2025年12月6日土曜日

「そして誰もいなくなった」の世界 <ジグソーパズル>(The World of ‘And Then There Were None’ )- その19

英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に発行されている「「そして誰もいなくなった」の世界(The World of ‘And Then There Were None’)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているアガサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「そして誰もいなくなった(And Then There Were None)」(1939年)の登場人物や同作品に関連した47個にわたる手掛かりについて、引き続き、紹介したい。


ジグソーパズルの上部のやや右側に、
赤い服を着た正装したエミリー・キャロライン・ブレントが顔の前で両手を合わせている場面が、
赤枠で囲まれている。
<筆者撮影>

兵隊島に建つ邸宅の2階の一番右端が、エミリー・キャロライン・ブレントの部屋で、
その窓辺に佇む彼女の姿が見られる。
<筆者撮影>


エミリー・キャロライン・ブレント(Emily Caroline Brent / 信仰心の厚い老婦人 → 2025年10月29日付ブログで紹介済)に関連した6個の手掛かりが、その対象となる。


英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に出ている
ジグソーパズル「「そして誰もいなくなった」の世界」(1000ピース)


(30)蜂(A bumblebee)


兵隊島に建つ邸宅の1階の一番左端が食堂(ダイニングルーム)で、
銅鑼(dinner gong → 2025年11月27日付ブログで紹介済)の背後の壁に、蜂がとまっている。
<筆者撮影>


エミリー・キャロライン・ブレントが殺害された現場(食堂)には、何者かによって、蜂が放たれていた。


エミリー・ブレントは、ダイニングルームに一人残された。

しばらくのあいだ食器室から、かすかな話し声が聞こえてきた。

めまいはおさまってきた。ところが今度は眠くなってきた。今にも眠りこんでしまいそうだ。

耳の中で、ブーンと音がする - それとも、部屋の中で本当に何かが鳴っているのだろうか。

ミス・ブレントは思った。

”まるでハチが飛んでいるみたいな音ね - ミツバチみたいな”

すぐにハチがいるのが見えた。窓ガラスを這いのぼっている。


<中略>


窓ガラスではハチが羽音を立てている - ブーン、ブーン…。

そのとき、チクッとした。

ハチが首の横を刺したのだ …。

(青木 久惠訳)


ウォーグレイヴ判事が低い声で静かに言った。

「またまた一人が、無罪となったか - だが、あとの祭りだ!」

アームストロングが、息たえた女性の上にかがみこんだ。唇のにおいをかぎ、首をふってから、まぶたの中をのぞいている。

ロンバードが待ちきれなくなって、言った。

「先生、なんで死んだんですか。ぼくたちがこの部屋を出たときには、彼女、ぴんぴんしていましたよ」

アームストロングは、首の右側の痕にじっと見入っていた。

「これは、皮下注射器の針の痕ですね」

窓のほうでブーンと音がした。ヴェラが叫んだ。

「あそこに - ハチが - ミツバチが - 今朝、わたしが言ったとおりじゃないの!」

アームストロングがけわしい顔で言った。

「ブレントさんを刺したのは、ハチじゃない。注射器を握っていたのは、人間の手だ」

「どんな毒が注射されたのかな」と、判事が尋ねた。

「シアン化物の一種のようです。おそらくアンソニー・マーストンと同じに青酸カリでしょう。窒息して、すぐに息を引き取ったはずです」

(青木 久惠訳)


(33)聖書(A Bible)


兵隊島に建つ邸宅の2階の一番右端が、エミリー・キャロライン・ブレントの部屋で、
ベッドの右横にある書き物机の上に、聖書(右側)が置かれている。
<筆者撮影>


エミリー・キャロライン・ブレントは、招待された兵隊島(Soldier Island → 2025年10月19日付ブログで紹介済)に、聖書を持参していた。


兵隊島は、
ジグソーパズル「「そして誰もいなくなった」の世界」の左下の角に置かれている。
<筆者撮影>


夕食のために黒いシルクドレスに着がえたエミリー・ブレントは、部屋で聖書を読んでいた。

聖書の言葉を追って、唇が動く。

<異邦の民は自らほった穴に落ち、隠して張った網に足をとられる。主はその裁きをもって知られ、逆らう者は自分の手がしかけた罠にかかる。悪しき者は陰府(よみ)にしりぞく>

