2025年7月4日金曜日

コナン・ドイル作「高名な依頼人」<英国 TV ドラマ版>(The Illustrious Client by Conan Doyle )- その1

英国の俳優であるジェレミー・ブレットが主人公のシャーロック・ホームズを演じた
英国のグラナダテレビジョン制作の「シャーロック・ホームズの冒険」の
「高名な依頼人」における1場面 -
シャーロック・ホームズ博物館(Sherlock Holmes Museum)において、絵葉書として販売されていた。

シャーロック・ホームズは、
アデルバート・グルーナー男爵が放った2人組の暴漢に襲われて、大怪我を負ってしまう。
仕事で外出先に居たジョン・H・ワトスンは、
「シャーロック・ホームズ氏 襲撃される」と言う新聞売りの声を聞き、
新聞を買い、その記事を読んで、非常に驚くのだった。

コナン・ドイルの原作の場合、ホームズが襲撃された場所は、
カフェロイヤル(Cafe Royal → 2014年11月30日付)の外の
リージェントストリート(Regent Street)の路上で、
襲撃された時間は朝だった。
一方、英国 TV ドラマ版の場合、ホームズが襲撃された場所は、
夕食を一緒に食べたワトスンと別れた後、
一人でベーカーストリート221B へと戻る途中の路上で、
襲撃された時間は夜だった。

「シャーロック・ホームズ氏 襲撃される」と言う新聞の見出しは、
原作の場合、「MURDEROUS  ATTACK UPON SHERLOCK HOLMES」となっているが、
英国 TV ドラマ版の場合、「MURDEROUS  ATTACK ON SHERLOCK HOLMES」となっている。

なお、英国 TV ドラマ版において、
ワトスンは、道の中央に立っていた新聞売り(画面右奥の人物)から、新聞を買っているので、
厳密に言うと、映像上、このような場面は存在していない。

サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)作「高名な依頼人(The Illustrious Client → 2025年6月18日 / 6月23日 / 6月27日付ブログで紹介済)」は、シャーロック・ホームズシリーズの短編小説56作のうち、50番目に発表された作品で、英国の「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」の1925年2月号と同年3月号に、また、米国の「コリアーズ ウィークリー(Collier’s Weekly)」の1924年11月8日号に掲載された。

同作品は、1927年に発行されたホームズシリーズの第5短編集「シャーロック・ホームズの事件簿(The Case-Book of Sherlock Holmes)」に収録されている。


本作品は、英国のグラナダテレビ(Granada Television Limited)が制作した「シャーロック・ホームズの冒険(The Adventures of Sherlock Holmes)」(1984年ー1994年)において、TV ドラマとして映像化された。具体的には、第5シリーズ(The Case-book of Sherlock Holmes)の第5エピソード(通算では第31話)として、英国では1991年に放映されている。


配役は、以下の通り。


(1)シャーロック・ホームズ → ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett:1933年ー1995年)

(2)ジョン・H・ワトスン → エドワード・ハードウィック(Edward Hardwicke:1932年ー2011年)


(3)ハドスン夫人(Mrs. Hudson)→ Rosalie Williams


<事件関係者>

(4)アデルバート・グルーナー男爵(Baron Adelbert Gruner:オーストリアの貴族で、現在、英国のキングストン(Kingston)近くのヴァーノンロッジ(Vernon Lodge)に居住)→ Anthony Valentine

(5)グルーナー男爵夫人(Baroness Gruner:アデルバート・グルーナー男爵の妻)→ Carol Noakes

(6)サー・ジェイムズ・デマリー大佐(Colonel Sir James Damery:今回の事件の表向きの依頼人)→  David Langton

(7)ヴァイオレット・ド・メルヴィル(Violet de Merville:ド・メルヴィル将軍(General de Merville)の令嬢で、アデルバート・グルーナー男爵の婚約者)→ Abigail Cruttenden

(8)ジャーヴィス(Jarvis:アデルバート・グルーナー男爵の執事)→ John Pickles

(9)キティー・ウィンター(Kitty Winter:アデルバート・グルーナー男爵の元愛人で、被害者)→ Kim Thomson

(10)シンウェル・ジョンスン(Shinwell Johnson:ロンドンの裏社会に通じた情報屋で、ホームズの協力者)→ Roy Holder


(3)

ハドスン夫人は、原作には登場しないが、英国 TV ドラマ版には登場している。


(5)

グルーナー男爵夫人は、原作の場合、ベイカーストリート221B(221B Baker Street → 2014年6月22日 / 6月29日付ブログで紹介済)を訪れたサー・ジェイムズ・デマリー大佐とホームズ / ワトスンの間で、言及されているのみだが、英国 TV ドラマ版の場合、物語の冒頭において、映像として登場する。


(8)

アデルバート・グルーナー男爵の執事は、原作の場合、登場するものの、名前については、言及されていない。英国 TV ドラマ版の場合、「ジャーヴィス」と言う名前が与えられている。


2025年7月3日木曜日

アガサ・クリスティー作「もの言えぬ証人」<小説版(愛蔵版)>(Dumb Witness by Agatha Christie )- その2

2025年に英国の HarperCollinsPublishers 社から出版された
アガサ・クリスティー作「もの言えぬ証人」の
愛蔵版(ハードカバー版)の裏表紙
(Cover design and 
illustration
by Sarah Foster / 
HarperCollinsPublishers Ltd. ) -
小緑荘の女主人であるエミリー・アランデルの
飼い犬であるボブ(Bob)と犬の遊び道具のボールが描かれている。
また、
エミリー・アランデルが転落して、
寝込む原因となった階段が、画面左手に描かれている。
表紙に描かれたボブは、階段下に居て、
こちらに顔を向けているが、
裏表紙に描かれたボブは、
階段下ではなく、階段を昇っており、
画面内にあるのは、下半身だけで、上半身は画面の外にある。

アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「もの言えぬ証人(Dumb Witness)」(1937年)の場合、1936年6月28日、エルキュール・ポワロが、エミリー・アランデル(Emily Arundell - なお、フルネームは、エミリー・ハリエット・ラヴァートン・アランデル(Emily Harriet Laverton Arundell))と名乗る老婦人から、自分の命に危険が迫っていることを示唆する内容の手紙を受け取るところから、物語が始まる。奇妙なことに、手紙の日付は、その年の4月17日になっており、手紙が書かれてから2ヶ月後も経ってから投函されているのだった。

ポワロの相棒で、友人でもあるアーサー・ヘイスティングス大尉(Capitain Arthur Hastings)は、「老婦人のとりとめのない妄想ではないか?」と疑問を呈したが、手紙が差し出された経緯について興味を覚えたポワロは、ヘイスティングス大尉を伴って、事実を確かめるために、エミリー・アランデルが住むバークシャー州(Berkshire)のマーケットベイジング(Market Basing)へと赴くことにした。


ポワロとヘイスティングス大尉の二人が、エミリー・アランデルの住所である小緑荘(Littlegreen House)を訪れると、屋敷の前には、「売家」の札が掲げられていた。疑問を抱いた二人が地元で尋ねると、エミリー・アランデル本人は、1ヶ月以上も前の1936年5月1日に亡くなっていたのである。


2025年に英国の HarperCollinsPublishers 社から出版された
アガサ・クリスティー作「もの言えぬ証人」の
愛蔵版(ハードカバー版)の見返し部分 -
小緑荘の女主人であるエミリー・アランデルの
飼い犬であるボブの足跡でデザインされている。


亡くなったエミリー・アランデルは、長女マチルダ(Matilda - なお、フルネームは、マチルダ・アン・アランデル(Matilda ann Arundell))、三女アラベラ(Arabella)、長男トマス(Thomas)および四女アグネス(Agnes - なお、フルネームは、アグネス・ジョルジーナ・メアリー・アランデル(Agnes Georgina Mary Arundell))の五人兄弟の次女で、ただ一人存命中だった。

彼女は、父親のアランデル将軍からかなりの財産を相続しており、非常に裕福であった。彼女は、生涯未婚の上、自分の財産を遺す子供が居なかったため、以下の姪と甥が将来彼女の遺産を分け合うものと思われていた。


(1)ベラ・タニオス(Bella Tanios):三女アラベラの娘   

(2)チャールズ・アランデル(Charles Arundell):長男トマスの長男で、テリーザの兄

(3)テリーザ・アランデル(Theresa Arundell):長男トマスの長女で、チャールズの妹


なお、ベラ・タニオスは、ジャコブ・タニオス(Dr. Jacob Tanios - ギリシア人の医者)と結婚して、2人の間には、2人の子供(娘+息子)を設けていた。

また、テリーザ・アランデルは、マーケットベイジングに住むレックス・ドナルドスン(Dr. Rex Donaldson - 医者)と婚約していた。


ところが、エミリー・アランデルは、亡くなるわずか数日前に、遺言書を書き換えていて、新しい遺言書により、彼女の全財産は、彼女の相手役(コンパニオン)であるウィルへルミナ・ロウスン(Wilhelmina Lawson - 通称:ミニー(Minnie))に遺贈され、彼女の本当の肉親である姪2人と甥1人に対しては、何も残されなかったのである。そのため、地元マーケットベイジングの住人達の間では、その噂でもちきりだった。


エミリー・アランデルの遺族の間で憤懣がつのる中、彼女の愛犬であった「もの言えぬ証人(Dumb Witness)」のテリア犬ボブ(Bob)は、彼女の死の真相究明に乗り出したポワロとヘイスティングス大尉に対して、何かを伝えようとしていたのである。


2025年7月2日水曜日

ロンドン リッツ ロンドン(The Ritz London)- その1


アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1939年に発表したノンシリーズ作品「そして誰もいなくなった(And Then There Were None)」の場合、1930年代後半の8月のこと、英国デヴォン州(Devon)の沖合いに浮かぶ兵隊島(Soldier Island)に、年齢も職業も異なる8人の男女が招かれるところから、物語が始まる。

彼らを島で迎えた召使と料理人の夫婦は、エリック・ノーマン・オーウェン氏(Mr. Ulick Norman Owen)とユナ・ナンシー・オーウェン夫人(Mrs. Una Nancy Owen)に自分達は雇われていると招待客に告げる。しかし、彼らの招待主で、この島の所有者であるオーウェン夫妻は、いつまで待っても、姿を現さないままだった。



招待客が自分達の招待主や招待状の話をし始めると、皆の説明が全く噛み合なかった。その結果、招待状が虚偽のものであることが、彼らには判ってきた。招待客の不安がつのる中、晩餐会が始まるが、その最中、招待客8人と召使夫婦が過去に犯した罪を告発する謎の声が室内に響き渡る。謎の声による告発を聞いた以下の10人は戦慄する。


(1)エドワード・ジョージ・アームストロング(Edward George Armstrong)

医師で、酔って酩酊したまま手術を行い、患者を死なせたと告発された。

(2)エミリー・キャロライン・ブレント(Emily Caroline Brent)

