2018年8月18日土曜日

ロンドン セントポール大聖堂(St. Paul's Cathedral)–その1

セントポールズチャーチヤード(St. Pau's Churchyard→2015年7月26日付ブログで紹介済)から見た
セントポールポール大聖堂の大ドームと側面(その1)

サー・アーサー・コナン・ドイル作「四つの署名(The Sign of the Four)」(1890年)では、若い女性メアリー・モースタン(Mary Morstan)がベーカーストリート221Bのシャーロック・ホームズの元を訪れて、風変わりな事件の調査依頼をする。

元英国陸軍インド派遣軍の大尉だった彼女の父親アーサー・モースタン(Captain Arthur Morstan)は、インドから英国に戻った10年前に、謎の失踪を遂げていた。彼はロンドンのランガムホテル(Langham Hotel→2014年7月6日付ブログで紹介済)に滞在していたが、娘のモースタン嬢が彼を訪ねると、身の回り品や荷物等を残したまま、姿を消しており、その後の消息が判らなかった。そして、6年前から年に1回、「未知の友」を名乗る正体不明の人物から彼女宛に大粒の真珠が送られてくるようになり、今回、その人物から面会を求める手紙が届いたのである。
彼女の依頼に応じて、ホームズとジョン・H・ワトスンの二人は彼女に同行して、待ち合わせ場所のライシアム劇場(Lyceum Theatreー2014年7月12日付ブログで紹介済)へ向かった。そして、ホームズ達一行は、そこで正体不明の人物によって手配された馬車に乗り込むのであった。

ホームズ、ワトスンとモースタン嬢の三人は、ロンドン郊外のある邸宅へと連れて行かれ、そこでサディアス・ショルト(Thaddeus Sholto)という小男に出迎えられる。彼が手紙の差出人で、ホームズ達一行は、彼からモースタン嬢の父親であるアーサー・モースタン大尉と彼の父親であるジョン・ショルト少佐(Major John Sholto)との間に起きたインド駐留時代の因縁話を聞かされるのであった。
サディアス・ショルトによると、父親のジョン・ショルト少佐が亡くなる際、上記の事情を聞いて責任を感じた兄のバーソロミュー・ショルト(Bartholomew Sholto)と彼が、モースタン嬢宛に毎年真珠を送っていたのである。アッパーノーウッド(Upper Norwood)にある屋敷の屋根裏部屋にジョン・ショルト少佐が隠していた財宝を発見した彼ら兄弟は、モースタン嬢に財宝を分配しようと決めた。

しかし、ホームズ一行がサディアス・ショルトに連れられて、バーソロミュー・ショルトの屋敷を訪れると、バーソロミュー・ショルトはインド洋のアンダマン諸島の土着民が使う毒矢によって殺されているのを発見した。そして、問題の財宝は何者かによって奪い去られていたのである。
ホームズの依頼に応じて、ワトスンは、ランベス地区(Lambeth)の水辺近くにあるピンチンレーン3番地(No. 3 Pinchin Lane→2017年10月28日付ブログで紹介済)に住む鳥の剥製屋シャーマン(Sherman)から、犬のトビー(Toby)を借り出す。そして、ホームズとワトスンの二人は、バーソロミュー・ショルトの殺害現場に残っていたクレオソートの臭いを手掛かりにして、トビーと一緒に、現場からロンドン市内を通り、犯人の逃走経路を追跡して行く。

ホームズとワトスンの二人が、犬のトビーと一緒に、ストリーサム地区(Streatham→2017年12月2日付ブログで紹介済)、ブリクストン地区(Brixton→2017年12月3日付ブログで紹介済)、キャンバーウェル地区(Camberwell→2017年12月9日付ブログで紹介済)、オヴァールクリケット場(Oval)を抜けて、ケニントンレーン(Kennington Lane→2017年12月16日付ブログで紹介済)へと達した。そして、彼らは更にボンドストリート(Bond Street→2017年12月23日付ブログで紹介済)、マイルズストリート(Miles Street→2017年12月23日付ブログで紹介済)やナイツプレイス(Knight’s Place→2017年12月23日付ブログで紹介済)を通って、ナインエルムズ地区(Nine Elms→2017年12月30日付ブログと2018年1月6日付ブログで紹介済)までやって来たが、ブロデリック&ネルソンの材木置き場という間違った場所に辿り着いてしまった。どうやら、犬のトビーは、どこかの地点から違うクレオソートの臭いを辿ってしまったようだ。

二人はトビーをクレオソートの臭いの跡が二つの方向に分かれていたナイツプレイスへと戻し、犯人達の跡を再度辿らせた。そして、彼らはベルモントプレイス(Belmon Place→2018年1月13日付ブログで紹介済)とプリンスズストリート(Prince’s Street→2018年1月13日付ブログで紹介済)を抜けて、ブロードストリート(Broad Street→2018年1月13日付ブログで紹介済)の終点で、テムズ河岸に出るが、そこは船着き場で、どうやら犯人達はここで船に乗って、警察の追跡をまこうとしたようだ。

