2025年9月10日水曜日

コナン・ドイル作「花婿失踪事件」<小説版>(A Case of Identity by Conan Doyle )- その2

1891年9月号に掲載された挿絵(その2) -
母親の再婚相手であるジェイムズ・ウィンディバンクは、
メアリー・サザーランドに対して、男友達との交際を禁じていたが、
彼がフランスへ出張している間に、
彼女は、ガス管取付業界の舞踏会へ出かけ、
そこでホズマー・エンジェルと知り合い、間もなく婚約した。

画面手前左側から、
メアリー・サザーランド、
そして、ホズマー・エンジェル。


サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)作シャーロック・ホームズシリーズの短編第3作目に該る「花婿失踪事件(A Case of Identity)」の場合、ジョン・H・ワトスンが、数週間ぶりに、ベイカーストリート221B(221B Baker Street → 2014年6月22日 / 6月29日付ブログで紹介済)のシャーロック・ホームズの元を訪れたところから、その物語が始まる。

ホームズとワトスンの2人が会話を交わしている最中、事件の依頼人であるメアリー・サザーランド(Mary Sutherland)が、給仕の少年に案内されて、部屋へと入って来た。


メアリー・サザーランドは、太った女性で、立派な毛皮の襟巻きを首に巻き、大きくて巻いた赤い羽根が付いた鍔が広い帽子をコケティッシュなデヴォンシャー公爵夫人風に傾けて、片方の耳を覆うように冠っていた。(a large woman with a heavy fur boa round her neck, and a large curling red feather in a broad-brimmed hat which was tilted in a coquettish Duchess of Devonshire fashion over her ear)


開口一番、ホームズは、メアリー・サザーランドに対して、「貴女のような近視だと、タイプをうつのは、大変ではないですか?(’Do you not find,’ he said, ‘that with your short sight it is a little trying to do so much typewriting?’)」と尋ねて、彼女を驚かせる。


メアリー・サザーランド曰く、警察や他の人達が既に死んだものと諦めていたエサリッジ夫人(Mrs Etherege)の夫をホームズがいとも容易に見つけだした評判を聞きつけて、相談に訪れた、とのことだった。


メアリー・サザーランドは、ホームズに対して、「結婚式の場から行方不明になったホズマー・エンジェル(Hosmer Angel)を探してほしい。」と依頼。


メアリー・サザーランドは、現在、母親とその再婚相手であるジェイムズ・ウィンディバンク(James Windibank - メアリー・サザーランドの母親よりも15歳近く年下)の3人で暮らしていた。


彼女の実の父親は、トッテナムコートロード(Tottenham Court Road → 2015年8月5日付ブログで紹介済)で配管工(plumber)をしており、亡くなった際、かなりの収益がある会社を遺した。彼女の母親は、親方(foreman)のハーディー氏(Mr Hardy)と一緒に、事情を継続していたが、再婚したジェイムズ・ウィンディバンクが、会社を売却させてしまった。



トッテナムコートロードの北側を望む
<筆者撮影>


メアリー・サザーランドによると、母親の再婚相手であるジェイムズ・ウィンディバンクは、彼女より5歳ちょっと年上で、「フェンチャーチストリート(Fenchurch Street → 2014年10月17日付ブログで紹介済)にある大きな赤ワイン輸入業者ウェストハウス&マーバンクで、外交員をしています。(He travels for Westhouse & Marbank, the great claret importers of Fenchurch Street.)」と答える。なお、「クラレット」とは、フランスのボルドー(Bordeaux)地方産の赤ワインを指す。



ロンバードストリート(Lombard Street
→ 2015年1月31日付ブログで紹介済)から
フェンチャーチストリートを望む。
<筆者撮影>


メアリー・サザーランドは、タイピストとして、それなりの収入を得ている他に、オークランド(Auckland)のネッド伯父(Uncle Ned)が遺してくれたニュージーランド公債(New Zealand stock)から、年に100ポンドの利子をもらっていた。

メアリー・サザーランドは、母親とその再婚相手であるジェイムズ・ウィンディバンクと一緒に暮らしている間、この利子収入を彼らに渡していた。


母親の再婚相手であるジェイムズ・ウィンディバンクは、メアリー・サザーランドに対して、男友達との交際を禁じていたが、彼がフランスへ出張している間に、彼女は、ガス管取付業界の舞踏会(gasfitters' ball)へ出かけ、そこでホズマー・エンジェルと知り合い、間もなく婚約した。


ホズマー・エンジェルは、レドンホールストリート(Leadenhall Street → 2014年10月5日付ブログで紹介済)にある事務所で出納係として働いていて(Hosmer - Mr. Angel - was a cashier in an office in Leadenhall Street.)、寝起きもその事務所でしている(He slept on the premises.)と言う。



レドンホールストリート沿いに建つロイズ保険組合の本社ビル「ロイズビル」-
ロイズ(Lloyd’s)」とは、正式には、
「ロイズ・オブ・ロンドン(Lloyd’s of London
→ 2023年12月8日付ブログで紹介済)」と言う。
<筆者撮影>


ホームズが驚いたことに、メアリー・サザーランドは、ホズマー・エンジェルが働いている事務所の住所を、レドンホールストリート以外、全く知らなかったのである。メアリー・サザーランドによると、「ホズマー・エンジェルは、事務所宛に手紙を送られると、女性から手紙をもらったことで、他の社員達からからかわれるので、自分から彼への手紙は、全て、レドンホールストリート郵便局の局留めで送っていた。(To the Leadenhall Street Post Office, to be left till called for.)」とのことだった。


                                       

0 件のコメント:

コメントを投稿