英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に発行されている「「そして誰もいなくなった」の世界(The World of ‘And Then There Were None’)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているアガサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「そして誰もいなくなった(And Then There Were None)」(1939年)の登場人物や同作品に関連した47個にわたる手掛かりについて、引き続き、紹介したい。
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| ロンドンのパディントン駅(Paddington Station → 2014年8月3日付ブログで紹介済)から オークブリッジ駅(Oakbridge Station)へと向かう列車の一等喫煙車内において、 ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ元判事は、右手に持った葉巻を燻らせ、 コンスタンス・カルミントンと署名された手紙を左手に持ち、その内容を読んでいる。 <筆者撮影> |
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| ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ元判事は、 兵隊島に建つ邸宅の玄関右脇のテラスにおいて、 左手に眼鏡を持ち、椅子に腰掛けている。 <筆者撮影> |
ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ(Lawrence John Wargrave / 高名な元判事) → 2025年10月20日付ブログで紹介済)に関連した3個の手掛かりが、その対象となる。
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| 英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に出ている ジグソーパズル「「そして誰もいなくなった」の世界」(1000ピース) |
(41)グレーの毛糸の玉2つ(Two skeins of grey knitting-wool)
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| 兵隊島に建つ邸宅の1階の一番右端が居間で、 ソファーにリラックして座り、酒を楽しむアンソニー・ジェイムズ・マーストン (Anthony James Marston → 2025年11月1日付ブログで紹介済)の前の床の上に、 グレーの毛糸の玉が2つ落ちている。 <筆者撮影> |
編み物好きなエミリー・キャロライン・ブレント(Emily Caroline Brent / 信仰心の厚い老婦人 → 2025年10月29日付ブログで紹介済)は、物語の中盤、グレーの毛糸の玉2つを何者かに盗まれてしまう。
その後、応接間において、裁判官の服装をして、額に銃弾を受けていたローレンス・ジョン・ウォーグレイヴの頭には、カツラが被せられていた。この裁判官が被るカツラは、エミリー・キャロライン・ブレントが失くしたグレーの毛糸からできていたのである。
ヴェラ・クレイソーンが言った。
「ブレントさん、お茶をついでいただけますか」
「あなたがついでくださいな。あのティーポット、ひどく重いんですよ。それにわたし、グレーの毛糸の玉を二つなくしてしまってね。頭にくるったら、ないの」
(青木 久惠訳)
応接間の入り口で、アームストロングの足がピタッと止まった。ほかの三人は後ろにむらがって、医者の肩の上からのぞきこんだ。
誰かが叫び声を上げた。
ウォーグレイヴ判事は、部屋の奥に置かれた背もたれの高いイスに座っていた。両脇でローソクが燃えている。だが、四人が驚きショックを受けたのは、判事が真っ赤なガウンをまとい、裁判官のかぶるカツラをかぶっていたからだ …。
アームストロング医師がほかの三人に、近づかないように合図した。そして酔っぱらいのような、ちょっとふらつく足で、目を見開いたまま静かに座る判事に近づいた。
医者はかがみこんで、動かない顔をのぞきこんだ。そしてカツラをひょいと持ちあげた。カツラは床に転がり、禿げあがった額が現われた。額の真ん中が丸く汚れて、そこから何かが滴っている。
アームストロングはグニャリと力の抜けた手をとって脈をみた。そして三人のほうに顔を上げた。
まるで感情のこもらない、ぼんやりとした声で医者は言った。
「撃たれているよ …」
「なんだって - あのピストルか!」と、ブロアが言った。
医者は、やはり気の抜けた声で言った。
「頭を撃ち抜かれている。即死だ」
ヴェラがかがんで、転がっているカツラを見た。
「ブレントさんがなくした、グレーの毛糸 …」と、声をふるわせて、ヴェラは言った。
「それに、浴室から消えた、真っ赤なカーテンじゃないか …」と、ブロア。
「盗んだのは、これが目的だったのね」ヴェラがつぶやいた。
(青木 久惠訳)
(42)真っ赤なオイルシルクのカーテン(A scarlet oilskin curtain)
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| 兵隊島に建つ邸宅の1階の一番右端が居間で、 招待客の一人であるアンソニー・ジェイムズ・マーストンが、 ソファーにリラックして座り、酒を楽しんでいる。 この居間の窓に、真っ赤なオイルシルクのカーテンが掛けられている。 厳密に言うと、原作の場合、 このカーテンが掛かっていたのは、居間ではなく、浴室である。 <筆者撮影> |
応接間において、裁判官の服装をして、額に銃弾を受けていたローレンス・ジョン・ウォーグレイヴは、赤いガウンを纏っていた。彼が身体に纏っている真っ赤なガウンは、トマス・ロジャーズ(Thomas Rogers / 執事 → 2025年11月3日付ブログで紹介済)が「浴室から無くなった。」と言っていた真っ赤なカーテンで代用されていた。
お茶! 毎日なにげなく飲む、午後のお茶。ああ、なんてありがたい! フィリップ・ロンバードが楽しい話題をもちだして、ブロアもそれにのった。アームストロング医師は、滑稽な話で笑いを誘った。いつもはお茶ぎらいのウォーグレイヴ判事まで、カップに口をつけている。