信仰心の厚い老婦人で、使用人の娘に厳しく接して、その結果、彼女を自殺させたと告発された。

(3)ウィリアム・ヘンリー・ブロア(William Henry Blore)

元警部(Detective Inspector)で、偽証により無実の人間に銀行強盗の罪を負わせて、死に追いやった告発された。

(4)ヴェラ・エリザベス・クレイソーン(Vera Elizabeth Claythorne)

秘書や家庭教師を職業とする若い女性で、家庭教師をしていた子供に無理な距離を泳がせることを許可し、その結果、その子供を溺死させたと告発された。

(5)フィリップ・ロンバード(Philip Lombard)

元陸軍中尉で、東アフリカにおいて先住民族から食料を奪った後、彼ら21人を見捨てて死なせたと告発された。

(6)ジョン・ゴードン・マッカーサー(John Gordon MacArthur)

退役した老将軍で、妻の愛人だった部下を故意に死地へ追いやったと告発された。

(7)アンソニー・ジェームズ・マーストン(Anthony James Marston)

遊び好きの上、生意気な青年で、自動車事故により二人の子供を死なせたと告発された。

(8)ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ(Lawrence John Wargrave)

高名な元判事で、陪審員を誘導して、無実の被告を有罪として、死刑に処したと告発された。

(9)トマス・ロジャーズ(Thomas Rogers)

(10)エセル・ロジャーズ(Ethel Rogers)

仕えていた老女が発作を起こした際、彼らは必要な薬を投与しないで、老女を死なせたと告発された。


招待客が兵隊島に到着した日の晩餐会において、
謎の声(オーウェン氏)による告発により、招待客8人と召使夫婦が戦慄する場面
(HarperCollins Publishers 社から2009年に出ている
アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋)


ウォーグレイヴ判事が話の進行役になり、応接間は即席の法廷の様相を呈した。

判事が言った。

「さて、ロジャーズ、今度のことの真相を、明らかにしなければならない。このオーエンというのは、どういう人なんだ」

ロジャーズは判事を見つめた。

「このお屋敷の持ち主でございます」

「それは分かっている。その人について知っていることを話してもらいたいのだ」

ロジャーズは首をふった。

「無理でございます。わたくしはまだ一度もお目にかかっておりませんので」

部屋の中がちょっとざわついた。

マッカーサー将軍が言った。

「会ったことがないだと? それはどういうことだ」

「わたくしどもー家内もわたくしも、ここに来て、まだ一週間にならないのでございます。職業紹介所の紹介で手紙をもらって、雇われました。プリマスのレジャイナ・エージェンシーです」

ブロアがうなずいた。

「古くからある紹介所ですね」と、彼は言った。

「その手紙を今、持っているか」ウォーグレイヴが尋ねた。

「わたくしどもを雇うという手紙でございますか。いいえ、判事さま、取っておきませんでした」

「先を続けてくれ。手紙をもらって雇われた、ということだな」

「さようでございます。これこれの日に来るようにということでした。ですから、そのようにいたしました。ここには、なにもかもそろっておりました。食料品はたっぷり買いおきがありましたし、なにからなにまで、すばらしく整っていて、しなければならなかったのは、ほこりを払うぐらいでした」

「で、それから」

「それだけでございます。また、お手紙が来まして、泊まりがけのお客さまがたが来られるので、お部屋を準備するように、というお指図をいただきました。そして昨日の午後の配達で、またオーエンさまからお手紙が来たのです。オーエンさまと奥さまは、すぐにはいらっしゃれない、お客さまにくれぐれも失礼のないようにとのことでした。そしてお夕食とコーヒーのこと、それにレコードをかけるようにとの、お指図がありました」

判事がすかさず言った。

「その手紙は、取ってあるんだろうね」

「はい、ございます。ここに持っております」

ロジャーズはポケットから、手紙を出した。判事は手紙を手に取った。

「ふむ、ホテル・リッツからか。タイプライターで打ってあるな」

(青木 久惠訳)



雇い主のオーウェン氏から執事のトマス・ロジャーズ宛の手紙が出された「ホテル・リッツ」とは、ロンドン中心部のピカデリー通り(Piccadilly)沿いで、グリーンパーク(Green Park)に面して建つ高級ホテルの「リッツ ロンドン(The Ritz London)」のことである。


開業は、1906年5月24日で、開業後、約120年が経っている。


「リッツ ロンドン」は、ピカデリーライン(Piccadilly Line)、ジュビリーライン(Jubilee Line)とヴィクトリアライン(Victoria Line)の3線が乗り入れる地下鉄グリーンパーク駅(Green Park Tube Station)の直ぐ真横に建っており、徒歩1分と言う利便性を誇る。


2025年7月1日火曜日

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」の英国 TV ドラマ版(エピソード3)に使用された童謡「10人の子供の兵隊」(And Then There Were None by Agatha Christie - Ten Little Soldiers)- その4

アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1939年に発表したノンシリーズ作品「そして誰もいなくなった(And Then There Were None)」を英国の BBC(British Broadcasting Corporation)が映像化した英国 TV ドラマ版として映像化しているが、2015年12月28日に放映された「エピソード3」において使用された童謡「10人の子供の兵隊(Ten Little Soldiers)」の続きは、以下の通り。


(8)

Three little soldier boys walking in the zoo; A big bear hugged one and then there were Two.

