2022年12月31日土曜日

シャーロック・ホームズの世界<ジグソーパズル>(The World of Sherlock Holmes )- その3

英国の Laurence King Publishing Group Ltd. から出ている「シャーロック・ホームズの世界(The World of Sherlock Holmes)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているシャーロック・ホームズシリーズに登場する人物や物語の舞台となる建物、また、作者であるサー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年-1930年)本人と彼に関連する人物等、50個にわたる手掛かりについて、引き続き、順番に紹介していきたい。

なお、本ジグソーパズル内に描かれているロンドンの建物に関して言うと、実際の位置関係とは大きく異なっているので、誤解がないようにお願いしたい。


(10)ライシアム劇場(Lyceum Theatre)


本ジグソーパズルの中央からやや右下のところに、
ライシアム劇場が描かれている。


ライシアム劇場は、ロンドンのコヴェントガーデン地区(Covent Garden)にあり、
トラファルガースクエア(Trafalgar Square)とシティー(City)を東西に結ぶストランド通り(Strand)と、
北に行くと「ロイヤル・オペラハウス(Royal Opera House)」に至る
ボウウェリントンストリート(Bow Wellington Street)が交差した角に位置している。

ライシアム劇場が重要な役割を果たすのは、「四つの署名(The Sign of the Four → 2017年8月12日付ブログで紹介済)」である。メアリー・モースタンがシャーロック・ホームズの元を訪ねて、風変わりな事件の調査依頼をした際、彼女は「未知の友(Your unknown friend)」から受け取った謎の手紙をホームズと同席していたジョン・H・ワトスンに見せる。その手紙には、以下の内容が書かれていた。

Be at the third pillar from the left outside the Lyceum Theatre tonight at seven o'clock. if you are distrustful bring two friends …

「今夜7時に、ライシアム劇場の場外の左から3本目の柱のところまでお越し下さい。もし御心配であれば、お友達を二人お連れ下さい。」


原作者であるコナン・ドイルが、ホームズとワトスンの2人を、事件の依頼人であるメアリー・モースタンに同行させるために、「二人」を意図的に入れたと思われ、ストーリー的にはやや出来過ぎの感が強いが、メアリー・モースタンからの依頼を受けたホームズとワトスンは、彼女と一緒にライシアム劇場へ出かけ、彼女の「未知の友」に出会うことによって、事件の核心部分に迫るのである。


(11)メアリー・モースタン(Mary Morstan)


ライシアム劇場の前に立つ女性が、
「四つの署名」に登場するメアリー・モースタン。

前述の通り、「四つの署名」における事件の依頼人が、メアリー・モースタンである。

元英国陸軍インド派遣軍の大尉だった彼女の父親アーサー・モースタン(Captain Arthur Morstan)は、インドから英国に戻った10年前に、謎の失踪を遂げていた。彼はロンドンのランガムホテル(Langham Hotel→2014年7月6日付ブログで紹介済)に滞在していたが、メアリー・モースタンが父親の部屋を訪れると、身の回り品や荷物等を残したまま、姿を消しており、その後の消息が判らなかった。そして、6年前から年に1回、「未知の友」を名乗る正体不明の人物から彼女宛に大粒の真珠が送られてくるようになり、今回、その人物から面会を求める手紙が届いたのである。

皆さんがよく御存知の通り、ホームズが事件を解決した後、ワトスンと恋愛関係へ発展して、後にワトスン夫人となる。


(12)レストレード警部(Inspector Lestrade)


本ジグソーパズルの中央下を流れるテムズ河を下る巡視艇の前に立つ人物が、
スコットランドヤードのレストレード警部。


レストレードは、スコットランドヤードの警部で、「緋色の研究(A Study in Scarlet → 2016年7月30日付ブログで紹介済)」に初登場し、以降、数多くの事件において、ホームズの助力を得る。

挿絵画家であるシドニー・エドワード・パジェット
(Sidney Edward Paget:1860年ー1908年)が描く

「レストレード警部」。
(「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」の
「バスカヴィル家の犬(The Hound of the Baskervilles)」より)

本ジグソーパズルの場合、巡視艇に乗って、テムズ河(River Thames)を逃亡する「四つの署名」事件の犯人達を追っているように見受けられるが、実際に、ホームズやワトスンと一緒に、犯人達を追う役目は、レストレード警部ではなく、アセルニー・ジョーンズ警部(Inspector Athelney Jones)が担っている。


(13)ジョナサン・スモール(Jonathan Small)

(14)トンガ(Tonga)


