米国の出版社である Dover Publications, Inc. から 「Dover Graphic Novel Classics」シリーズの一つとして、 2014年に刊行されているグラフィックノベル版「フランケンシュタイン」の表紙 |
英国の小説家メアリー・ウルストンクラフト・ゴドウィン・シェリー(Mary Wollstonecraft Godwin Shelley:1797年ー1851年)が執筆し、フランケンシュタインの怪物が登場する「フランケンシュタイン、或いは、現代のプロメテウス(Frankenstein; or, the Modern Prometheus. → 2021年3月24日付ブログで紹介済)」(1818年)のグラフィックノベル版が、米国の出版社である Dover Publications, Inc. から、「Dover Graphic Novel Classics」シリーズの一つとして、2014年に刊行されている。なお、オリジナル版は、2010年に出版されている。
本グラフィックノベル版のイラストレーターは、ロンドンをベースとするジョン・グリーン(John Green)で、1983年以降、様々なグラフィックノベルを手掛けている。「Dover Graphic Novel Classics」シリーズにおいて、彼は、「フランケンシュタイン」以外に、アイルランド人の小説家であるブラム・ストーカー(Bram Stoker)こと、エイブラハム・ストーカー(Abraham Stoker:1847年ー1912年)が執筆したゴシック小説 / ホラー小説「吸血鬼ドラキュラ(Draculaー2017年12月24日付ブログと同年12月26日付ブログで紹介済)」(1897年)やサー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)によるシャーロック・ホームズシリーズ長編第3作目に該る「バスカヴィル家の犬(The Hound of the Baskervilles)」(1901年ー1902年)等のグラフィックノベルも担当している。
米国の出版社である Dover Publications, Inc. から 「Dover Graphic Novel Classics」シリーズの一つとして、 2014年に刊行されているグラフィックノベル版「フランケンシュタイン」の裏表紙 |
本グラフィックノベル版は、メアリー・シェリーによる原作通り、英国人で、北極探検隊の隊長であるロバート・ウォルトン(Robert Walton)が乗る北極探検船が北極点へと向かう途中、北極海において、衰弱した男性を発見して、その男性を救助するところから始まる。救助された男性の名前は、ヴィクター・フランケンシュタイン(Victor Frankenstein)で、船室において目覚めた彼は、ロバート・ウォルトンに対して、自身の恐るべき体験談を語り始めるのであった。
厳密に言うと、メアリー・シェリーによる原作では、ヴィクター・フランケンシュタインは、スイスの名家出身である父母(Alphonse and Caroline Frankenstein)の下、ナポリに出生した後、両親、弟のウィリアム(William)、養女のエリザベス(Elizabeth → 後に、彼の妻となる)、そして、親友のヘンリー・クラーヴァル(Henry Clerval)に囲まれ、スイスのジュネーヴにおいて、幸せな幼少期 / 少年期を過ごすが、本グラフィックノベル版では、彼は、ナポリではなく、ジュネーヴで生まれ、そのまま、そこで幼少期 / 少年期を過ごす形に簡略化されている。
本グラフィックノベル版の対象年齢は8歳上の子供向けではあるが、46ページの中に、メアリー・シェリーによる原作の内容が、手堅くまとめられている。
本小説の場合、映画による影響があまりにも強いため、ホラー小説的な扱いを受けることが多分にあるものの、実際のところ、ヴィクター・フランケンシュタインが想像したのは、孤独の中、自己の存在に悩む怪物で、自分の醜さゆえに、子供が川で溺れかけているのを救ったにもかかわらず、人間達から忌み嫌われた上に、迫害を受ける。怪物は、自分の創造主であるヴィクター・フランケンシュタインに対して、自分の伴侶となり得る異性の怪物を一人造るよう、強く要求するが、最終的には、創造主にも裏切られ、大きな絶望を味わう。その結果、怪物は、自分の創造主であるヴィクター・フランケンシュタインに対する復讐のため、弟のウィリアム、親友のヘンリー・クラーヴァル、そして、妻のエリザベスと、創造主の大切な人間を次々と殺害していく。そういったフランケンシュタインの怪物の悲哀についても、本グラフィックノベル版では、しっかりと描かれている。
本グラフィックノベル版の場合、カラー版ではなく、白黒版であるものの、メアリー・シェリーによる原作の内容を考慮すると、色彩が付くよりも、白黒版のままの方が、よりしっくりくるように思える。