(3人の子供の兵隊さんが、動物園内を歩いていた。一人が大きな熊に抱き締められて、残りは2人になった。)


原作の場合、東側の石のテラスにおいて、ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、

大の字になって倒れており、頭を大きな白大理石の固まりで打ち砕かれていた。

それは、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンの部屋の暖炉の上に置かれていた熊の形をした時計だった。

英国 TV ドラマ版の場合、屋敷内において、ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、

胸をナイフで刺されて、倒れており、彼の上には、白熊の毛皮が載せられていた。

それは、まるで彼は白熊に襲われたかのようだった。-

HarperCollins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。
グラフィックノベル版の内容は、原作通り。

*被害者:ウィリアム・ヘンリー・ブロア(William Henry Blore - 元警部(Detective Inspector)/ 英国 TV ドラマ版の場合、巡査部長(Detective Sergeant))

*告発された罪状:アガサ・クリスティーの原作の場合、ジェイムズ・スティーヴン・ランドー(James Stephen Landor)を死に至らせたと告発された。

原作の場合、ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、ロンドン商業銀行が襲われた事件の捜査を担当しており、ジェイムズ・スティーヴン・ランドーを犯人として逮捕。その実績を買われて、ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、昇進を果たしている。なお、ジェイムズ・スティーヴン・ランドーは、終身刑となり、1年後にダートムーア刑務所で死亡。

英国 TV ドラマ版の場合、ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、ジェイムズ・スティーヴン・ランドーが拘留されている留置場を訪れると、留置場のドアを閉め、ジェイムズ・スティーヴン・ランドーを床に倒して、何度も踏み付ける等の暴行を加えている。この暴行によって、ジェイムズ・スティーヴン・ランドーは死亡したものと思われる。

*犯罪発生時期:英国 TV ドラマ版の場合、具体的な時期については、言及されていないが、アガサ・クリスティーの原作の場合、「1928年10月10日」と明記されている。


原作の場合、その日の午前中、フィリップ・ロンバードの提案に基づき、

残った3人は、兵隊島の一番高いところから、鏡で日光を反射させて、対岸へ信号を送る努力を続けた。

午後2時になると、腹をすかしたウィリアム・ヘンリー・ブロアは、屋敷へと戻る。

フィリップ・ロンバードとヴェラ・エリザベス・クレイソーンの2人は、そのまま残る。

英国 TV ドラマ版の場合、フィリップ・ロンバードとヴェラ・エリザベス・クレイソーンの2人は、

兵隊島の断崖で、火を燃やして、対岸へ信号を送ろうとする。

一方、ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、火かき棒を持ち、周囲を警戒しつつ、屋敷内を歩き廻っている際、

謎のオーウェン氏に襲われて、殺される。-

HarperCollins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。
グラフィックノベル版の内容は、原作通り。

*死因:熊の形をした時計の落下による頭蓋骨骨折

原作の場合、フィリップ・ロンバード(Philip Lombard - 元陸軍大尉)とヴェラ・エリザベス・クレイソーン(Vera Elizabeth Claythorne - 秘書)の2人が屋敷に戻ると、東側の石のテラスにおいて、ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、大の字になって倒れており、頭を大きな白大理石の固まりで打ち砕かれていた。それは、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンの部屋の暖炉の上に置かれていた熊の形をした時計だった。

英国 TV ドラマ版の場合、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンが屋敷に戻ると、一足先に戻っていたフィリップ・ロンバードが、彼女に対して、拳銃を向ける。ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、胸をナイフで刺されて、倒れており、彼の上には、白熊の毛皮が載せられていて、まるで彼は白熊に襲われたかのようだった。


(9)

Two little soldier boys sitting in the sun; One got frizzled up and then there was One.

(2人の子供の兵隊さんが、日光浴をしていた。一人が焼け焦げになって、残りは1人になった。)



*被害者:フィリップ・・ロンバード

*告発された罪状:アガサ・クリスティーの原作の場合、東アフリカの部族民21名を死に追いやったと告発された。

*犯罪発生時期:英国 TV ドラマ版の場合、具体的な時期については、言及されていないが、アガサ・クリスティーの原作の場合、「1932年2月のある日」と明記されている。



原作の場合、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、フィリップ・ロンバードから拳銃を奪い取ると、

彼が飛び掛かった際、反射的に引き金を引いて、彼の心臓を打ち抜いてしまう。

つまり、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンが、フィリップ・ロンバードに向けて発射した拳銃は、1発のみ。

英国 TV ドラマ版の場合、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、

フィリップ・ロンバードから拳銃を奪い取ると、彼と揉み合っている時に、彼の左膝を1発撃つ。

その後、彼の胸に向けて、2発発射。彼が波打ち際に倒れた後も、彼女は、更に2発撃った。-

HarperCollins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。
グラフィックノベル版の場合、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、フィリップ・ロンバードに向けて、
拳銃を3発発射しているので、原作とも、英国 TV ドラマ版とも、内容が異なる。


*死因:射殺

原作の場合、海岸において、エドワード・ジョージ・アームストロング(Edward George Armstrong - 医師)の溺死体を発見したヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、フィリップ・ロンバードから拳銃を奪い取ると、彼が飛び掛かった際、反射的に引き金を引いて、彼の心臓を打ち抜いてしまう。つまり、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンが、フィリップ・ロンバードに向けて発射した拳銃は、1発のみ。

英国 TV ドラマ版の場合、海岸において、エドワード・ジョージ・アームストロングの溺死体を発見したヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、フィリップ・ロンバードから拳銃を奪い取ると、彼と揉み合っている時に、彼の左膝を1発撃つ。その後、彼の胸に向けて、2発発射。彼が波打ち際に倒れた後も、彼女は、更に2発撃った。


(10)

One little soldier boy left all alone; He went and hanged himself … And then there were None.