レストレード警部が乗る巡視艇から逃れるように、
テムズ河を下る船の上に、
ジョナサン・スモール(右側の人物)と
トンガ(左側の人物)が載っている。


彼らは、「四つの署名」事件における犯人達で、復讐のために、ショルトー少佐(Major Sholto)の息子で、双子の一人であるバーソロミュー・ショルトー(Bartholomew Sholto)を毒矢で殺害する。物語の終盤、テムズ河を舞台にした追跡劇は、大きな見せ場である。本ジグソーパズルは、その場面を描いている。

厳密に言うと、ジョナサン・スモールの義足は、ジグソーパズルのイラストに描かれているような左足ではなく、コナン・ドイルの原作によると、右足である。


(15)ヒュー・ブーン(Hugh Boone)


レストレード警部が乗る巡視艇の近くのテムズ河沿いで、
ヒュー・ブーンが物乞いをしている。


ヒュー・ブーンは、「唇のねじれた男(The Man with the Twisted Lips)」に登場する物乞いである。


挿絵画家のシドニー・パジェットが描く
「ヒュー・ブーン」。
(「ストランドマガジン」1891年12月号の「唇のねじれた男」より)

本ジグソーパズルの場合、ヒュー・ブーンは、テムズ河近くで物乞いをしているが、実際には、シティー・オブ・ロンドン(City of London → 2018年8月4日 / 8月11日付ブログで紹介済)内にあるスレッドニードルストリート(Threadneedle Street → 2014年10月30日付ブログで紹介済)近辺で物乞いをしている。


(16)エドガー・アラン・ポー(Edgar Allan Poe)


レストレード警部が乗る巡視艇の近くに架かっている橋の上に、
エドガー・アラン・ポーが立っている。

エドガー・アラン・ポー(→ 2017年1月28日付ブログで紹介済)は、米国の小説家/詩人で、かつ、雑誌編集者で、名探偵のC・オーギュスト・デュパン(C. Auguste Dupin)を生み出している。

デュパンが初登場した世界初の推理小説である「モルグ街の殺人(The Murders in the Rue Morgue)」は、ポー自身が編集主筆を務めていた「グラハムズ・マガジン(Graham's Magazine)」の1841年4月号に掲載された。「グラハムズ・マガジン」は、米国フィラデルフィア(Philadelphia)のジョージ・レックス・グラハム(George Rex Graham:1813年ー1894年)によって1841年に創刊され、ポーが初代の編集主筆を勤めたが、残念ながら、1858年に廃刊となった。

デュパンが活躍するのは、他には、以下の短編小説の2編。

(1)「マリー・ロジェの謎(The Mystery of Marie Roget)」(1842年ー1843年)

(2)「盗まれた手紙(The Purloined Letter)」(1844年)

ポーが執筆して、これら3作品に登場させたデュパンは、コナン・ドイルが半世紀後に生み出したホームズの原型となったのである。ただし、「緋色の研究」事件において、ホームズは、デュパンのことを酷評している。

上記の3作品に加えて、エドガー・アラン・ポーは、ゴシック風の恐怖小説である「アッシャー家の崩壊(The Fall of the House of Usher)」(1839年)や「黒猫(The Black Cat)」(1843年)、暗号小説の草分けである「黄金虫(The Gold-Bug)」、そして、詩「大鴉(The Raven)」(1845年)等の作者として非常に有名である。


(17)ストランドマガジン(The Strand Magazine)


本ジグソーパズルの中央下にあるテムズ河沿いの道で、
売り子が「ストランドマガジン」を売っている。


「ストランドマガジン」は、
バーリーストリート12番地(12 Burleigh Street →
2014年8月9日付ブログで紹介済)の建物に入居していた。


コナン・ドイルは、ホームズが活躍する長編第1作目の「緋色の研究」(1887年)と第2作目の「四つの署名」(1890年)を発表したものの、残念ながら、大きな評判にはならなかった。

コナン・ドイルとしては、自分の文筆の才能は、歴史小説にあると考えて、生活費稼ぎのために、得意の短編を書き続けていたが、ある時、彼はあることを思い付いた。当時としては珍しい「読み切り連載」の手法であった。これならば、「緋色の研究」と「四つの署名」に登場させたシャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンを上手い具合に使えるのである。

良い考えを思い付いたコナン・ドイルは、ホームズとワトスンを主人公にして、2週間で「ボヘミアの醜聞」と「赤毛組合(The Red-Headed League → 2022年9月25日 / 10月9日 / 10月11日 / 10月16日付ブログで紹介済)の短編2作を書き上げると、創刊後間もない「ストランドマガジン」宛に送付した。

