2025年7月24日木曜日

鮎川 哲也作「黒い白鳥」(The Black Swan Mystery by Tetsuya Ayukawa)- その2

英国のプーシキン出版(Pushkin Press)から
2024年に刊行されている
 Pushkin Vertigo シリーズの一つである

鮎川 哲也作「黒い白鳥」の裏表紙
(Cover design by Megan Rayner /
Image credit by Retro AdArchives + Alamy Stock Photo)


日本の推理作家である鮎川 哲也(1919年ー2022年 / 本名:中川 透(Toru Nakagawa)が、1959年7月から同年12月にかけて、岩谷書店の「宝石」誌上に連載した後、1960年2月に講談社から出版した長編推理小説で、鬼貫警部シリーズ(Inspector Onitsura)のうち、長編第3作目に該る「黒い白鳥(The Black Swan Mystery)」は、東和紡績会社(Towa Textiles Company)の


(1)常務の娘である須磨 敦子(Atsuko Suma)



(2)専務の妻である菱沼 文江(Fumie Hishinuma)


の二人は、銀座(Ginza)でショッピングを楽しんでいた。

その際、須磨 敦子は、菱沼 文江より、結婚相手として、同社の社長秘書である灰原 猛(Takeshi Haibara)を薦められて、困っていた。


そんな最中、6月2日埼玉県(Saitama Prefecture)久喜駅(Kuki Station)近くの線路沿いにおいて、八の字髭をぴんと生やした男性の射殺死体が発見された。その男性の射殺死体は、何処かで列車の屋根に載せられて、そこまで運ばれたものと考えられた。

そして、その被害者の身許が、労使抗争に揺れる東和紡績会社の社長である西ノ幡 豪輔(Gosuke Nishinohata)が判明する。


敗色濃厚な組合側の妄動か、それとも、冷遇の憂き目に遭う新興宗教の報告か囁かれる中、容疑者として、


*東和紡績会社の労働組合委員長である恋ヶ窪 義雄(Yoshio Koigakubo)

*東和紡績会社の労働組合副委員長である鳴海 秀作(Shusaku Narumi)

*沙満教の懐刀である知多 半平(Hanpei Chita)


等が浮上するも、捜査を担当する上野署の須藤部長刑事(Inspector Sudo)と関刑事(Constable Seki)の二人は、彼らを犯人と断定できるだけの決定的な動機と証拠を見出せないまま、次第に操作は膠着状態に陥る。

更に、須藤部長刑事と関刑事を嘲笑うように、第二、そして、第三の事件が発生する。


物語の中盤、膠着する捜査を警視庁の鬼貫警部と丹羽刑事(Constable Niwa)の二人が引き継ぐ。

捜査を引き継いだ鬼貫警部は、西ノ幡社長が銀行の貸し金庫に預けていた写真に注目して、一条の糸を手繰り、東京から京都、大阪、更に九州へと向かう。そして、鬼貫警部は、香椎線終着駅の町で、決定的な発見をするのであった。


物語の前半(捜査担当者:須藤部長刑事と関刑事)は、西ノ幡社長殺害の動機探し → 容疑者のアリバイ検証が繰り返され、やや散漫な印象を受けるものの、フーダニットの本格推理の様相を呈しているが、 物語の後半半(捜査担当者:鬼貫警部と丹羽刑事)になり、容疑者が次第に一人に絞られていくと、作者である鮎川哲也お得意のアリバイ崩しがメインとなる展開へシフトしていく。


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