2025年11月2日日曜日

「そして誰もいなくなった」の世界 <ジグソーパズル>(The World of ‘And Then There Were None’ )- その10

ジグソーパズルの下段のやや右側に、
ファイティングポーズをとる正装姿のウィリアム・ヘンリー・ブロアが、赤枠で囲まれている。
<筆者撮影>

英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に発行されている「「そして誰もいなくなった」の世界(The World of ‘And Then There Were None’)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているアガサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「そして誰もいなくなった(And Then There Were None)」(1939年)の登場人物や同作品に関連した47個にわたる手掛かりについて、引き続き、紹介したい。

英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に出ている
ジグソーパズル「「そして誰もいなくなった」の世界」(1000ピース)

(9)(22)ウィリアム・ヘンリー・ブロア(William Henry Blore )

謎のオーウェン氏(Mr. Owen)に招待された以下のメンバーは、それぞれのルートで兵隊島(Solidier Island → 2025年10月19日付ブログで紹介済)へと向かっていた。

兵隊島は、
ジグソーパズル「「そして誰もいなくなった」の世界」の左下の角に置かれている。
<筆者撮影>

<列車:ロンドン / パディントン駅(Paddington Station → 2014年8月3日付ブログで紹介済)→ オークブリッジ駅(Oakbridge Station)>

*高名な元判事のローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ(Lawrence John Wargrave → 2025年10月20日付ブログで紹介済)/ 一等車

*体育教師(games mistress)のヴェラ・エリザベス・クレイソーン(Vera Elizabeth Claythorne → 2025年10月21日付ブログで紹介済)/ 三等車

*元陸軍中尉(Lieutenant)のフィリップ・ロンバード(Philip Lombard → 2025年10月28日付ブログで紹介済)/ 三等車

*信仰心の厚い老婦人のエミリー・キャロライン・ブレント(Emily Caroline Brent → 2025年10月29日付ブログで紹介済)/ 三等車


パディントン駅のコンコースとそれを覆うガラス屋根
<筆者撮影>


<列車:出発地は不明 → エクセター駅(Exeter Station)→ オークブリッジ駅>

*退役した老将軍(General)のジョン・ゴードン・マッカーサー(John Gordon Macarthur → 2025年10月30日付ブログで紹介済)


<車(モーリス):ロンドン / ハーリーストリート(Harley Street → 2015年4月11日付ブログで紹介済)→ スティクルヘイヴン村(兵隊島へのボート発着所)>

*医師のエドワード・ジョージ・アームストロング(Edward George Armstrong → 2025年10月31日付ブログで紹介済)


ハーリーストリート60番地を示す
非常に凝った外壁の装飾
<筆者撮影>


ハーリーストリート沿いの建物
<筆者撮影>


その建物外壁のアップ写真
<筆者撮影>


<車(ダルメイン):出発地は不明→ スティクルヘイヴン村(兵隊島へのボート発着所)>

*遊び好きで、生意気な青年のアンソニー・ジェイムズ・マーストン(Anthony James Marston → 2025年11月1日付ブログで紹介済)


招待客の最後の一人である元警部(Detective Inspector)のウィリアム・ヘンリー・ブロアは、港町のプリマス(Plymouth → 2023年9月8日付ブログで紹介済)で、オークブリッジ駅行きの鈍行列車に乗車した。


プリマス海軍記念館(Plymouth Naval Memorial)は、
第一次世界大戦と第二次世界大戦で亡くなった
英国と英国連邦の船員に敬意を表して、捧げられている。


乗客は、ブロアのほかに一人きり。目をとろんとさせた、船乗り風の老人だ。今のところ眠っている。

ブロアは手帳に、なにやら細々と書きこんでいた。

「これで全部か」と、彼は低くつぶやいた。「エミリー・ブレント、ヴェラ・クレイソーン、医者のアームストロング、アンソニー・マーストン、ウォーグレイヴ判事、フィリップ・ロンバード、陸軍殊勲賞とナイトの称号をもつマッカーサー将軍、執事のロジャーズとその女房」