他の雑誌との差別化に苦心していた「ストランドマガジン」の編集部は、コナン・ドイルが送った2作を受け取ると、彼のアイデアに飛び付き、早速、彼に対して、4作を追加した合計6作の短編を執筆するよう、依頼してきたのである。

そして、「ストランドマガジン」の1891年7月号に、「ボヘミアの醜聞」が掲載されると、シドニー・エドワード・パジェットによる挿絵の効果も相まって、ホームズ作品は、読者の熱狂を以って受け入れられ、爆発的な人気へと繋がっていった。


(18)シドニー・エドワード・パジェット(Sidney Edward Paget)


「ストランドマガジン」の売り子の後ろにある建物の屋上で、
シドニー・エドワード・パジェットが、挿絵を描いている。


「ストランドマガジン」の1891年7月号に、コナン・ドイルによる「ボヘミアの醜聞」が掲載され、ホームズ作品が、読者の熱狂を以って受け入れられ、爆発的な人気へと繋がっていった要因の一つとして、シドニー・エドワード・パジェット(Sidney Edward Paget:1860年 - 1908年)による挿絵の効果も相まったと言える。


(19)ウィリアム・ユワート・グラッドストン(Willaim Ewart Gladstone)


国会議事堂の左横に立つ人物が、
自由党の党首として、英国首相を4回務めた
ウィリアム・ユワート・グラッドストン。

ウィリアム・ユワート・グラッドストンの銅像 -
ストランド通り(Strand)がフリートストリート(Fleet Street)へと変わる道の中央の浮島にある
セント・クレメント・デーンズ教会(St. Clement Danes Church)の前に、
この銅像は建っている。


ウィリアム・ユワート・グラッドストン(1809年ー1898年 → 2022年8月22日 / 8月24日付ブログで紹介済)は、英国の政治家で、ヴィクトリア朝の中期から後期にかけて、つまり、ホームズが活躍した頃に、自由党の党首として、英国首相を4回務めている。

1867年末に、ウィリアム・ユワート・グラッドストンは、自由党党首となり、1868年11月の総選挙で勝利した後、


・第一次グラッドストン内閣(1868年-1874年)

・第二次グラッドストン内閣(1880年-1885年)

・第三次グラッドストン内閣(1886年)

・第四次グラッドストン内閣(1892年ー1894年)


と、首相を4回務め、特に、前半の2回に関しては、保守党の党首である初代ビーコンズフィールド伯爵ベンジャミン・ディズレーリ(Benjamin Disraeli, 1st Earl of Beaconsfield:1804年-1881年 → 2022年8月14日 / 8月16日付ブログで紹介済)と交互に首相に就任し、ヴィクトリア朝の政党政治を代表する人物となったのである。


2022年12月30日金曜日

シャーロック・ホームズの世界<ジグソーパズル>(The World of Sherlock Holmes )- その2

英国の Laurence King Publishing Group Ltd. から出ている「シャーロック・ホームズの世界(The World of Sherlock Holmes)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているシャーロック・ホームズシリーズに登場する人物や物語の舞台となる建物、また、作者であるサー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年-1930年)本人と彼に関連する人物等、50個にわたる手掛かりについて、今回から順番に紹介していきたい。

なお、本ジグソーパズル内に描かれているロンドンの建物に関して言うと、実際の位置関係とは大きく異なっているので、誤解がないようにお願いしたい。


(1)ベイカーストリート221B(221B Baker Street → 2014年6月22日付ブログで紹介済)


シャーロック・ホームズと
ジョン・H・ワトスンが共同生活を送った
「ベイカーストリート221B」が、
ジグソーパズルの中央に位置している。

「ベイカーストリート221B」に該る建物には、
以前、住宅金融専門会社のアビー・ナショナル(Abbey National)が入居していたが、
現在は、フラットに建て替えられている。
→ 2014年6月22日付ブログで紹介済。


皆さんがよく御存知の通り、本ジグソーパズルの中央に描かれている「ベイカーストリート221B」は、家主であるハドスン夫人から借りて、シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンが共同生活を送っている場所である。

(2)シャーロック・ホームズ(Sherlock Holmes)

(3)ジョン・H・ワトスン博士(Dr. John H. Watson)

(4)ハドスン夫人(Mrs. Hudson)


「ベイカーストリート221B」の部屋内には、
ホームズ、ワトスンとハドスン夫人が描かれている。

「ベイカーストリート221B」の部屋をルーペで拡大した中に、ホームズ、ワトスンとハドスン夫人の3人が見受けられる。


(5)セバスチャン・モラン大佐(Colonel Sebastian Moran)


