2025年12月7日日曜日

「そして誰もいなくなった」の世界 <ジグソーパズル>(The World of ‘And Then There Were None’ )- その20

英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に発行されている「「そして誰もいなくなった」の世界(The World of ‘And Then There Were None’)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているアガサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「そして誰もいなくなった(And Then There Were None)」(1939年)の登場人物や同作品に関連した47個にわたる手掛かりについて、引き続き、紹介したい。


ロンドンのパディントン駅(Paddington Station → 2014年8月3日付ブログで紹介済)から
オークブリッジ駅(Oakbridge Station)へと向かう列車の一等喫煙車内において、
ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ元判事は、右手に持った葉巻を燻らせ、
コンスタンス・カルミントンと署名された手紙を左手に持ち、その内容を読んでいる。
<筆者撮影>

ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ元判事は、
兵隊島に建つ邸宅の玄関右脇のテラスにおいて、
左手に眼鏡を持ち、椅子に腰掛けている。
<筆者撮影>


ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ(Lawrence John Wargrave / 高名な元判事) → 2025年10月20日付ブログで紹介済)に関連した3個の手掛かりが、その対象となる。


英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に出ている
ジグソーパズル「「そして誰もいなくなった」の世界」(1000ピース)


(41)グレーの毛糸の玉2つ(Two skeins of grey knitting-wool)


兵隊島に建つ邸宅の1階の一番右端が居間で、
ソファーにリラックして座り、酒を楽しむアンソニー・ジェイムズ・マーストン
(Anthony James Marston → 2025年11月1日付ブログで紹介済)の前の床の上に、
グレーの毛糸の玉が2つ落ちている
<筆者撮影>


編み物好きなエミリー・キャロライン・ブレント(Emily Caroline Brent / 信仰心の厚い老婦人 → 2025年10月29日付ブログで紹介済)は、物語の中盤、グレーの毛糸の玉2つを何者かに盗まれてしまう。

その後、応接間において、裁判官の服装をして、額に銃弾を受けていたローレンス・ジョン・ウォーグレイヴの頭には、カツラが被せられていた。この裁判官が被るカツラは、エミリー・キャロライン・ブレントが失くしたグレーの毛糸からできていたのである。


ヴェラ・クレイソーンが言った。

「ブレントさん、お茶をついでいただけますか」

「あなたがついでくださいな。あのティーポット、ひどく重いんですよ。それにわたし、グレーの毛糸の玉を二つなくしてしまってね。頭にくるったら、ないの」

(青木 久惠訳)


応接間の入り口で、アームストロングの足がピタッと止まった。ほかの三人は後ろにむらがって、医者の肩の上からのぞきこんだ。

誰かが叫び声を上げた。

ウォーグレイヴ判事は、部屋の奥に置かれた背もたれの高いイスに座っていた。両脇でローソクが燃えている。だが、四人が驚きショックを受けたのは、判事が真っ赤なガウンをまとい、裁判官のかぶるカツラをかぶっていたからだ …。

アームストロング医師がほかの三人に、近づかないように合図した。そして酔っぱらいのような、ちょっとふらつく足で、目を見開いたまま静かに座る判事に近づいた。

医者はかがみこんで、動かない顔をのぞきこんだ。そしてカツラをひょいと持ちあげた。カツラは床に転がり、禿げあがった額が現われた。額の真ん中が丸く汚れて、そこから何かが滴っている。

アームストロングはグニャリと力の抜けた手をとって脈をみた。そして三人のほうに顔を上げた。

まるで感情のこもらない、ぼんやりとした声で医者は言った。

「撃たれているよ …」

「なんだって - あのピストルか!」と、ブロアが言った。

医者は、やはり気の抜けた声で言った。

「頭を撃ち抜かれている。即死だ」

ヴェラがかがんで、転がっているカツラを見た。

「ブレントさんがなくした、グレーの毛糸 …」と、声をふるわせて、ヴェラは言った。

「それに、浴室から消えた、真っ赤なカーテンじゃないか …」と、ブロア。

「盗んだのは、これが目的だったのね」ヴェラがつぶやいた。

(青木 久惠訳)


(42)真っ赤なオイルシルクのカーテン(A scarlet oilskin curtain)


兵隊島に建つ邸宅の1階の一番右端が居間で、
招待客の一人であるアンソニー・ジェイムズ・マーストンが、
ソファーにリラックして座り、酒を楽しんでいる。
この居間の窓に、真っ赤なオイルシルクのカーテンが掛けられている。
厳密に言うと、原作の場合、
このカーテンが掛かっていたのは、居間ではなく、浴室である。
<筆者撮影>


応接間において、裁判官の服装をして、額に銃弾を受けていたローレンス・ジョン・ウォーグレイヴは、赤いガウンを纏っていた。彼が身体に纏っている真っ赤なガウンは、トマス・ロジャーズ(Thomas Rogers / 執事 → 2025年11月3日付ブログで紹介済)が「浴室から無くなった。」と言っていた真っ赤なカーテンで代用されていた。