彼は手帳を閉じて、ポケットにしまった。そして隅で眠りこける老人を見た。

「酔ってるな。」ブロアの観察は、正確だった。

彼は頭の中で、今度のことを一つ一つ念入りに考えてみた。

”仕事としては簡単だ。しくじるはずがない。さて、見かけがどうか、だな”

ブロアは立ちあがって、窓ガラスに映る自分をしげしげと見た。口ひげを蓄えた顔はちょっと軍人風でもある。表情が乏しく、グレーの目と目の間が、狭かった。

”軍隊で少佐だったということにするか。いや、忘れてた。元軍人の爺さんがいるんだっけ。すぐに見破られてしまうな。南アフリカはどうだろう。うん、その線だな! 南アフリカに関係があるのは、一人もいないし、南アフリカの旅行案内を読んだばかりだから、話の受け答えもばっちりだ”

うまい具合に、植民地生まれには、ありとあらゆる種類、タイプがいる。南アフリカでひと山当てたことにしよう。それなら、どんな場所でも怪しまれることはあるまい。

兵隊島か。ブロアは、子供の頃に見た兵隊島を思いだした。海岸から一マイル沖合いにある。カモメだらけでいかにもプンプン臭いそうな、岩ばかりの島だ。

あんな島に、わざわざ家を建てるかねえ! 天気が悪いと、ひどい所なのだ。しかし、金持ちは物好きだからな。

(青木 久惠訳)


ジグソーパズルの下段のやや右側に、ファイティングポーズをとる正装姿のウィリアム・ヘンリー・ブロアが、赤枠で囲まれている。また、兵隊島に建つ邸宅の玄関の右側にある階段の前で、同じく、正装して、ファイティングポーズをとるウィリアム・ヘンリー・ブロアの姿が見られる。


兵隊島に建つ邸宅の玄関の右側にある階段の前で、
正装して、ファイティングポーズをとるウィリアム・ヘンリー・ブロアの姿が見られる。
<筆者撮影>


1930年代後半の8月のこと、英国デヴォン州の沖合いに浮かぶ兵隊島に、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンを含め、年齢も職業も異なる8人の男女が招かれる。彼らを島で迎えた召使と料理人の夫婦は、エリック・ノーマン・オーウェン氏(Mr. Ulick Norman Owen)とユナ・ナンシー・オーウェン夫人に自分達は雇われていると招待客に告げる。しかし、彼らの招待主で、この島の所有者であるオーウェン夫妻は、いつまで待っても、姿を現さないままだった。


招待客が自分達の招待主や招待状の話をし始めると、皆の説明が全く噛み合なかった。その結果、招待状が虚偽のものであることが、彼らには判ってきた。招待客の不安がつのる中、晩餐会が始まるが、その最中、招待客8人と召使夫婦が過去に犯した罪を告発する謎の声が室内に響き渡る。

ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、ジェイムズ・スティーヴン・ランドー(James Stephen Landor)を死に至らせたと告発された。


招待客が兵隊島に到着した日の晩餐会において、
謎の声(オーウェン氏)による告発により、招待客8人と召使夫婦が戦慄する場面 -

HarperCollins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」の
グラフィックノベル版(→ 2020年9月13日付ブログで紹介済)から抜粋。


そして、物語が進み、童謡「10人の子供の兵隊(Ten Little Soldiers → 2025年6月26日付ブログで紹介済)」に準えて、ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、8番目の被害者となる。


Three little soldier boys walking in the zoo; A big bear hugged one and then there were Two.