(1人の子供の兵隊さんが、後に残された。彼は自分で首を括って、そして、誰もいなくなった。)


原作の場合、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、天井のフックからぶら下がっているロープの輪で、

自ら首を括って、自殺を遂げる。その際、最後の人形が、彼女の手から落ちる。

英国 TV ドラマ版の場合、原作と同様に、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、

天井のフックからぶら下がっているロープの輪に、自ら首を一旦かける。

その時、彼女の部屋のドアが開いて、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴが部屋に入って来る。

驚いた彼女は、椅子を蹴って、首吊りの状態になってしまうが、

横倒しになった椅子の上で、辛うじてバランスを保つ。

そして、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴによる独白が始まる。

ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴに対して、

フィリップ・ロンバードに全ての罪をなすりつけることで決着させようと説得するが、

ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴは、彼女の足元から椅子を取り去り、彼女を縊死させる。

彼女の死亡を確認したローレンス・ジョン・ウォーグレイヴは、彼女の部屋から立ち去る。-

HarperCollins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。
グラフィックノベル版の内容は、原作通り。

*被害者:ヴェラ・エリザベス・クレイソーン

*告発された罪状:アガサ・クリスティーの原作の場合、シリル・オギルヴィー・ハミルトン(Cyril Ogilvie Hamilton - 家庭教師をしていた子供)を殺害したと告発された。

原作の場合、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、シリル・オギルヴィー・ハミルトンに対して、彼が望む通り、岩まで泳がせている。また、溺れた彼を助けようと、彼女は、彼の後を追って、泳いでいるふりをする。シリル・オギルヴィー・ハミルトンが溺死した後、ヒューゴ(Hugo - シリル・オギルヴィー・ハミルトンの叔父 / 事件当日、外出していた)は、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンに対して、見ず知らずの他人を見るような視線を向けた。その後、ヒューゴーとヴェラ・エリザベス・クレイソーンの恋愛関係は、終わりを迎えている。

英国 TV ドラマ版の場合、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、シリル・オギルヴィー・ハミルトンに対して、彼が望む通り、岩まで泳がせている。また、溺れた彼を助けようと、彼女は、海岸まで走って行くが、途中で歩き出し、ゆっくりと上着を脱ぎ、サングラスを外す。そして、背泳ぎでゆっくり進むが、途中で溺れるふりをする。シリル・オギルヴィー・ハミルトンの検死法廷が終わった後、ヒューゴーがヴェラ・エリザベス・クレイソーンの元へとやって来て、彼女の罪状を厳しく糾弾した後、彼女の元から去って行った。

*犯罪発生時期:英国 TV ドラマ版の場合、具体的な時期については、言及されていないが、アガサ・クリスティーの原作の場合、「1935年8月11日」と明記されている。


原作の場合、フィリップ・ロンバードを射殺した後、

屋敷に戻ったヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、食堂に立ち寄り、

テーブルの上に置かれた3個の人形のうち、2個を取って、窓から外へ放り投げる。

そして、3個の人形を手に取る。

英国 TV ドラマ版の場合、このような場面はない。-

HarperCollins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。
グラフィックノベル版の内容は、原作通り。


*死因:絞首(縊死)

原作の場合、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、天井のフックからぶら下がっているロープの輪で、自ら首を括って、自殺を遂げる。その際、最後の人形が、彼女の手から落ちる。

英国 TV ドラマ版の場合、原作と同様に、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、天井のフックからぶら下がっているロープの輪に、自ら首を一旦かける。その時、彼女の部屋のドアが開いて、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ(Lawrence John Wargrave - 元判事)が入って来る。驚いた彼女は、椅子を蹴って、首吊りの状態になってしまうが、横倒しになった椅子の上で、辛うじてバランスを保つ。そして、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴによる独白が始まる。ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴに対して、フィリップ・ロンバードに全ての罪をなすりつけることで決着させようと説得するが、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴは、彼女の足元から椅子を取り去り、彼女を縊死させる。彼女の死亡を確認したローレンス・ジョン・ウォーグレイヴは、彼女の部屋から立ち去る。 


2025年6月30日月曜日

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」<英国 TV ドラマ版>(And Then There Were None by Agatha Christie )- その5

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」の
「エピソード3」における1場面 -
医師のエドワード・ジョージ・アームストロングの追跡が失敗に終わった翌朝、

フィリップ・ロンバードとヴェラ・エリザベス・クレイソーンの2人は、

兵隊島の断崖で、火を燃やして、対岸へ信号を送ろうとする。

一方、ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、他の2人とは別行動をとり、

火かき棒を持ち、周囲を警戒しつつ、屋敷内を歩き廻る。

その際、謎のオーウェン氏に襲われて、非業の死を遂げる。


アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1939年に発表したノンシリーズ作品「そして誰もいなくなった(And Then There Were None)」を英国の BBC(British Broadcasting Corporation)が映像化した英国 TV ドラマ版の場合、アガサ・クリスティーの原作にかなり忠実に反映しているが、細かい点において、原作対比、以下のような違いがある。


今回は、2015年12月28日に放映された「エピソード3(最終エピソード)」にかかる部分の続きについて、述べたい。


(10)