唇がぎゅっと固く閉じられた。ミス・ブレントは聖書を閉じた。

立ちあがったミス・ブレントは襟に黒水晶のブローチをとめて、夕食を取りに下におりていった。

(青木 久惠訳)


(35)皮下注射器(A hypodermic syringe)


兵隊島に建つ邸宅の1階の一番左端が食堂(ダイニングルーム)で、
食堂の外のテラスに、皮下注射器が落ちている。
<筆者撮影>


食堂に一人残されたエミリー・キャロライン・ブレントは、皮下注射器に入った青酸カリをクビの横から注入されて、中毒死する。


ブロアが力んだ声で言った。

「ピストルのありかはわからないが、ほかのもの - 注射器のありかなら、わかりますよ。ついて来てください」

彼は玄関のドアを開けて、建物の横にまわった。

ダイニングルームの窓から少し離れたところに、注射器が落ちていた。そのそばに、陶器の人形が割れて、ちらばっていた - 六つ目の兵隊さんだ。

(青木 久惠訳)


(37)割れた陶器の人形(A broken figurine)


ジグソーパズルの上部の一番右端に、
割れた子供の兵隊人形が赤枠で囲まれている。
<筆者撮影>


エミリー・キャロライン・ブレントが皮下注射器に入った青酸カリにより中毒死したことに呼応するように、6つ目の子供の兵隊人形(china soldier figurine → 2025年11月16日付ブログで紹介済)が壊されていた。


兵隊島に建つ邸宅の1階にある食堂において、
招待客の8人が夕食をとるテーブルの中央に、10人の子供の兵隊人形が置かれている。
アガサ・クリスティーの原作の場合、丸いテーブルとなっているが、
ジグソーパズルの場合、四角い長テーブルとなっている。
なお、テーブルの左側には、手前から、
ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ、
ヴェラ・エリザベス・クレイソーン、
エドワード・ジョージ・アームストロング、そして、ウィリアム・ヘンリー・ブロアが座り、
テーブルの右側には、手前から、
ジョン・ゴードン・マッカーサー、エミリー・キャロライン・ブレント、
アンソニー・ジェイムズ・マーストン、そして、フィリップ・ロンバードが着席している。
画面中央奥には、執事のトマス・ロジャーズが、給仕するために控えている。
<筆者撮影>


同上

(青木 久惠訳)


(40)ミス・ブレントの手帳(Miss Brent’s diary)


兵隊島に建つ邸宅の2階の一番右端が、エミリー・キャロライン・ブレントの部屋で、
ベッドの右横にある書き物机の上に、手帳(左側)が置かれている。
<筆者撮影>


エミリー・キャロライン・ブレントは、招待された兵隊島に、聖書の他に、手帳も携えていた。


ミス・ブレントは、二階の自分の部屋に上がっていた。

聖書を手にとって、窓のそばに腰を下ろした。

そして、聖書を開く。やがてちょっと迷ってから、ミス・ブレントは聖書を脇において、化粧テーブルの前に行った。化粧テーブルの引き出しから、黒表紙の手帳を出す。

手帳を開くと、書きはじめた。

(青木 久惠訳)


(41)グレーの毛糸の玉2つ(Two skeins of grey knitting-wool)


兵隊島に建つ邸宅の1階の一番右端が居間で、
ソファーにリラックして座り、酒を楽しむアンソニー・ジェイムズ・マーストン
(Anthony James Marston → 2025年11月1日付ブログで紹介済)の前の床の上に、
グレーの毛糸の玉が2つ落ちている
<筆者撮影>