(3人の子供の兵隊さんが、動物園内を歩いていた。一人が大きな熊に抱き締められて、残りは2人になった。)


東側の石のテラスにおいて、ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、

大の字になって倒れており、頭を大きな白大理石の固まりで打ち砕かれていた。

それは、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンの部屋の暖炉の上に置かれていた熊の形をした時計だった。-

HarperCollins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。


*被害者:ウィリアム・ヘンリー・ブロア

*告発された罪状:ジェイムズ・スティーヴン・ランドー(James Stephen Landor)を死に至らせたと告発された。

ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、ロンドン商業銀行が襲われた事件の捜査を担当しており、ジェイムズ・スティーヴン・ランドーを犯人として逮捕。その実績を買われて、ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、昇進を果たしている。なお、ジェイムズ・スティーヴン・ランドーは、終身刑となり、1年後にダートムーア刑務所で死亡。

*犯罪発生時期:1928年10月10日


その日の午前中、フィリップ・ロンバードの提案に基づき、

残った3人は、兵隊島の一番高いところから、鏡で日光を反射させて、対岸へ信号を送る努力を続けた。

午後2時になると、腹をすかしたウィリアム・ヘンリー・ブロアは、屋敷へと戻る。

フィリップ・ロンバードとヴェラ・エリザベス・クレイソーンの2人は、そのまま残る。-

HarperCollins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。


*死因:熊の形をした時計の落下による頭蓋骨骨折

フィリップ・ロンバードとヴェラ・エリザベス・クレイソーンの2人が屋敷に戻ると、東側の石のテラスにおいて、ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、大の字になって倒れており、頭を大きな白大理石の固まりで打ち砕かれていた。それは、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンの部屋の暖炉の上に置かれていた熊の形をした時計だった。


2025年11月1日土曜日

「そして誰もいなくなった」の世界 <ジグソーパズル>(The World of ‘And Then There Were None’ )- その9

ジグソーパズルの中段の右端に、サングラスをかけて、
大型スポーツカーのダルメインを運転するアンソニー・ジェイムズ・マーストンが、赤枠で囲まれている。
<筆者撮影>


英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に発行されている「「そして誰もいなくなった」の世界(The World of ‘And Then There Were None’)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているアガサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「そして誰もいなくなった(And Then There Were None)」(1939年)の登場人物や同作品に関連した47個にわたる手掛かりについて、引き続き、紹介したい。


英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に出ている
ジグソーパズル「「そして誰もいなくなった」の世界」(1000ピース)


(8)(23)アンソニー・ジェイムズ・マーストン(Anthony James Marston)


高名な元判事のローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ(Lawrence John Wargrave → 2025年10月20日付ブログで紹介済)、体育教師(games mistress)のヴェラ・エリザベス・クレイソーン(Vera Elizabeth Claythorne → 2025年10月21日付ブログで紹介済)、元陸軍中尉(Lieutenant)のフィリップ・ロンバード(Philip Lombard → 2025年10月28日付ブログで紹介済)、信仰心の厚い老婦人のエミリー・キャロライン・ブレント(Emily Caroline Brent → 2025年10月29日付ブログで紹介済)や退役した老将軍(General)のジョン・ゴードン・マッカーサー(John Gordon Macarthur → 2025年10月30日付ブログで紹介済)の5人は、列車に乗っていたが、遊び好きで、生意気な青年のアンソニー・ジェイムズ・マーストンは、医師のエドワード・ジョージ・アームストロング(Edward George Armstrong → 2025年10月31日付ブログで紹介済)と同じく、車で現地へと向かう途中だった。

アンソニー・ジェイムズ・マーストンが運転する大型スポーツカーのダルメインは、ウィルトシャー州(Wiltshire)のソールズベリー(Salisbury)平野において、エドワード・ジョージ・アームストロング医師が乗る車モーリス(Morris)を時速80マイルの猛スピードで追い抜いた際、アームストロング医師の車を危うく垣根に突っ込ませるところだった。

そして、アンソニー・ジェイムズ・マーストンのスポーツカーは、エンジンを唸らせながら、ウィルトシャー州のミアへと入る。

オーウェン夫妻からの招待を受けたアンソニー・ジェイムズ・マーストンの目的地は、デヴォン州海岸の沖合いの島である兵隊島(Solidier Island → 2025年10月19日付ブログで紹介済)だった。ただし、彼は、招待主であるオーウェン夫妻が、一体、どういう人物なのか、全く知らなかったである。


兵隊島は、
ジグソーパズル「「そして誰もいなくなった」の世界」の左下の角に置かれている。
<筆者撮影>


ここで一休みして、一杯やるか。それとも、このまま突っぱしるか。時間はたっぷりあるな。あと百マイルちょっとだ。ジンのジンジャービア割りでも飲むか。今日はやけに暑い!