<英国 TV ドラマ版>

フィリップ・ロンバード(Philip Lombard - 元陸軍大尉)とウィリアム・ヘンリー・ブロア(William Henry Blore - 巡査部長(Detective Sergeant)/ 原作の場合、元警部(Detective Inspector))によるエドワード・ジョージ・アームストロング(Edward George Armstrong)の追跡が失敗に終わった翌朝、彼ら2人とヴェラ・エリザベス・クレイソーン(Vera Elizabeth Claythorne - 秘書)が朝食をとっている席上、ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、他の2人に対して、ジェイムズ・スティーヴン・ランドー(James Stephen Landor)を殺したことを認める。

<原作>

原作の場合、このような場面はない。


(11)

<原作>

ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、ロンドン商業銀行が襲われた事件の捜査を担当しており、ジェイムズ・スティーヴン・ランドーを犯人として逮捕。その実績を買われて、ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、昇進を果たしている。

なお、ジェイムズ・スティーヴン・ランドーは、終身刑となり、1年後にダートムーア刑務所で死亡。

<英国 TV ドラマ版>

ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、ジェイムズ・スティーヴン・ランドーが拘留されている留置場を訪れると、留置場のドアを閉め、ジェイムズ・スティーヴン・ランドーを床に倒して、何度も踏み付ける等の暴行を加えている。この暴行によって、ジェイムズ・スティーヴン・ランドーは死亡したものと思われる。


(12)

<原作>

その日の午前中、フィリップ・ロンバードの提案に基づき、残った3人は、兵隊島(Soldier Island)の一番高いところから、鏡で日光を反射させて、対岸へ信号を送る努力を続けた。

<英国 TV ドラマ版>

フィリップ・ロンバードとヴェラ・エリザベス・クレイソーンの2人は、兵隊島の断崖で、火を燃やして、対岸へ信号を送ろうとする。

一方、ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、火かき棒を持ち、周囲を警戒しつつ、屋敷内を歩き廻る。


(13)

<原作>

午後2時になると、腹をすかしたウィリアム・ヘンリー・ブロアは、屋敷へと戻る。フィリップ・ロンバードとヴェラ・エリザベス・クレイソーンの2人は、兵隊島の一番高いところに、そのまま残る。

暫くした後、屋敷の方から地響きと叫び声のような音が聞こえたため、フィリップ・ロンバードとヴェラ・エリザベス・クレイソーンの2人も、屋敷へと引き返す。

<英国 TV ドラマ版>

フィリップ・ロンバードとヴェラ・エリザベス・クレイソーンの2人は、断崖に到着するが、いつまで待っても、ウィリアム・ヘンリー・ブロアがやって来ない。

そのため、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンを断崖に残したまま、フィリップ・ロンバードが、一人で屋敷へと引き返す。暫くした後、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンも、フィリップ・ロンバードの後を追って、屋敷へ戻る。


(14)

<原作>

フィリップ・ロンバードとヴェラ・エリザベス・クレイソーンの2人が屋敷に戻ると、東側の石のテラスにおいて、ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、大の字になって倒れており、頭を大きな白大理石の固まりで打ち砕かれていた。

それは、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンの部屋の暖炉の上に置かれていた熊の形をした時計だった。

<英国 TV ドラマ版>

ヴェラ・エリザベス・クレイソーンが屋敷に戻ると、それに気付いたフィリップ・ロンバードが、彼女に対して、拳銃を向ける。

ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、胸をナイフで刺されて、倒れており、彼の上には、白熊の毛皮が載せられていて、まるで彼は白熊に襲われたかのようだった。


(15)

<英国 TV ドラマ版>

ウィリアム・ヘンリー・ブロアが殺された後、食堂のテーブルの上に置かれた人形の数が3個から2個へ減っていた。

<原作>

原作の場合、このような場面はない。


(16)

<原作>

海岸において、エドワード・ジョージ・アームストロングの溺死体を発見したヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、フィリップ・ロンバードから拳銃を奪い取ると、彼が飛び掛かった際、反射的に引き金を引いて、彼の心臓を打ち抜いてしまう。

つまり、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンが、フィリップ・ロンバードに向けて発射した拳銃は、1発のみ。

<英国 TV ドラマ版>

海岸において、エドワード・ジョージ・アームストロングの溺死体を発見したヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、フィリップ・ロンバードから拳銃を奪い取ると、彼と揉み合っている時に、彼の左膝を1発撃つ。その後、彼の胸に向けて、2発発射。彼が波打ち際に倒れた後も、彼女は、更に2発撃った。


(17)

<原作>

ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、シリル・オギルヴィー・ハミルトン(Cyril Ogilvie Hamilton - 家庭教師をしていた子供)に対して、彼が望む通り、岩まで泳がせている。

また、溺れた彼を助けようと、彼女は、彼の後を追って、泳いでいるふりをする。

シリル・オギルヴィー・ハミルトンが溺死した後、ヒューゴ(Hugo - シリル・オギルヴィー・ハミルトンの叔父 / 事件当日、外出していた)は、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンに対して、見ず知らずの他人を見るような視線を向けた。その後、ヒューゴーとヴェラ・エリザベス・クレイソーンの恋愛関係は、終わりを迎えている。

<英国 TV ドラマ版>

ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、シリル・オギルヴィー・ハミルトンに対して、彼が望む通り、岩まで泳がせている。

また、溺れた彼を助けようと、彼女は、海岸まで走って行くが、途中で歩き出し、ゆっくりと上着を脱ぎ、サングラスを外す。そして、背泳ぎでゆっくり進むが、途中で溺れるふりをする。

シリル・オギルヴィー・ハミルトンの検死法廷が終わった後、ヒューゴーがヴェラ・エリザベス・クレイソーンの元へとやって来て、彼女の罪状を厳しく糾弾した後、彼女の元から去って行った。


