(Aloysius Garcia)を殺害した容疑で、
スコットランドヤードのトビアス・グレッグスン警部と
サリー州警察(Surrey Constabulary)のベインズ警部(Inspector Baynes)の2人が、
ジョン・スコット・エクルズ(John Scott Eccles)の居所を突き止めて、
ベイカーストリート221Bまでやって来た。
画面左側から、ジョン・H・ワトスン、ジョン・スコット・エクルズ、
シャーロック・ホームズ、ベインズ警部、そして、グレッグスン警部。
挿絵:アーサー・トゥイドル


登場作品

<長編>

*「緋色の研究(A Study in Scarlet → 2016年7月30日付ブログで紹介済)」- ホームズシリーズの記念すべき第1作目で、英国では、「ビートンのクリスマス年鑑(Beeton’s Christmas Annual)」(1887年11月)に掲載された後、単行本化。

<短編>

「ギリシア語通訳(The Greek Interpreter)」は、ホームズシリーズの短編小説56作のうち、22番目に発表された作品で、英国では、「ストランドマガジン」の1893年9月号に、また、米国でも、「ハーパーズ ウィークリー」の1893年9月16日号に掲載された。

また、同作品は、1893年に発行されたホームズシリーズの第2短編集「シャーロック・ホームズの回想(The Memoirs of Sherlock Holmes)」に収録されている。

*「ウィステリア荘(Wisteria Lodge)」は、ホームズシリーズの短編小説56作のうち、38番目に発表された作品で、英国では、「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」の1908年9月号 / 10月号に、また、米国では、「コリアーズ ウィークリー(Collier’s Weekly)」の1908年8月15日号に掲載された。

また、同作品は、1917年に発行されたホームズシリーズの第4短編集「シャーロック・ホームズ最後の挨拶(His Last Bow)」に収録されている。

*「赤い輪(The Red Circle)」は、ホームズシリーズの短編小説56作のうち、41番目に発表された作品で、英国では、「ストランドマガジン」の1911年3月号 / 4月号に、また、米国では、米国版の「ストランドマガジン」の1911年4月号 / 5月号に掲載された。

また、同作品は、ホームズシリーズの第4短編集「シャーロック・ホームズ最後の挨拶」(1917年)に収録されている。