<中略>


ホテルから出てきたマーストンは、大きくのびをした。そしてあくびをしてから、空を見あげ、ダルメインに乗りこんだ。

若い女性が数人、マーストンを見て、胸をときめかせた - 彼は身長六フィートの均整の取れた体格をしていた。カーリー・ヘアに日やけした肌、そして、吸いこまれそうな、青い瞳。

マーストンは轟音を響かせてクラッチを入れ、狭い通りに飛びだした。年寄りや使い走りの少年があわてて飛びのいた。少年たちは走り去る車を、ほれぼれと眺めた。

アンソニー・マーストンは、意気揚々とアクセルを踏みこんだ。

(青木 久惠訳)


ジグソーパズルの中段の右端に、サングラスをかけて、大型スポーツカーのダルメインを運転するアンソニー・ジェイムズ・マーストンが、赤枠で囲まれている。また、その左斜め下には、兵隊島に建つ邸宅の居間において、ソファーにリラックして座り、酒を楽しむアンソニー・ジェイムズ・マーストンの姿が見られる。


兵隊島に建つ邸宅の居間(1階(Ground Floor)の一番右端)において、
ソファーにリラックして座り、酒を楽しむアンソニー・ジェイムズ・マーストンの姿が見られる。
<筆者撮影>


1930年代後半の8月のこと、英国デヴォン州の沖合いに浮かぶ兵隊島に、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンを含め、年齢も職業も異なる8人の男女が招かれる。彼らを島で迎えた召使と料理人の夫婦は、エリック・ノーマン・オーウェン氏(Mr. Ulick Norman Owen)とユナ・ナンシー・オーウェン夫人に自分達は雇われていると招待客に告げる。しかし、彼らの招待主で、この島の所有者であるオーウェン夫妻は、いつまで待っても、姿を現さないままだった。


招待客が自分達の招待主や招待状の話をし始めると、皆の説明が全く噛み合なかった。その結果、招待状が虚偽のものであることが、彼らには判ってきた。招待客の不安がつのる中、晩餐会が始まるが、その最中、招待客8人と召使夫婦が過去に犯した罪を告発する謎の声が室内に響き渡る。

アンソニー・ジェイムズ・マーストンは、スピードを出し過ぎた車で、二人の子供(ジョン・クームズ(John Coombes)とルーシー・クームズ(Lucy Coombes))を轢き殺した殺と告発された。


招待客が兵隊島に到着した日の晩餐会において、
謎の声(オーウェン氏)による告発により、招待客8人と召使夫婦が戦慄する場面 -

HarperCollins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」の
グラフィックノベル版(→ 2020年9月13日付ブログで紹介済)から抜粋。


そして、物語が進み、童謡「10人の子供の兵隊(Ten Little Soldiers → 2025年6月26日付ブログで紹介済)」に準えて、アンソニー・ジェイムズ・マーストンは、最初の被害者となる。

食堂(Dining Room)のテーブルの上には、
当初、10人の兵隊人形が置かれていた。-
HarperCollins Publishers 社から出ている
アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。


Ten little soldier boys went out to dine; One choked his little self and then there were Nine.