(18)

<原作>

フィリップ・ロンバードを射殺した後、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、暫くの間、放心状態にあり、陽が沈みかけて、ようやく緊張の糸が緩み、空腹と眠気を覚えた彼女は、屋敷へと戻る。

<英国 TV ドラマ版>

ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、拳銃を右手に持って、海岸に倒れているところで気付く。

フィリップ・ロンバードが死んでいることを確認した彼女は、自分が助かったことを確信し、屋敷へと戻る。


(19)

<原作>

屋敷に戻ったヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、食堂に立ち寄り、テーブルの上に置かれた3個の人形のうち、2個を取って、窓から外へ放り投げる。そして、3個の人形を手に取る。

<英国 TV ドラマ版>

英国 TV ドラマ版の場合、このような場面はない。


(20)

<原作>

ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、2階にヒューゴーが居るような気配を感じつつ、階段を昇る。そして、階段を登りきったところで、拳銃を落とす。

2階の部屋でヒューゴーが待っていることを確信した彼女は、自分の部屋へ入る。

<英国 TV ドラマ版>

シリル・オギルヴィー・ハミルトンの幻影に連れられて、屋敷に戻ったヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、階段を昇る。階段を登りきったところではなく、階段の途中で、拳銃を落とす。

そして、シリル・オギルヴィー・ハミルトンの幻影に見守られながら、彼女は、自分の部屋へ入る。


(21)

<原作>

ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、天井のフックからぶら下がっているロープの輪で、自ら首を括って、自殺を遂げる。その際、最後の人形が、彼女の手から落ちる。

<英国 TV ドラマ版>

原作と同様に、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、天井のフックからぶら下がっているロープの輪に、自ら首を一旦かける。

その時、彼女の部屋のドアが開いて、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ(Lawrence John Wargrave - 元判事)が入って来る。驚いた彼女は、椅子を蹴って、首吊りの状態になってしまうが、横倒しになった椅子の上で、辛うじてバランスを保つ。

そして、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴによる独白が始まる。

ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴに対して、フィリップ・ロンバードに全ての罪をなすりつけることで決着させようと説得するが、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴは、彼女の足元から椅子を取り去り、彼女を縊死させる。

彼女の死亡を確認したローレンス・ジョン・ウォーグレイヴは、彼女の部屋から立ち去る。


(22)

<原作>

犯人のローレンス・ジョン・ウォーグレイヴは、自分の部屋のベッドの上で、拳銃自殺を遂げる。

<英国 TV ドラマ版>

ヴェラ・エリザベス・クレイソーンを縊死させた後、犯人のローレンス・ジョン・ウォーグレイヴは、食堂のテーブルでワインを飲んだ後、フィリップ・ロンバードの拳銃に弾丸(ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴが、1発所持していた)を装填し、首の下から撃って、自殺を遂げる。


(23)

<原作>

「エピローグ」の部分で、スコットランドヤードの副警視総監であるサー・トマス・レッグ(Sir Thomas Legge)とメイン警部(Detective Inspector Maine)が登場する。

<英国 TV ドラマ版>

英国 TV ドラマ版の場合、全ての物語が兵隊島で完結する関係上、スコットランドヤードの副警視総監であるサー・トマス・レッグとメイン警部は、登場しない。


(24)

<原作>

原作の場合、アイザック・モリス(Issac Morris)は、謎のオーウェン氏(=犯人のローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ)に代わって、兵隊島の買取りにかかる全てを取り仕切っている。彼は、3年前に起きたベニー証券詐欺事件に関与している他、麻薬の密売にも手を出していた模様。

ロンドンを出発する前に、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴは、消化不良に悩むアイザック・モリスに対して、胃液に素晴らしい効き目がるカプセルを1つ渡している。このカプセルに毒が仕込まれており、アイザック・モリスは、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴによって、事前に毒殺されている。

<英国 TV ドラマ版>

ヴェラ・エリザベス・クレイソーンに対して、オーウェン氏の秘書の仕事を斡旋した紹介所の所長として、アイザック・モリスが、また、彼のタイピストとして、オードリー(Audrey)が登場する。

彼ら2人が、謎のオーウェン氏(=犯人のローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ)の手先だったのかどうかについては、英国 TV ドラマ版の場合、明確には描かれていない。また、彼ら2人も、法律では裁けない犯罪者で、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴによって、事前に処分されたのかどうかについても、不明。


2025年6月29日日曜日

アガサ・クリスティー作「もの言えぬ証人」<小説版(愛蔵版)>(Dumb Witness by Agatha Christie )- その1

2025年に英国の HarperCollinsPublishers 社から出版された
アガサ・クリスティー作「もの言えぬ証人」の
愛蔵版(ハードカバー版)の表紙
(Cover design and 
illustration
by Sarah Foster / 
HarperCollinsPublishers Ltd. ) -
小緑荘の女主人であるエミリー・アランデルの
飼い犬であるボブ(Bob)と犬の遊び道具のボールが描かれている。
また、
エミリー・アランデルが転落して、
寝込む原因となった階段が、画面右手に描かれている。

