万が一の場合が起きた際に備えて、辞書編纂家(lexicographer)のギディオン・フェル博士(Dr. Gideon Fell)、米国人の青年タッド・ランポール(Tad Rampole)と村の牧師トマス・サンダース(Thomas Sanders)の三人が、フェル博士の自宅である「水松荘(いちいそうーYew Cottage)」から、米国から帰国したスタバース家(Starberth)の当主となるマーティン・スタバース(Martin Starberth)がチャターハム監獄(Chatterham Prison)の長官室(Governor’s Room)において一夜を過ごすのを監視することになった。
後10分程で12時になろうとした時、チャターハム監獄の長官室から見えていた明かりが消えたため、マーティン・スタバースの身に何か異変が起きたのではないかと心配したタッド・ランポールは、早く走れないギディオン・フェル博士とトマス・スタバースを後に残して、チャターハム監獄へと駆け付ける。残念なことに、タッド・ランポールの不安は的中し、「魔女の隠れ家(Hag’s Nook)」と呼ばれる絞首台の近くの崖下で、マーティン・スタバースが首の骨を折って死んでいたのである。
スタバース家の屋敷に居るドロシー・スタバース(Dorothy Starberth)の元に、マーティン・スタバース怪死の連絡が入る。スタバース家の執事であるバッジ(Mr. Budge)がふと見ると、ホールにある時計が、何故か、10分程進んでいるのに気付いた。スタバース家の家政婦であるバンドル夫人(Mrs. Bundle)によると、マーティン・スタバースとドロシー・スタバースの従兄弟で、マーティン・スタバースの渡米中、2年間にわたって、ドロシー・スタバースと一緒に、屋敷を管理してきたハーバート・スタバース(Herbert Starberth)が、自分の時計を見ながら、ホールの時計を自分の時計に合わせるように頼んだ、とのこと。オートバイを愛用しているハーバート・スタバースは、その夜、オートバイで何処かへ出かけたようであったが、何故か、そのまま失踪してしまった。
地元の警察長(Chief Constable)であるベンジャミン・アーノルド卿(Sir Benjamin Arnold)が、スタバース家の屋敷へとやって来る。
マーティン・スタバースが転落したと思われるバルコニーがあるチャターハム監獄の長官室は、内側から施錠され、バルコニーへと出るドアは開いてはいたものの、地上からはかなりの高さがあり、外部から第三者が入り込む余地のない「密室」状態だった。
その上、長官室の金庫内に保管されていて、同室へと行った証拠として、マーティン・スタバースが持ち帰ることになっていた書類が、何故か、金庫内から消え失せていたのである。
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