ホームズは、ウィギンズ(Wiggins)を初めとするベーカーストリート不正規隊(Baker Street Irregulars)を使って、バーソロミュー・ショルトを殺害した犯人達が乗った船の隠れ場所を捜索させたものの、うまくいかなかった。独自の捜査により、犯人達の居場所を見つけ出したホームズは、ベーカーストリート221Bへスコットランドヤードのアセルニー・ジョーンズ警部(Inspector Athelney Jones)を呼び出す。ホームズは、呼び出したアセルニー・ジョーンズ警部に対して、バーソロミュー・ショルトの殺害犯人達を捕えるべく、午後7時にウェストミンスター船着き場(Westminster Stairs / Wharf→2018年3月31日 / 4月7日付ブログで紹介済)に巡視艇を手配するよう、依頼するのであった。

巡視艇がウェストミンスター船着き場を離れると、ホームズはアセルニー・ジョーンズ警部に対して、巡視艇をロンドン塔(Tower of London→2018年4月8日 / 4月15日 / 4月22日付ブログで紹介済)方面へと向かわせ、ジェイコブソン修理ドック(Jacobson’s Yard)の反対側に船を停泊するよう、指示した。

セントポールズチャーチヤードから見た
セントポールポール大聖堂の大ドームと側面(その2)

「彼らが本当に真犯人かどうかは判りませんが、ホームズさん、あなたは全てを非常に見事に計画されましたね。」と、ジョーンズ警部は言った。「もし私がこの事件を担当していたら、ジェイコブソン修理ドックの周りに警察官を配置して、彼らがやって来たところで逮捕しますね。」
「それは、絶対にうまくいかないさ。真犯人のスモールは、かなり抜け目のない男だ。奴は、前以って偵察を送り、何か怪しいと感じることがあれば、もう一週間身を潜めているだろう。」
「しかし、モルディカイ・スミスを尾行すれば、犯人達の隠れ家に辿り着けたかもしれない。」と、私が言った。
「ワトスン、君が言う通りにしていたら、僕は一日無駄にしていたに違いない。スミスが犯人達の居場所を知っている確率は、百分の一だと、僕は思っている。スミスにとって、酒と割と良い報酬がある限り、あれこれと詮索する必要があると思うかい?犯人達は、伝言を使い、スミスに対して指示をしている。いいや、僕はあらゆる可能な手段を検討したが、これが最善の策なんだ。」
こういった話をしている間に、私達が乗った巡視艇は、テムズ河に架かる橋の長い列を抜けて行った。シティーを過ぎた時、沈みゆく太陽の最後の光が、セントポール大聖堂の頂に建つ十字架を金色に染めていた。ロンドン塔に着く頃には、既に黄昏時だった。

セントポールズチャーチヤードから見た
セントポールポール大聖堂の大ドームと側面(その3)

‘You have planned it all very neatly, whether they are the right men or not, said Jones. ‘But if the affair were in  my hands I should have had a body of police in Jacobson’s Yard, and arrested them when they came down.’
‘Which would have been never. This man Small is a pretty shrewd fellow. He would send a scout on a head, and if anything made him suspicious he would lie snug for another week.’
‘But you might have stuck to Mordecai smith, and so been led to their hiding-place,’ said I.
‘In that case I should have wasted my day. I think that it is a hundred to one against smith knowing where they live. As long as he has liquor and good pay, why should he ask questions? They send him messages what to do. No, I thought over every possible course, and this is the best.’
While this conversation had been proceeding, we had been shooting the long series of bridges which span the Thames. As we passed the City the last rays of the sun were gilding the cross upon the summit of St Paul’s. It was twilight before we reached the Tower.

セントポール大聖堂の正面を下から見上げたところ

ホームズ、ワトスンとスコットランドヤードのアセルニー・ジョーンズ警部の三人が警察官達と一緒に乗った巡視艇がウェストミンスター船着き場を出発して、テムズ河(River Thames)に架かる橋を次々と抜けた後、シティー・オブ・ロンドン(City of London→2018年8月4日 / 8月11日付ブログで紹介済)を通り過ぎた。次に彼らの目に入ったのは、沈み行く太陽の最後の光が金色に染めた十字架を頂に持つセントポール大聖堂(St. Paul’s Cathedral)だった。
セントポール大聖堂は、ロンドンの経済活動の中心地であるシティー・オブ・ロンドン内にあるイングランド国教会ロンドン教区の主教座聖堂であり、聖パウロを記念している。

三菱地所が再開発した
パタノスタースクエア(Paternoster Square)近辺から見上げた
セントポール大聖堂

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