「ベイカーストリート221B」の前には、
空気銃を持ったセバスチャン・モラン大佐が、
ホームズの命を狙うべく、待ち構えている。


「ベイカーストリート221B」の前に停まっている二輪馬車の後方に、空気銃を抱えたセバスチャン・モラン大佐が立っている。彼は、「犯罪界のナポレオン(Napoleon of crime)」と呼ばれるジェイムズ・モリアーティー教授(Professor James Moriarty)の右腕で、「空き家の冒険(The Empty House → 2022年5月27日 / 7月1日 / 7月10日 / 7月17日 / 7月24日 / 7月29日 / 8月3日 / 8月6日付ブログで紹介済)」)」に登場する。

挿絵画家であるシドニー・エドワード・パジェット
(Sidney Edward Paget:1860年ー1908年)が描く

「セバスチャン・モラン大佐」。
(「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」
1903年10月号の「空き家の冒険」より)

(6)マイクロフト・ホームズ(Mycroft Holmes)


「ディオゲネスクラブ」が入る建物の横に、
シャーロック・ホームズの実兄である
マイクロフト・ホームズが立っている。


本ジグソーパズルの左下の方、「ベイカーストリート221B」の部屋を拡大しているループの下辺りの郵便ポストの左側に、マイクロフト・ホームズが立っている。彼は、7歳違いのシャーロックの実兄で、表向きは、英国政府のいくつかの省の会計監査役を務めているが、実態としては、英国王室や英国政府に関する公にできない問題を対処する役目を担っている。シャーロックは、兄のマイクロフトのことを、「英国政府そのもの(He ‘occaisionally is the government’.)と呼んでいる。マイクロフト・ホームズは、「ギリシア語通訳(The Greek Interpreter)」、「最後の事件(The Final Problem)」や「ブルース・パーティントン型設計図(The Bruce-Partington Plans)」等に登場する。

挿絵画家のシドニー・パジェットが描く
「マイクロフト・ホームズ」。
(「ストランドマガジン」1893年9月号の
「ギリシア語通訳」より)

(7)ディオゲネスクラブ(Diogenes Club)


マイクロフト・ホームズが創設した「ディオゲネスクラブ」

「ディオゲネスクラブ」は架空の場所であるが、
ホームズシリーズの作者であるコナン・ドイルが会員だった
「アセニアムクラブ(Athenaeum Club)」が、
そのモデルになっているのではないかと思われる。
アセニアムクラブ」が入居する建物は、パル・マル通り107番地(107 Pall Mall)に所在しており、
奇しくも、「ディオゲネスクラブ」と同じパル・マル通り(Pall Mall)にある。
→ 2016年11月27日付ブログで紹介済。



「ディオゲネスクラブ」は、シャーロック・ホームズの実兄であるマイクロフト・ホームズが創設したクラブで、クラブ内では、来客室を覗いて、会話が禁じられている。「ギリシア語通訳」において、ホームズとワトスンは、「ディオゲネスクラブ」に呼び出され、マイクロフト・ホームズから事件の依頼を受ける。なお、「ディオゲネスクラブ」は、架空の場所で、実在していない。

(8)クライテリオンバー(Criterion Bar)


セントバーソロミュー病院において同僚だった
ワトスンとスタンフォードの二人が
数年ぶりに再会した場所であるクライテリオンバー

「クライテリオンバー」は、実在の場所で、
ピカデリーサーカス(Piccadilly Circus)内に所在している。
→ 2014年6月8日付ブログで紹介済。

二次アフガニスタン戦争に軍医として従軍していたワトスンは負傷して、英国のポーツマス(Portsmouth)に帰還した。英国内に親類縁者が全くいないワトスンは、ロンドンにやって来て、ストランド通り(Strand)のホテルに滞在する。だが、英国政府から支給される1日あたり11シリング6ペンスの恩給だけで、ホテルでの滞在を続けていくのは、ワトスンにとって大きな負担となりつつあった。そんな不安を感じつつあったワトスンは、ある日、「クライテリオンバー」で誰かに肩をたたかれた。それは、ワトスンが「聖バーソロミュー病院(St. Bartholomew's Hospital)」に勤務していた際、彼の外科手術助手(dresser)だったスタンフォード青年であった。このスタンフォード青年との再会を通して、ワトスンは聖バーソロミュー病院でシャーロック・ホームズと知り合い、「ベイカーストリート221B」での共同生活につながっていく。「クライテリオンバー」は、「緋色の研究(A Study in Scarlet)」の舞台の一つで、実在の場所である。

(9)スタンフォード(Stamford)


クライテリオンバーの入り口の左横に置かれた
テーブルに座っているのが、スタンフォードである。


前述の通り、ワトスンが「聖バーソロミュー病院」に勤務していた際、彼の外科手術助手だった人物で、「ベイカーストリート221B」でのホームズとワトスンの共同生活を取り持つ重要な役割を担う。彼は、「緋色の研究」に登場する。


