2014年8月10日日曜日

ロンドン セントマーティンズ劇場(St. Martin's Theatre)ーその1

セントマーティンズ劇場の建物全景

地下鉄レスタースクエア駅(Leicester Square Tube Station)の北側に、セントマーティンズ劇場(St. Martin's Theatre)があり、この劇場で、アガサ・クリスティーの戯曲「ねずみとり(The Mousetrap)」が、1952年11月25日にロンドン・ウェストエンドのアンバサダーズ劇場(Ambassador's Theatre)で初演されて以来、60年を超える最長不倒のロングラン上演を続けている。1974年3月25日にアンバサダーズ劇場から隣りのセントマーティンズ劇場に上演の舞台が移り、上演50周年を迎えた2002年11月25日には、エリザベス2世陛下とエディンバラ公フリップ殿下が特別公演を楽しまれた。2012年11月18日には、上演回数が25千回を超え、2012年11月25日には、遂に上演60周年を迎えた。

「ねずみとり」の公演が50周年を迎えたことを示すプレート

クリスティーファンには周知の通り、「ねずみとり」は最初から戯曲として書かれた訳ではなく、早川書房クリスティー文庫の「愛の探偵たち(Three Blind Mice and Other Stories)」(1950年)という短編集におさめられている中編「三匹の盲目のねずみ(Three Blind Mice)」を脚色したものである。より正確に言うと、王太后メアリー・オブ・テックの80歳の誕生日を祝うため、BBCの依頼により、クリスティーが1947年にラジオドラマとして執筆したものが、上記の中編の基となっている。

小説では、物語は第一の殺人の場面からいきなり始まる。場所は、ロンドンのパディントン駅(Paddington Station)近くの名もない下宿で、ライアン夫人と名乗っているモーリン・グレッグが何者かに殺害される。殺人犯は、お得意の歌として、「三匹の盲目のねずみ」(英国の有名な伝承童謡で、マザーグースの一つ)を口ずさむ。
そして、物語の舞台は、ロンドンからバークシャーのハープレーデンという町の近くにあるモンクスウェル館に移る。戯曲の「ねずみとり」では、ロンドンでの殺人シーンはなく、モンクスウェル館(Monkswell Manor Guest House)から物語が始まる。その代わりに、モンクスウェル館のラジオから「ロンドンで殺人事件が発生し、殺人犯が逃走中である。」というニュースが流される。

(ここからの登場人物は、戯曲の「ねずみとり」をベースにしている。)
モンクスウェル館は、モリーとジャイルズの若きロールストン夫妻(Mollie and Giles Ralston)が経営する、小さいがオープンしたてのゲストハウスで、雪が降る中、かねてからの予約客4名が次々に到着する。

(1)若い男性建築家のクリストファー・レン(Mr. Christopher Wren):この名前を聞くと、セントポール大聖堂(St. Paul's Cathedral)、ロンドン大火記念塔(Monument)やグリニッジ王立天文台(Royal Greenwich Observatory)等を設計施工した英国の著名建築家のクリストファー・レン卿(Sir Christopher Wren:1632年ー1723年)思い出すが、同姓同名の別人物。
(2)年輩の女性ボイル夫人(Mrs. Boyle)
(3)中年男性のメトカーフ少佐(Major Metcalf)
(4)若い女性のミス・ケースウェル(Miss Casewell)


雪がなおも激しく降り続く中、(5)外国人風の男性パラヴィチー二氏(Mr. Paravicini)が現れ、玄関をノックする。パラヴィチー二氏は、車がスリップしてしまったと言い、モンクスウェル館に急遽宿泊することになる。その直後、記録破りの大雪によって、館に続く道も埋まり、モンクスウェル館は外界から完全に孤立してしまう。その後、雪で閉ざされて孤立したモンクスウェル館に警察から電話連絡が入り、警官を1名差し向けると言う。その連絡に基づいて、ロンドン訛の若い男性のトロッキー部長刑事(Detective Sergeant Trotter)がスキーでモンクスウェル館までやってくるのである。

ロンドンで発生した殺人事件の犯人は、大雪で不運にもモンクスウェル館に閉じ込められた滞在客の中に紛れ込んでいるのだろうか?登場人物達の間に疑惑が深まって行き、ロールストン夫妻も、もしかして自分の夫が(妻が)殺人犯なのではと疑い始める。そして疑惑と緊張が頂点に達したとき、第二の殺人が発生する。不気味な「三匹の盲目のねずみ」の童謡が流れ、我々の目の前に驚くべき殺人犯がその姿を現す。クリスティーお得意の大どんでん返しである。


日頃、セントマーティンズ劇場の前を買い物や用事の際に通る度に「ねずみとり」を観劇したいと思いながら、何故かいまだに果たせていない。

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