(10人の子供の兵隊さんが、ご飯を食べに出かけた。一人が喉を詰まらせて、残りは9人になった。)


アンソニー・ジェイムズ・マーストンは、
ブランデーが入ったグラスに投与された青酸カリによる中毒により、
最初の犠牲者となる。
-
HarperCollins Publishers 社から出ている
アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。


*被害者:アンソニー・ジェイムズ・マーストン

*告発された罪状:二人の子供であるジョン・クームズ(John Coombes)とルーシー・クームズ(Lucy Coombes)を殺害(具体的に言うと、スピードを出し過ぎた車で轢き殺している)。

*犯罪発生時期:去年(last year)の11月14日

*死因:ブランデー(brandy)が入ったグラスに投与された青酸カリによる中毒死


アンソニー・ジェイムズ・マーストンがブランデーが入ったグラスに投与された青酸カリによる中毒死した夜、
執事のトマス・ロジャーズが、食堂の後片付けをしていた際、
テーブルの上に置かれた兵隊の人形の数が10個から9個へと減っていることに気付く。 -

HarperCollins Publishers 社から出ている
アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。


2025年10月31日金曜日

「そして誰もいなくなった」の世界 <ジグソーパズル>(The World of ‘And Then There Were None’ )- その8

ジグソーパズルの下段の中央に、
首の後ろに右手を当てているエドワード・ジョージ・アームストロング医師が、赤枠で囲まれている。
<筆者撮影>


英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に発行されている「「そして誰もいなくなった」の世界(The World of ‘And Then There Were None’)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているアガサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「そして誰もいなくなった(And Then There Were None)」(1939年)の登場人物や同作品に関連した47個にわたる手掛かりについて、引き続き、紹介したい。


英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に出ている
ジグソーパズル「「そして誰もいなくなった」の世界」(1000ピース)


(7)(21)エドワード・ジョージ・アームストロング(Edward George Armstrong)


ロンドン・ハーリーストリート(Harley Street → 2015年4月11日付ブログで紹介済)の開業医のエドワード・ジョージ・アームストロングは、高名な元判事のローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ(Lawrence John Wargrave → 2025年10月20日付ブログで紹介済)、体育教師(games mistress)のヴェラ・エリザベス・クレイソーン(Vera Elizabeth Claythorne → 2025年10月21日付ブログで紹介済)、元陸軍中尉(Lieutenant)のフィリップ・ロンバード(Philip Lombard → 2025年10月28日付ブログで紹介済)、信仰心の厚い老婦人のエミリー・キャロライン・ブレント(Emily Caroline Brent → 2025年10月29日付ブログで紹介済)や退役した老将軍(General)のジョン・ゴードン・マッカーサー(John Gordon Macarthur → 2025年10月30日付ブログで紹介済)とは異なり、列車ではなく、車で現地へと向かう途中だった。


ハーリーストリート60番地を示す
非常に凝った外壁の装飾
<筆者撮影>

ハーリーストリート沿いの建物
<筆者撮影>

その建物外壁のアップ写真
<筆者撮影>


エドワード・ジョージ・アームストロング医師の車モーリス(Morris)は、サマーセット州(Somerset)の東隣りに位置するウィルトシャー州(Wiltshire)のソールズベリー(Salisbury)平野を走っていた。


エドワード・ジョージ・アームストロング医師は、オーウェン氏(Mr. Owen)なる人物から、びっくりするような金額の小切手が同封された手紙を受け取っていた。オーウェン氏によると、妻の健康を心配しているのだが、彼女は神経が過敏な上に、医者の診察を嫌がっているため、彼女に気付かれないように、病気の診断をしてほしい、とのことだった。

エドワード・ジョージ・アームストロング医師の経験では、自分が診察する女性の半分は、退屈しているだけで、身体はどこも悪くなく、今回のオーウェン氏の依頼は仕事として悪くなかった。彼としては、8月の朝にロンドンを離れて、デヴォン州海岸の沖合いの島である兵隊島(Solidier Island → 2025年10月19日付ブログで紹介済)で何日か過ごせるのは、嬉しかった。


兵隊島は、
ジグソーパズル「「そして誰もいなくなった」の世界」の左下の角に置かれている。
<筆者撮影>


十年前、いや、十五年前だったか、あの事件のあと何とか立ち直れたのは、ラッキーだった。あのときは本当にあぶなかった! もう少しで、なにもかも失うところだったじゃないか。ショックで目が覚めた。酒は、きっぱりやめた。いやはや、それにしても本当にあぶなかった…。

耳をつんざかんばかりのクラクションの音が響きわたり、大型スーパー・スポーツカー、ダルメインが、時速八十マイルの猛スピードで追い抜いていった。アームストロング医師は、あやうく垣根に突っこむところだった。いなか道をむこうみずに突っぱしる、暴走族の若者だ。アームストロングは、ああいう若者が大きらいだった。またも、あぶないところだったじゃないか。いまいましいったらない!

