2020年6月27日土曜日

ロンドン バーキング平原(Barking Level)

英国で売られている
サー・アーサー・コナン・ドイル作「四つの署名」等を題材にした絵葉書

サー・アーサー・コナン・ドイル作「四つの署名(The Sign of the Four)」(1890年)において、独自の捜査により、バーソロミュー・ショルト(Bartholomew Sholto)を殺害した犯人達の居場所を見つけ出したシャーロック・ホームズは、ベーカーストリート221Bへスコットランドヤードのアセルニー・ジョーンズ警部(Inspector Athelney Jones)を呼び出す。ホームズは、呼び出したアセルニー・ジョーンズ警部に対して、バーソロミュー・ショルトの殺害犯人達を捕えるべく、午後7時にウェストミンスター船着き場(Westminster Stairs / Wharf→2018年3月31日 / 4月7日付ブログで紹介済)に巡視艇を手配するよう、依頼するのであった。

巡視艇がウェストミンスター船着き場を離れると、ホームズはアセルニー・ジョーンズ警部に対して、巡視艇をロンドン塔(Tower of London→2018年4月8日 / 4月15日 / 4月22日付ブログで紹介済)方面へと向かわせ、テムズ河(River Thames)の南岸にあるジェイコブソン修理ドック(Jacobson’s Yard)の反対側に船を停泊するよう、指示した。ホームズによると、バーソロミュー・ショルトを殺害した犯人達は、オーロラ号をジェイコブソン修理ドック内に隠している、とのことだった。
ホームズ達を乗せた巡視艇が、ロンドン塔近くのハシケの列に隠れて、ジェイコブソン修理ドックの様子を見張っていると、捜していたオーロラ号が修理ドックの入口を抜けて、物凄い速度でテムズ河の下流へと向かった。そうして、巡視艇によるオーロラ号の追跡が始まったのである。

夜の静寂の中で、オーロラ号の機関室がガチャンガチャンと音を立てるのが聞こえた。船尾の男は、まだデッキに身を屈めており、両腕を忙しそうに動かしていた。その一方で、彼は、時々、ちらっと目を上げて、私達との間の距離を測ろうとしていた。私達との間の距離は、更に縮まっていった。ジョーンズ警部は、オーロラ号に対して、停船するように大声を挙げた。私達の船は、オーロラ号の背後、四艇身もないところまで迫っていて、両方の船とも、恐ろしい勢いで、飛ぶように進んでいた。そこは、片側がバーキング平原で、反対側がプラムステッド湿地になっている河幅が広い区域だった。私たちの呼び掛けに、船尾の男が、甲高いしゃがれた声で罵りながら、跳び上がり、私達に向かって、固く握りしめた両手を振った。彼は、体格がよく、屈強な男だった。そして、彼が両足を開き、バランスを取りながら立ち上がった時、彼の右足の大腿の下に、木製の義足が見えた。

In the silence of the night we could hear the panting and clanking of their machinery. The man in the stern still crouched upon the deck, and his arms were moving as though he were busy, while every now and then he would look up and measure with a glance the distance which still separated us. Nearer we came and nearer. Jones yelled to them to stop. We were not more than four beaf’s-lengths behind them, both boats flying at a tremendous pace. It was a clear reach of the river, with Barking Level upon one side and the melancholy Plamstead Marshes upon the other. At our hail the man in the stern sprang up from the deck and shook his two clenched fists at us, arising the while in a high, cracked voice. He was a good-sized, powerful man, and as he stood poising himself with legs astride, I could see that, from the thigh downwards, there was but a wooden stump upon the right side.

ホームズ達が乗った巡視艇がオーロラ号の背後、四艇身まで迫った辺りのバーキング(Barking)は、テムズ河(River Thames)の北岸にある町で、現在はロンドンの特別区の一つであるロンドン・バーキング&ダグナム区(London Borough of Barking and Dagenham)に属している。

バーキングは、元々、エセックス州(Essex)に属しており、テムズ河沿いということもあって、漁業や農業等が盛んだった。
1854年に鉄道の駅が、また、1908年に地下鉄の駅ができたことに伴い、20世紀に入って、ロンドンの郊外として、人口が流入し、栄えていく。
1931年にエセックス州からロンドンの特別区へと変わり、1965年にロンドン・バーキング&ダグナム区へと編入されている。

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