編み物好きなエミリー・キャロライン・ブレントは、物語の中盤、グレーの毛糸の玉2つを何者かに盗まれてしまう。


ヴェラ・クレイソーンが言った。

「ブレントさん、お茶をついでいただけますか」

「あなたがついでくださいな。あのティーポット、ひどく重いんですよ。それにわたし、グレーの毛糸の玉を二つなくしてしまってね。頭にくるったら、ないの」

(青木 久惠訳)


1930年代後半の8月のこと、英国デヴォン州(Devon)の沖合いに浮かぶ兵隊島に、エミリー・キャロライン・ブレントを含め、年齢も職業も異なる8人の男女が招かれる。彼らを島で迎えた執事と料理人の夫婦は、エリック・ノーマン・オーウェン氏(Mr. Ulick Norman Owen)とユナ・ナンシー・オーウェン夫人に自分達は雇われていると招待客に告げる。しかし、彼らの招待主で、この島の所有者であるオーウェン夫妻は、いつまで待っても、姿を現さないままだった。


招待客が自分達の招待主や招待状の話をし始めると、皆の説明が全く噛み合なかった。その結果、招待状が虚偽のものであることが、彼らには判ってきた。招待客の不安がつのる中、晩餐会が始まるが、その最中、招待客8人と執事 / 料理人が過去に犯した罪を告発する謎の声が室内に響き渡る。

エミリー・キャロライン・ブレントは、以前、ビアトリス・テイラー(Beatrice Taylor)と言う娘を使っていたが、誰の子か判らない子を身ごもったため、彼女を解雇。また、ビアトリス・テイラーの両親も、娘の不始末を許さなかったので、彼女は、川に身を投げて、自分の命を絶っている。


招待客が兵隊島に到着した日の晩餐会において、
謎の声(オーウェン氏)による告発により、招待客8人と執事 / 料理人夫婦が戦慄する場面 -

HarperCollins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」の
グラフィックノベル版(→ 2020年9月13日付ブログで紹介済)から抜粋。

そして、物語が進み、童謡「10人の子供の兵隊(Ten Little Soldiers → 2025年11月15日付ブログで紹介済)」に準えて、エミリー・キャロライン・ブレントは、5番目の被害者となる。


兵隊島に建つ邸宅の2階にある
ヴェラ・エリザベス・クレイソーンの部屋の壁(画面左側)には、
童謡「10人の子供の兵隊」が書かれた額が掛けられている。
<筆者撮影>


Six little soldier boys playing with a hive; A bumble-bee stung one and then there were Five.

(6人の子供の兵隊さんが、蜂の巣に悪戯をした。一人が蜂に刺されて、残りは5人になった。)


信仰心の厚い老婦人であるエミリー・キャロライン・ブレントは、
他のゲスト達が朝食の後片付けをしている最中、食堂に一人残っていた。
その時、
青酸カリが入った皮下注射器を首筋に刺されて、5番目の犠牲者となる。 -
HarperCollins Publishers 社から出ている
アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。


*被害者:エミリー・キャロライン・ブレント

*告発された罪状:以前、ビアトリス・テイラーと言う娘を使っていたが、誰の子か判らない子を身ごもったため、彼女を解雇。また、ビアトリス・テイラーの両親も、娘の不始末を許さなかったので、彼女は、川に身を投げて、自分の命を絶っている。

*犯罪発生時期:1931年11月5日

*死因:皮下注射器に入った青酸カリによる中毒死


エミリー・キャロライン・ブレントの死亡に伴い、
テーブルの上に置かれた兵隊の人形の数が6個から5個へと減っていた。
画面左側から、ヴェラ・エリザベス・クレイソーン(秘書)、フィリップ・ロンバード(元陸軍中尉)、
ウィリアム・ヘンリー・ブロア(元警部)、エドワード・ジョージ・アームストロング(医師)、
そして、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ(元判事)
の5人
が立っている。-

HarperCollins Publishers 社から出ている
アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。


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