(青木 久惠訳)


ジグソーパズルの下段の中央に、首の後ろに右手を当てているエドワード・ジョージ・アームストロング医師が、赤枠で囲まれている。また、その右斜め上には、兵隊島に建つ邸宅の玄関から外へと出て、テラスを降りた後、エドワード・ジョージ・アームストロング医師が走り去る姿が見られる。


赤枠で囲まれたエドワード・ジョージ・アームストロング医師の右斜め上には、
兵隊島に建つ邸宅の玄関から外へと出て、テラスを降りた後、
彼が走り去る姿が見られる。
<筆者撮影>


1930年代後半の8月のこと、英国デヴォン州の沖合いに浮かぶ兵隊島に、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンを含め、年齢も職業も異なる8人の男女が招かれる。彼らを島で迎えた召使と料理人の夫婦は、エリック・ノーマン・オーウェン氏(Mr. Ulick Norman Owen)とユナ・ナンシー・オーウェン夫人に自分達は雇われていると招待客に告げる。しかし、彼らの招待主で、この島の所有者であるオーウェン夫妻は、いつまで待っても、姿を現さないままだった。


招待客が自分達の招待主や招待状の話をし始めると、皆の説明が全く噛み合なかった。その結果、招待状が虚偽のものであることが、彼らには判ってきた。招待客の不安がつのる中、晩餐会が始まるが、その最中、招待客8人と召使夫婦が過去に犯した罪を告発する謎の声が室内に響き渡る。

エドワード・ジョージ・アームストロング医師は、アルコールを摂取した後、患者のルイーザ・メアリー・クリース(Louisa Mary Clees)の手術を執刀して、死に至らせたと告発された。


招待客が兵隊島に到着した日の晩餐会において、
謎の声(オーウェン氏)による告発により、招待客8人と召使夫婦が戦慄する場面 -

HarperCollins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」の
グラフィックノベル版(→ 2020年9月13日付ブログで紹介済)から抜粋。


そして、物語が進み、童謡「10人の子供の兵隊(Ten Little Soldiers → 2025年6月26日付ブログで紹介済)」に準えて、エドワード・ジョージ・アームストロング医師は、6番目の被害者となる。


Four little soldier boys going out to sea; A red herring swallowed one and then there were Three.

(4人の子供の兵隊さんが、海へ出かけた。一人が燻製の鰊(ニシン)に呑みれて、残りは3人になった。)


原作の場合、

夜中、屋敷から外へ出て行ったエドワード・ジョージ・アームストロングの追跡が失敗に終わり、

屋敷に戻って来たフィリップ・・ロンバードとウィリアム・ヘンリー・ブロアの2人は、

食堂へ行って、兵隊人形の数が3個に減っていることを確認。-

HarperCollins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。


*被害者:エドワード・ジョージ・アームストロング

*告発された罪状:アルコールを摂取した後、患者のルイーザ・メアリー・クリースの手術を執刀して、死に至らせたと告発された。

*犯罪発生時期:1925年3月14日

*死因:溺死


原作の場合、海岸の二つの岩の間に、
エドワード・ジョージ・アームストロングの溺死体が挟まれているのが、
フィリップ・・ロンバードとヴェラ・エリザベス・クレイソーンの2人によって発見されている。
エドワード・ジョージ・アームストロングの溺死体は、満ち潮で打ち上げられたのである。-

