女芸人カーロッタ・アダムズの友人であるペニー・ドライヴァーの帽子店の撮影に使用された デュークスロードの西側に建つ棟 |
アガサ・クリスティー作「エッジウェア卿の死(Lord Edgware Dies)」(1933年)は、エルキュール・ポワロとアルゼンチンから一時帰国したヘイスティングス大尉が、米国からロンドン/パリ公演ツアーに来ている女芸人カーロッタ・アダムズ(Carlotta Adams)の舞台を観たところから、その物語が始まる。背景や衣装等を必要としない彼女の「人物模写演技」は完璧で、一瞬で顔つきや声音等を変えて、その人自身になりきるのであった。男爵であるエッジウェア卿(Lord Edgware)と結婚している米国出身の舞台女優ジェーン・ウィルキンソン(Jane Wilkinson)の物真似に関しても見事の一言で、ポワロは深く感銘を受ける。
その夜、ポワロの元をジェーン・ウィルキンソン本人が訪れる。彼女から「離婚話に応じない夫を説得してもらいたい。」という依頼を受けたポワロがエッジウェア卿を訪問したところ、彼は「6ヶ月も前に、離婚に同意する旨を彼女宛に手紙で既に伝えた。」と答えるのであった。話のくい違いに納得がいかないポワロであったが、そのまま帰宅せざるを得なかった。
デュークスロードの中間辺りから南側を見たところ |
その後、エッジウェア卿が自宅において何者かに鋭利な刃物で刺され、他殺体となって発見される。事件当夜、犯行現場の屋敷で姿を目撃されたジェーン・ウィルキンソンが有力な容疑者となるが、その犯行時刻、彼女は離れた場所で行われていた晩餐会に出席しており、犯行現場に行く時間がないという鉄壁のアリバイがあった。非常に難解な謎に、ポワロの灰色の脳細胞が挑む。
デュークスロードの中間辺りから北側を見たところ |
英国のTV会社 ITV1 で放映されたポワロシリーズ「Agatha Christie's Poirot」の「エッジウェア卿の死」(2000年)の回において、カーロッタ・アダムズの友人であるペニー・ドライヴァー(Penny Driver)が営む帽子店の撮影が、デュークスロード(Duke's Road)で行われている。
アガサ・クリスティーの原作では、カーロッタ・アダムズの友人の名前は、ジュヌヴィエーヴ・ドライヴァー(Genevieve Driver)/通称ジュニー・ドライヴァー(Jenny Driver)となっていたが、TV版では、何故か、ペニー・ドライヴァーに変更されている。
ポワロシリーズの撮影に使用された棟は、現在、 オフィスや住居(上階)等に使用されている模様 |
デュークスロードは、ロンドン・カムデン区(London Borough of Camden)のセントパンクラス地区(St. Pancras)内にあり、キングスクロス駅(King's Cross Station)/セントパンクラス駅(St. Pancras Station)の前を通って、ユーストン駅(Euston Station)へ向かって西に延びるユーストンロード(Euston Road)を、ユーストン駅の手前で左へ曲がったところにあるのが、デュークスロードで、それ程長い通りではない。
左手奥に見えるのがセントパンクラス協会で、 その奥で左右に延びる通りがユーストンロード |
セントパンクラス教会(St. Pancras Church of England)、アンバサダーズ ブルームズベリーホテル(Ambassadors Bloomsbury Hotel)や英国医学協会(British Medical Association)等が面しているのは、地下鉄ホルボーン駅(Holborn Tube Station)からユーストン駅へ向かって北上するアッパーウォバーンプレイス(Upper Woburn Place)で、デュークスロードは一本東側に位置しており、オフィスやレストラン等はあるが、日中でもひっそりとした静かな通りである。
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