2024年9月30日月曜日

ミス・マープルの世界<ジグソーパズル>(The World of Miss Marple )- その20B

ビル・ブラッグ氏Mr. Bill Braggが描く
ミス・マープルシリーズの長編第12作目で、最後の作品である
「スリーピングマーダー」の一場面


ビル・ブラッグ氏によるイラストには、

画面奥から、ヒルサイド荘、グエンダ・ハリディー・リード、

そして、テラスの先にある庭に埋められたヘレン・ハリディーの死体が、

斜めに結ばれるように描かれている。

Harper Collins Publishers 社から出版されている

「スリーピングマーダー」のペーパーバック版の表紙には、

ビル・ブラッグ氏によるイラストが、

毒薬が入った瓶の形に切り取られているものが使用されている。


新婚のグエンダ・ハリデイー・リード(Gwenda Halliday Reed - 21歳)は、夫のジャイルズ(Giles Reed)より一足先に、ニュージーランドを出発して、英国を訪れると、イングランドの南海岸で新居探しを始めた。

まもなく、ディルマス(Dillmouth)においてヴィクトリア朝風のヒルサイド荘(Hillside)を見つけて、一目で気に入った彼女は、早速、その家を購入すると、業者を呼んで、改装工事を進めた。改装工事の間、彼女は、子供部屋だった場所で寝起きをした。

グエンダにとって、ヒルサイド荘は初めての家の筈にもかかわらず、何故か、家の隅々まで全て知り尽くしているような感じがして、次第に不安の思いに囚われていく。更に、業者が古い戸棚を開けると、そこには、彼女が思っていたような模様の壁紙が現れたのである。


その後、夫ジャイルズの従兄弟で、ロンドンに住むレイモンド・ウェスト(Raymond West → 2024年8月12日付ブログで紹介済)夫妻からの招待に応じて、グエンダはロンドンへと出向く。

彼女は、ウェスト夫妻とレイモンドの伯母であるミス・マープルと一緒に、芝居「モルフィ公爵夫人」の観劇に出かけた際、劇中で「女の顔を覆え。目が眩む。彼女は、若くして亡くなった。(Cover her face; mine eyes dzzle; she died young)」と言う台詞を聞いた途端、グエンダは、悲鳴を上げると、劇場から逃げ出してしまう。

自分が狂ったのではないかと思い悩むグエンダは、ミス・マープルに対して、これまでに起きたことを全て、正直に打ち明けた。何故ならば、彼女は、芝居「モルフィ公爵夫人」の台詞を聞いた際、ヒルサイド荘において、ある男が、ヘレン(Helen)と言う名前の金髪の女性の首を締めながら、同じ言葉を漏らしていたことを思い出したのである。


グエンダは、元々、父親が駐在していたインドで生まれたが、母親が亡くなったため、幼い頃から、ニュージーランドに居る母方の伯母に預けられ、育てられた。父親は、母親が無くなった数年後に、他界していた。

グエンダからの話を聞いたミス・マープルは、グエンダが、父親と彼の後妻と一緒に、英国に住んでいたのではないかと示唆して、それが事実であることを突き止める。グエンダの母親の死後、インドから英国へと戻る途中、父親はヘレン・ハリディー(Helen Halliday - 旧姓:ケネディー(Kennedy))と出会い、船上でのロマンスを経て、英国到着後に結婚し、二人は、ヘレンが生まれ育ったディルマスに家(ヒルサイド荘)を借りて住んでいた。グエンダは、18年前のまだ幼い頃、ヒルサイド荘を訪れたことがあったのである。


グエンダは、自分の頭に浮かぶ恐怖のイメージと劇の台詞について、考え込む。果たして、ヘレンを絞殺する男のイメージは、本当の記憶なのだろうか?


彼女の夫であるジャイルズが、ニュージーランドから英国に到着したので、グエンダは、彼と一緒に、この謎を更に調べていこうと決心したのであった。


(55)「モルフィ公爵夫人」のプログラム(playbill for The Duchess of Malfi)



(55)「モルフィ公爵夫人」のプログラム(playbill for The Duchess of Malfi)


夫ジャイルズ・リードの従兄弟に該るレイモンド・ウェスト夫妻からの招待に応じて、ロンドンへと出向いたグエンダ・ハリデイー・リードは、ウェスト夫妻とレイモンドの伯母であるミス・マープルと一緒に、芝居「モルフィ公爵夫人」の観劇に出かけた。

劇中、出演者が「女の顔を覆え。目が眩む。彼女は、若くして亡くなった。」と言うのを聞いた途端、グエンダは、悲鳴を上げて、劇場から逃げ出してしまった。

それは、芝居「モルフィ公爵夫人」中の台詞を聞いた際、ヒルサイド荘において、ある男が、ヘレンと言う名前の金髪の女性の首を締めながら、同じ言葉を漏らしていたことを、彼女が思い出したからであった。


「モルフィ公爵夫人」は、英国のテューダー朝(House of Tudor)末期からステュアート朝(House of Stuart)にかけて活動した劇作家であるジョン・ウェブスター(John Webster:1580年ー1634年)が1614年頃に執筆した悲劇で、彼の代表作の一つである。


(56)青いヤグルマギクの壁紙(wallpaper with blue cornflower)



ジャイルズ・リードと結婚し、夫より一足先に、ニュージーランドを出て、イングランドの南海岸で新居探しを始めたグエンダ・ハリデイー・リードは、ディルマスにおいて、ヴィクトリア朝風のヒルサイド荘を見つけて、一目で気に入ってしまう。

グエンダは、早速、その家を購入すると、業者を呼んで、改装工事を始めた。彼女にとって、ヒルサイド荘は初めての家の筈にもかかわらず、何故か、家の隅々まで全て知り尽くしているような感じがしてならない。業者が古い戸棚を開けると、そこには、何故か、彼女が思っていたような青いヤグルマギクの壁紙が現れたのだ。


(57)庭用噴霧器(garden syringe)



ヘレン・ハリディーの死体を発見するために、警察がヒルサイド荘のテラスの先にある庭を掘り起こしている間、グエンダ・ハリデイー・リードが室内に一人で居ると、真犯人が彼女に近づいて来て、彼女を毒殺しようとする。彼女の毒殺に失敗した真犯人は、次の手段として、首を絞めて、殺害しようとした。

そこへ、石鹸駅が入った庭用噴霧器(花や葉に水を霧状にして散布する機器)を持ったミス・マープルが姿を現して、真犯人の目に向け、噴霧器を噴射し、真犯人の企てを阻止したのである。


(58)サンシキヒルガオ(bindweed)



ヘレン・ハリディーの死体が埋められたヒルサイド荘のテラスの先にある庭には、サンシキヒルガオが咲いている。


                                  

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