HarperCollins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。


なお、「red herring」とは、本来の問題点から皆の注意を他に逸らして、論点をすり替える論理的誤謬を指す用語で、推理小説においては、登場人物(警察や探偵等を含む)や読者を誤った結論へと導くために使用される虚偽の証拠や情報等のことを言う。


つまり、夜中に、エドワード・ジョージ・アームストロング医師が部屋から抜け出して、外へ出て行ったため、フィリップ・・ロンバードとウィリアム・ヘンリー・ブロア(William Henry Blore - 元警部)の2人が、「エドワード・ジョージ・アームストロングが、一連の殺人を行った犯人だ。」と考えて、彼の後を追うが、これは、登場人物である彼らと読者を誤った結論へと導いていることを、作者であるアガサ・クリスティーが「red herring」と言う用語を使って、匂わせているものと思われる。


2025年10月30日木曜日

「そして誰もいなくなった」の世界 <ジグソーパズル>(The World of ‘And Then There Were None’ )- その7

ジグソーパズルの中段の一番左端に、
愛する妻レスリーに思いを馳せるジョン・ゴードン・マッカーサーが、
赤枠で囲まれている。
<筆者撮影>

英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に発行されている「「そして誰もいなくなった」の世界(The World of ‘And Then There Were None’)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているアガサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「そして誰もいなくなった(And Then There Were None)」(1939年)の登場人物や同作品に関連した47個にわたる手掛かりについて、引き続き、紹介したい。


英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に出ている
ジグソーパズル「「そして誰もいなくなった」の世界」(1000ピース)


(6)(16)ジョン・ゴードン・マッカーサー(John Gordon MacArthur)


退役した老将軍(General)のジョン・ゴードン・マッカーサーは、高名な元判事のローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ(Lawrence John Wargrave → 2025年10月20日付ブログで紹介済)、体育教師(games mistress)のヴェラ・エリザベス・クレイソーン(Vera Elizabeth Claythorne → 2025年10月21日付ブログで紹介済)、元陸軍中尉(Lieutenant)のフィリップ・ロンバード(Philip Lombard → 2025年10月28日付ブログで紹介済)や信仰心の厚い老婦人のエミリー・キャロライン・ブレント(Emily Caroline Brent → 2025年10月29日付ブログで紹介済)とは異なるルートで、オークブリッジ駅(Oakbridge Station)へと向かっていた。

ジョン・ゴードン・マッカーサーが乗った列車は、丁度、デヴォン州(Devon)の州都であるエクセター(Exeter)の駅に入るところで、当該駅で乗り換える必要があった。


ジョン・ゴードン・マッカーサーは、オーウェン(Owen)なる人物に、デヴォン州海岸の沖合いの島である兵隊島(Solidier Island → 2025年10月19日付ブログで紹介済)へと招待されていた。

オーウェンなる人物によると、ジョン・ゴードン・マッカーサーの古い友人も招待されている、とのことだった。


兵隊島は、
ジグソーパズル「「そして誰もいなくなった」の世界」の左下の角に置かれている。
<筆者撮影>


将軍には、このオーエンなる人物がいったい何者なのか、どうもはっきりしなかった。スプーフ・レガードの友達のようだし - それにジョニー・ダイアの友達でもあるらしい。

”- 閣下の古いご友人も、一人二人お見えになります - 昔話に花を咲かせられるのも、よろしいかと”

うむ、昔話をしたら、さぞかし楽しかろう。将軍はこの頃、周囲の人間が自分を避けているような気がしてならなかった。あの噂のせいにきまっておる! やれやれ、なんてしつこいんだ - もう三十年近く前のことではないか! アーミテッジのやつがしゃべったにちがいない。あの青二才め! いったいなにをつかんだのだろう。いや、よそう、こんなことをくよくよ気にしても始まらない。誰でも、ふとそんな気がすることがある - 変な目で見られているような、そんな気が -