英国の HarperCollinsPublishers 社から、アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が生まれたトーキー(Torquay → 2023年9月1日 / 9月4日付ブログで紹介済)が所在するデヴォン州(Devon)が舞台となったエルキュール・ポワロシリーズの長編作品のうち、「死者のあやまち(Dead Man’s Folly)」(1956年)の愛蔵版(ハードバック版 → 2023年8月18日 / 8月22日付ブログで紹介済)と「五匹の子豚(Five Little Pigs)」(1942年)の愛蔵版(ハードバック版 → 2023年11月9日 / 11月13日付ブログで紹介済)が2023年に、更に、「白昼の悪魔(Evil Under the Sun)」(1941年)の愛蔵版(ハードバック版 → 2024年6月8日 / 6月12日付ブログで紹介済)が刊行されてい「エンドハウスの怪事件(Peril at End House)」(1932年)の愛蔵版(ハードバック版 → 2024年7月13日 / 7月21日 / 7月25日付ブログで紹介済)が2024年に出版されている。


2023年に英国の HarperCollins Publishers 社から出版された
アガサ・クリスティー作「死者のあやまち」の
愛蔵版(ハードカバー版)の表紙
(Cover design by HarperCollinsPublishers Ltd. /
Cover illustration by Becky Bettesworth) -
アガサ・クリスティーの夏期の住まいである
デヴォン州のグリーンウェイ(Greenway)が、ナス屋敷として描かれている。


2023年に英国の HarperCollins Publishers 社から出版された
アガサ・クリスティー作「五匹の子豚」の
愛蔵版(ハードカバー版)の表紙
(Cover design by HarperCollinsPublishers Ltd. /
Cover illustration by Becky Bettesworth) -
英国の有名な画家であるアミアス・クレイル(Amyas Crale)が
毒殺される事件現場になった砲台庭園が描かれている。


2024年に英国の HarperCollins Publishers 社から出版された
アガサ・クリスティー作「白昼の悪魔」の
愛蔵版(ハードカバー版)の表紙
(Cover design and 
illustration
by Sarah Foster / 
HarperCollinsPublishers Ltd. ) -

名探偵エルキュール・ポワロは、デヴォン州の密輸業者島(Smugglers’ Island)にある

Jolly Roger Hotel に滞在して、静かな休暇を楽しんでいた。

同ホテルには、美貌の元女優で、実業家ケネス・マーシャル(Captain Kenneth Marshall)の後妻となった

アリーナ・ステュアート・マーシャル(Arlena Stuart Marshall)が、

この島で何者かによって殺害されることになる。


2024年に英国の HarperCollinsPublishers 社から出版された
アガサ・クリスティー作「エンドハウスの怪事件」の
愛蔵版(ハードカバー版)の表紙
(Cover design and 
illustration
by Sarah Foster / 
HarperCollinsPublishers Ltd. ) -
「コーニッシュ リヴィエラ(Cornish Riviera)」と呼ばれる
コンウォール州(Cornwall)のセントルー村(St. Loo - 架空の場所)に近い
マジェスティックホテル(Majestic Hotel)において、
エルキュール・ポワロとアーサー・ヘイスティングス大尉は、優雅な休暇を楽しんでいた。
一方、新聞では、世界一周飛行に挑戦中の飛行家である
マイケル・シートン大尉(Captain Michael Seton)が、
太平洋上で行方不明になっていることを伝えていた。
テラスから庭へと通じる階段でポワロが足を踏み外したところ、
丁度運良くそこに通りかかったニック・バックリー(Nick Buckley -
本名:マグダラ・バックリー(Magdala Buckley))に助けられる。
彼女は、ホテルからほんの目と鼻の先にある岬の突端に立つ
やや古びた屋敷エンドハウス(End House)の若き女主人であった。


また、映画化に先立って、「ハロウィーンパーティー(Hallowe’en Party)」(1969年)の愛蔵版(ハードバック版 → 2023年10月6日 / 10月11日付ブログで紹介済)も、HarperCollinsPublishers 社から出ている。


2023年に英国の HarperCollins Publishers 社から出版された
アガサ・クリスティー作「ハロウィーンパーティー」の
愛蔵版(ハードカバー版)の表紙
(Cover design by Sarah Foster / HarperCollinsPublishers Ltd.
Cover images by Shutterstock.com) 


今年(2025年)は、動物をテーマにした「もの言えぬ証人(Dumb Witness)」(1937年)と「鳩のなかの猫(Cat Among the Pigeons)」(1959年)の愛蔵版(ハードバック版)が出版されたので、今回は、「もの言えぬ証人」について、紹介致したい。


本作品は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第21作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第14作目に該っている。


1936年6月28日、エルキュール・ポワロは、エミリー・アランデル(Emily Arundell - なお、フルネームは、エミリー・ハリエット・ラヴァートン・アランデル(Emily Harriet Laverton Arundell))と名乗る老婦人から、自分の命に危険が迫っていることを示唆する内容の手紙を受け取る。奇妙なことに、手紙の日付は、その年の4月17日になっており、手紙が書かれてから2ヶ月後も経ってから投函されているのだった。

ポワロの相棒で、友人でもあるアーサー・ヘイスティングス大尉(Capitain Arthur Hastings)は、「老婦人のとりとめのない妄想ではないか?」と疑問を呈したが、手紙が差し出された経緯について興味を覚えたポワロは、ヘイスティングス大尉を伴って、事実を確かめるために、エミリー・アランデルが住むバークシャー州(Berkshire)のマーケットベイジング(Market Basing)へと赴くことにした。


ポワロとヘイスティングス大尉の二人が、エミリー・アランデルの住所である小緑荘(Littlegreen House)を訪れると、屋敷の前には、「売家」の札が掲げられていた。疑問を抱いた二人が地元で尋ねると、エミリー・アランデル本人は、1ヶ月以上も前の1936年5月1日に亡くなっていたのである。