お茶! 毎日なにげなく飲む、午後のお茶。ああ、なんてありがたい! フィリップ・ロンバードが楽しい話題をもちだして、ブロアもそれにのった。アームストロング医師は、滑稽な話で笑いを誘った。いつもはお茶ぎらいのウォーグレイヴ判事まで、カップに口をつけている。

そんなふうにくつろいでいるところに、ロジャーズが入ってきた。

ロジャーズはあわてていた。彼はおろおろ声で言った。

「失礼いたします。あのう、どなたか、浴室のカーテンがどうなったか、ご存じではないでしょうか」

ロンバードがピクッと顔を上げて、ロジャーズを見た。

「浴室のカーテンだって? いったい、どういうことだい」

「なくなったのです。消えました。カーテンを閉めてまわっておりました。すると、浴室のがないのです」

「今朝はあったのか」ウォーグレイヴ判事が尋ねた。

「ございました」

「どんなカーテンだい」と、ブロア。

「真っ赤なオイルシルクでございます。赤いタイルとマッチする色でした」

「それがなくなったのか」ロンバードがきいた。

「なくなりました」

六人は顔を見あわせた。

(青木 久惠訳)


(45)裁判官が被るカツラ(A judge’s wig)


兵隊島に建つ邸宅の玄関の右側にある階段の前で、
正装して、ファイティングポーズをとるウィリアム・ヘンリー・ブロアの姿が見られる。
階段の左側に置かれているコート掛けには、
黒い帽子と青い傘の他に、裁判官が被る白いカツラも掛けられている。
<筆者撮影>


応接間において、裁判官の服装をして、額に銃弾を受けていたローレンス・ジョン・ウォーグレイヴの頭には、カツラが被せられていた。この裁判官が被るカツラは、エミリー・キャロライン・ブレントが失くしたグレーの毛糸からできていたのである。


同上

(青木 久惠訳)


1930年代後半の8月のこと、英国デヴォン州(Devon)の沖合いに浮かぶ兵隊島(Soldier Island → 2025年10月19日付ブログで紹介済)に、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ判事を含め、年齢も職業も異なる8人の男女が招かれる。彼らを島で迎えた執事と料理人の夫婦は、エリック・ノーマン・オーウェン氏(Mr. Ulick Norman Owen)とユナ・ナンシー・オーウェン夫人(Mrs. Una Nancy Owen)に自分達は雇われていると招待客に告げる。しかし、彼らの招待主で、この島の所有者であるオーウェン夫妻は、いつまで待っても、姿を現さないままだった。


兵隊島は、
ジグソーパズル「「そして誰もいなくなった」の世界」の左下の角に置かれている。
<筆者撮影>


招待客が自分達の招待主や招待状の話をし始めると、皆の説明が全く噛み合なかった。その結果、招待状が虚偽のものであることが、彼らには判ってきた。招待客の不安がつのる中、晩餐会が始まるが、その最中、招待客8人と執事 / 料理人夫婦が過去に犯した罪を告発する謎の声が室内に響き渡る。

ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴは、皆が無実の被告だと確信していたエドワード・シートン(Edward Seton)に対して、陪審員達を巧みに誘導し、不当な死刑判決出したと告発されたのである。


招待客が兵隊島に到着した日の晩餐会において、
謎の声(オーウェン氏)による告発により、招待客8人と執事 / 料理人夫婦が戦慄する場面 -

HarperCollins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」の
グラフィックノベル版(→ 2020年9月13日付ブログで紹介済)から抜粋。


そして、物語が進み、童謡「10人の子供の兵隊(Ten Little Soldiers → 2025年11月15日付ブログで紹介済)」に準えて、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴは、6番目の被害者となる。


兵隊島に建つ邸宅の2階にある
ヴェラ・エリザベス・クレイソーンの部屋の壁(画面左側)には、
童謡「10人の子供の兵隊」が書かれた額が掛けられている。
<筆者撮影>

Five little soldier boys going in for law; One got in chancery and then there were Four.

(5人の子供の兵隊さんが、法律を志した。一人が大法官府(裁判所)に入って、残りは4人になった。)


厳密に言うと、原作の場合、

ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴが見つかったのは、応接間(1階)で、

兵隊人形が置かれているのは、食堂(1階)なので、この場面は正しくない。-

HarperCollins Publishers 社から出ている
アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋


*被害者:ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ

*告発された罪状:皆が無実の被告だと確信していたエドワード・シートンに対して、陪審員達を巧みに誘導し、不当な死刑判決出したと告発された。

*犯罪発生時期:1930年6月10日

*死因:裁判官の服装をして、額に銃弾を受けていた。なお、裁判官が被るカツラは、エミリー・キャロライン・ブレントが失くしたグレーの毛糸からできており、また、身体に纏っている真っ赤なガウンは、トマス・ロジャーズが「浴室から無くなった。」と言っていた真っ赤なカーテンで代用されていた。


画面左側から、エドワード・ジョージ・アームストロング、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ、
フィリップ・ロンバード、ウィリアム・ヘンリー・ブロア、
そして、
ヴェラ・エリザベス・クレイソーン。
-

HarperCollins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。


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