それじゃともかくとして、この兵隊島は、将軍も自分の目で見たいと思っていた。噂が噂を呼んでいる島だ。海軍省か陸軍省、あるいは空軍が手に入れたという話は、噂ばかりとは言えないようだし…

エルマー・ロブソンという若いアメリカ人の富豪が、そこに邸宅を建てたのは事実だ。大金をかけたと聞いている。とほうもなく贅沢なものらしい…。

(青木 久惠訳)


ジグソーパズルの中段の一番左端に、愛する妻レスリー(Lesley)に思いを馳せるジョン・ゴードン・マッカーサーが、赤枠で囲まれている。また、直ぐ下には、兵隊島の先端に一人ポツンと座り、水平線をジッと見つめている彼の姿が見られる。


兵隊島に建つ邸宅の一番左端には、
兵隊島の先端に一人ポツンと座り、水平線をジッと見つめている
ゴードン・マッカーサーの姿が見られる。
<筆者撮影>


1930年代後半の8月のこと、英国デヴォン州の沖合いに浮かぶ兵隊島に、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンを含め、年齢も職業も異なる8人の男女が招かれる。彼らを島で迎えた召使と料理人の夫婦は、エリック・ノーマン・オーウェン氏(Mr. Ulick Norman Owen)とユナ・ナンシー・オーウェン夫人に自分達は雇われていると招待客に告げる。しかし、彼らの招待主で、この島の所有者であるオーウェン夫妻は、いつまで待っても、姿を現さないままだった。


招待客が自分達の招待主や招待状の話をし始めると、皆の説明が全く噛み合なかった。その結果、招待状が虚偽のものであることが、彼らには判ってきた。招待客の不安がつのる中、晩餐会が始まるが、その最中、招待客8人と召使夫婦が過去に犯した罪を告発する謎の声が室内に響き渡る。

ジョン・ゴードン・マッカーサーは、戦地において、自分の部下で、妻レスリーの愛人だったアーサー・リッチモンド(Arthur Richmond)を故意に死地へ赴かせたと告発された。


招待客が兵隊島に到着した日の晩餐会において、
謎の声(オーウェン氏)による告発により、招待客8人と召使夫婦が戦慄する場面 -

HarperCollins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」の
グラフィックノベル版(→ 2020年9月13日付ブログで紹介済)から抜粋。


そして、物語が進み、童謡「10人の子供の兵隊(Ten Little Soldiers → 2025年6月26日付ブログで紹介済)」に準えて、エミリー・キャロライン・ブレントは、3番目の被害者となる。


Eight little soldier boys travelling in Devon; One said he’d stay and then there were Seven.

(8人の子供の兵隊さんが、デヴォン州を旅した。一人がそこに住むと言って、残りは7人になった。)



退役した老将軍であるジョン・ゴードン・マッカーサーは、
海岸において、自分の罪状を悔いている際、
鉛入りの護身用ステッキか何かで後頭部を殴打され、
頭蓋骨折のため、3番目
の犠牲者となる。
画面左下の場面において、右側から、ヴェラ・エリザベス・クレイソーン(秘書)、
トマス・ロジャーズ(執事)、
ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ(元判事)、
ウィリアム・ヘンリー・ブロア(元警部)、ジョン・ゴードン・マッカーサー(遺体)、
フィリップ・ロンバード(元陸軍中尉)、エドワード・ジョージ・アームストロング(医師)、
そして、
エミリー・キャロライン・ブレント(老婦人)が立っている。-

HarperCollins Publishers 社から出ている
アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。

*被害者:ジョン・ゴードン・マッカーサー

*告発された罪状:戦地において、自分の部下で、妻レスリーの愛人だったアーサー・リッチモンドを故意に死地へ赴かせた。

*犯罪発生時期:1917年1月14日

*死因:鉛入りの護身用ステッキか何かによる後頭部殴打に基づく頭蓋骨折


ジョン・ゴードン・マッカーサーの死亡に伴い
テーブルの上に置かれた兵隊の人形の数が8個から7個へと減っていた。-
HarperCollins Publishers 社から出ている
アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。