2024年5月12日日曜日

ロバート・J・ハリス作「深紅色の研究」(A Study in Crimson by Robert. J. Harris)- その2

英国の Birlinn Ltd から、Polygon Book として
2022年に刊行されている
 ロバート・J・ハリス
作「深紅色の研究」の
ペーパーバック版裏表紙

Cover design by Abigail Salvesen


1942年9月7日、陸軍省(War Office)からの依頼に基づき、ベイカーストリート221B(221B Baker Street → 2014年6月22日 / 6月29日付ブログで紹介済)を出発したシャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンの2人は、クロイドン(Croydon)の飛行場からスコットランドへと向かった。

実は、スコットランド内のある城において、秘密裡に軍事開発が行われていたが、新しい空雷(aerial torpedo)の研究をしていた女性科学者のエルスペス・マックレディー博士(Dr. Elspeth Mac Ready)の部屋から悲鳴が聞こえてきたため、別の博士達がドアを破って、部屋の中に入ったところ、室内には誰も居なかったからである。

翌日(9月8日)の朝、事件をあっさりと解決してしまったホームズは、インヴァネス駅(Inverness Staton)経由、ワトスンと一緒に、ロンドンへと戻って来た。


翌日(9月9日)の早朝(午前5時半過ぎ)、スコットランドヤードのレストレード警部(Inspector Lestrade)が、ベイカーストリート221Bを訪ねて来た。

「残忍な殺人事件が発生した。」と伝えるレストレード警部の依頼に基づき、急いで着替えたホームズとワトスンは、ベイカーストリート221Bの前で待っていた警察車輌に乗り込むと、レストレード警部と一緒に、殺害現場であるコヴェントガーデン(Covent Garden)内のセブンダイヤルズ(Seven Dials)へと向かう。


現場に到着したホームズ達が見たのは、20代の女性の死体で、喉が切られた上に、内臓の一部が持ち攫われていた。

殺害されて居た女性の身元は、以下の通り。


名前:クララ・ベントリー(Clara Bentley)

年齢:25歳

住所:クラーケンウェルガーデンズ31番地(31 Clerkenwell Gardens)- 叔母夫婦であるベリル・ベントリー(Beryl Bentley)とチャールズ・ベントリー(Charles Bentley)と居住。

学歴:Queen Anne High School / Whittingby Secretarial College

職業:Theobald’s Road(現在の地下鉄ホルボーン駅(Holborn Tube Station)近くに所在)沿いの Rialto Cinema の女性案内係 → アシスタントマネージャーへ昇格


映画上映後、彼女は、映写技師(projectionist)のルパート・ジェイムズソン(Rupert Jameson)と一緒に、映画館を施錠すると、帰宅。

ルパート・ジェイムズソンによると、彼女は映画館を出た後、東方面へと向かったとのことだったが、彼女の死体が発見されたセブンダイヤルズは、映画館から西方面にあり、逆方向であった。

一体、彼女は、何故、帰宅方向と全く逆の場所へと向かったのか?


レストレート警部は、ポケットから懐中電灯を取り出すと、周囲の壁を照らした。なんと、煉瓦の壁には、クララ・ベントリーを殺害した犯人による署名なのか、紅いチョークで「血塗れジャック(Crimson Jack)」と書かれていた。


レストレード警部は、ホームズとワトスンの2人に対して、更に驚くべきことを告げる。

8月31日にも、女性の惨殺死体が見つかっていたのである。


名前:マーガレット・ジェイン・ホプキン(Margaret Jane Hopkin)

年齢:46歳


リヴァプール(Liverpool)に出生した彼女は、繊維工場に勤務しており、造船所勤務のウォルター・ブロー(Walter Brough)と結婚。

10年前に、彼女は夫の元を離れ、より良い生活を求めて、ロンドンへと出て来たが、娼婦へと転落。

8月31日の夜、倉庫裏の狭い路地において、彼女の惨殺死体が、灯火管制の夜警によって発見された。


レストレード警部の話を聞いたホームズは、「8月31日と9月8日は、「切り裂きジャック(Jack the Ripper)」事件の第1被害者と第2被害者が発見された日付と、奇しくも一致する。」と告げた。


今回、2人の女性を惨殺した「血塗れジャック」は、「切り裂きジャック」の再来なのであろうか?


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