そんなふうにくつろいでいるところに、ロジャーズが入ってきた。
ロジャーズはあわてていた。彼はおろおろ声で言った。
「失礼いたします。あのう、どなたか、浴室のカーテンがどうなったか、ご存じではないでしょうか」
ロンバードがピクッと顔を上げて、ロジャーズを見た。
「浴室のカーテンだって? いったい、どういうことだい」
「なくなったのです。消えました。カーテンを閉めてまわっておりました。すると、浴室のがないのです」
「今朝はあったのか」ウォーグレイヴ判事が尋ねた。
「ございました」
「どんなカーテンだい」と、ブロア。
「真っ赤なオイルシルクでございます。赤いタイルとマッチする色でした」
「それがなくなったのか」ロンバードがきいた。
「なくなりました」
六人は顔を見あわせた。
(青木 久惠訳)
(45)裁判官が被るカツラ(A judge’s wig)
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応接間において、裁判官の服装をして、額に銃弾を受けていたローレンス・ジョン・ウォーグレイヴの頭には、カツラが被せられていた。この裁判官が被るカツラは、エミリー・キャロライン・ブレントが失くしたグレーの毛糸からできていたのである。
同上
(青木 久惠訳)
1930年代後半の8月のこと、英国デヴォン州(Devon)の沖合いに浮かぶ兵隊島(Soldier Island → 2025年10月19日付ブログで紹介済)に、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ判事を含め、年齢も職業も異なる8人の男女が招かれる。彼らを島で迎えた執事と料理人の夫婦は、エリック・ノーマン・オーウェン氏(Mr. Ulick Norman Owen)とユナ・ナンシー・オーウェン夫人(Mrs. Una Nancy Owen)に自分達は雇われていると招待客に告げる。しかし、彼らの招待主で、この島の所有者であるオーウェン夫妻は、いつまで待っても、姿を現さないままだった。
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| 兵隊島は、 ジグソーパズル「「そして誰もいなくなった」の世界」の左下の角に置かれている。 <筆者撮影> |
招待客が自分達の招待主や招待状の話をし始めると、皆の説明が全く噛み合なかった。その結果、招待状が虚偽のものであることが、彼らには判ってきた。招待客の不安がつのる中、晩餐会が始まるが、その最中、招待客8人と執事 / 料理人夫婦が過去に犯した罪を告発する謎の声が室内に響き渡る。
ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴは、皆が無実の被告だと確信していたエドワード・シートン(Edward Seton)に対して、陪審員達を巧みに誘導し、不当な死刑判決出したと告発されたのである。
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| 招待客が兵隊島に到着した日の晩餐会において、 謎の声(オーウェン氏)による告発により、招待客8人と執事 / 料理人夫婦が戦慄する場面 - HarperCollins Publishers 社から出ている アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版(→ 2020年9月13日付ブログで紹介済)から抜粋。 |
そして、物語が進み、童謡「10人の子供の兵隊(Ten Little Soldiers → 2025年11月15日付ブログで紹介済)」に準えて、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴは、6番目の被害者となる。
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| 兵隊島に建つ邸宅の2階にある ヴェラ・エリザベス・クレイソーンの部屋の壁(画面左側)には、 童謡「10人の子供の兵隊」が書かれた額が掛けられている。 <筆者撮影> |
Five little soldier boys going in for law; One got in chancery and then there were Four.
(5人の子供の兵隊さんが、法律を志した。一人が大法官府(裁判所)に入って、残りは4人になった。)
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厳密に言うと、原作の場合、 ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴが見つかったのは、応接間(1階)で、 兵隊人形が置かれているのは、食堂(1階)なので、この場面は正しくない。- HarperCollins Publishers 社から出ているアガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。 |
*被害者:ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ
*告発された罪状:皆が無実の被告だと確信していたエドワード・シートンに対して、陪審員達を巧みに誘導し、不当な死刑判決出したと告発された。
*犯罪発生時期:1930年6月10日
*死因:裁判官の服装をして、額に銃弾を受けていた。なお、裁判官が被るカツラは、エミリー・キャロライン・ブレントが失くしたグレーの毛糸からできており、また、身体に纏っている真っ赤なガウンは、トマス・ロジャーズが「浴室から無くなった。」と言っていた真っ赤なカーテンで代用されていた。
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| 画面左側から、エドワード・ジョージ・アームストロング、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ、 フィリップ・ロンバード、ウィリアム・ヘンリー・ブロア、 そして、ヴェラ・エリザベス・クレイソーン。- HarperCollins Publishers 社から出ている アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。 |











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