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日本の株式会社 早川書房から出ている クリスティー文庫80「そして誰もいなくなった」の復刻版表紙 (装幀: 真鍋 博) |
アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1939年に発表したノンシリーズ作品「そして誰もいなくなった(And Then There Were None)」は、日本の出版社である株式会社 早川書房( Hayakawa Publishing, Inc.)から、クリスティー文庫80「そして誰もいなくなった」として、日本語新翻訳版が出ている。
なお、本作品は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第26作目に該り、彼女の作品の中でも、代表作に挙げられている。
その際、日本語新翻訳版の表紙として、1976年4月刊行のハヤカワ・ミステリ文庫「そして誰もいなくなった」の挿画が復刻されている。
復刻された挿画の装幀を担当しているのは、日本のイラストレーター / アニメーター / エッセイストであった真鍋 博(Hiroshi Manabe:1932年ー2000年)。
元々、アガサ・クリスティーが1939年に「そして誰もいなくなった」を発表した時点での英語の原題は「Ten Little Niggers(10人の小さな黒んぼ)」で、作品中、これは非常に重要なファクターを占める童謡を暗示している。
なお、この童謡は、マザーグース(Mother Goose)の一つとして分類されるが、大元の「Ten Little Nigger Boys」は、英国の作詞家フランク・グリーン(Frank Green)が1869年に翻案した作品である。
ただし、「Nigger」という単語がアフリカ系アメリカ人に対する差別用語だったため、米国版のタイトルは「Ten Little Indians(10人の子供のインディアン)」に改題された。
それに伴い、
*島の名前: 黒人島(Nigger Island)→ インディアン島(Indian Island)
*童謡名: 10人の小さな黒んぼ(Ten Little Niggers)→ 10人の子供のインディアン(Ten Little Indians)
*人形名: 黒人人形 → インディアン人形
へと変更された。
真鍋 博が日本語旧翻訳版の装幀を担当した際(1976年4月)、米国版のタイトルをベースにして、表紙には「インディアン」が描かれている。
近年、「インディアン」も差別用語と考えられているため、英米で発行されている「そして誰もいなくなった」のタイトルには、「And Then There Were None」が使用されている。「And Then There Were None」は、童謡の歌詞の最後の一文から採られている。
その結果、
*島の名前: インディアン島(Indian Island)→ 兵隊島(Soldier Island)
*童謡名:10人の子供のインディアン → 10人の子供の兵隊(Ten Little Soldiers)
*人形名: インディアン人形 → 兵隊人形
へという変遷を辿っているのである。

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