2022年12月29日木曜日

シャーロック・ホームズの世界<ジグソーパズル>(The World of Sherlock Holmes )- その1

英国の Laurence King Publishing Group Ltd. から2020年に出ている
「シャーロック・ホームズの世界」と言うジグソーパズル(1000ピース)

英国の Laurence King Publishing Group Ltd. より、一昨年(2020年)に、「シャーロック・ホームズの世界(The World of Sherlock Holmes)」と言うジグソーパズルも出ているので、紹介したい。


12月26日(月)の夕方から12月27日(火)の夕方にかけて進めた過程(その1)

12月26日(月)の夕方から12月27日(火)の夕方にかけて進めた過程(その2)

12月26日(月)の夕方から12月27日(火)の夕方にかけて進めた過程(その3)


シャーロック・ホームズと相棒のジョン・H・ワトスンが活躍したロンドン他を、ロンドンをベースとするイラストレーターの Mr. Doug John Miller が描いたものが、ジグソーパズル(1000ピース - 縦:約50㎝ / 横:約70㎝)となっている。

ロンドン以外にも、以下の4つの場所が、画面の四隅に描かれている。


(1)左上:ダートムーア(Dartmoor)- 「名馬シルヴァーブレイズ(Silver Blaze)」事件と「バスカヴィル家の犬(The Hound of the Baskervilles)」事件が、ダートムーア内において発生。


(2)左下:サリー州(Surrey)- 「まだらの紐(The Speckled Band)」事件と「孤独な自転車乗り(The Solitary Cyclist)」事件が、サリー州内において発生。


(3)右上:ライヘンバッハの滝(Reichenbach Falls)- 「最後の事件(The Final Problem)」が、ライヘンバッハの滝において決着。


(4)右下:サセックス州(Sussex)- 「マスグレイヴ家の儀式書(The Musgrave Ritual)」事件と「ブラックピーター(The Black Peter)」事件が、サセックス州内において発生。


ジグソーパズルの中央には、ベイカーストリート221B
(221B Baker Street → 2014年6月22日付ブログで紹介済)の建物と
その内に居るシャーロック・ホームズ、ジョン・H・ワトスンおよびハドスン夫人が描かれている。


本ジグソーパズルのイラスト内には、ホームズシリーズに登場する人物や物語の舞台となる建物、また、作者であるサー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年-1930年)本人と彼に関連する人物等、50個にわたる手掛かりが散りばめられているので、次回以降、順番に紹介していきたい。


2022年12月28日水曜日

アガサ・クリスティーの世界<ジグソーパズル>(The World of Agatha Christie )- その3

英国の Orion Publishing Group Ltd. から出ている「アガサ・クリスティーの世界(The World of Agatha Christie)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)の生涯や彼女が執筆した作品等に関連した90個の手掛かりについて、前回に続き、紹介していきたい。


(10)Kildonan Castle 号(船舶の名前)



大英帝国博覧会(Empire Exhibition)開催のためのミッションを帯びた夫アーチボルド・クリスティー大尉(Captain Archibald Christie:1889年ー1962年)に帯同して、アガサ・クリスティーは、1919年に生まれた娘のロザリンド(Rosalinnd)を母親のクララ・ベーマーに預けると、1922年1月、約10カ月間にわたる世界一周旅行(Grand Tour)へと出発した。まず最初に、彼女達は、Kildonan Castle 号に乗船して、南アフリカへ向かった。


(11)サーフボード



1922年2月に南アフリカに到着したアガサ・クリスティーは、そこでサーフィンを学び、楽しんだ。


(12)お土産(Souvenirs)



南アフリカを訪問した後、彼女達は、ボツワナ(Botswan)、ジンバブエ(Zimbabwe)、そして、ザンビア(Zambia)へ移動して、ザンビアにおいて、キリンのお土産を購入した。


(13)ハワイでのサーフィン



アガサ・クリスティー達は、1922年7月にオーストラリア(Australia)とニュージーランド(New Zealand)を訪問した後、同年8月にハワイ(Hawaii)に到着した。彼女は、ハワイでも、サーフィンを楽しんだ。


(14)ナイアガラの滝(Niagara Falls)



アガサ・クリスティー達は、ハワイの後、カナダへと向かい、ナイアガラの滝を訪れ、最後に、米国のニューヨークを訪問した。


(15)旅行鞄



この世界一周旅行が、アガサ・クリスティーにとって、生涯にわたり、旅行への楽しみを決定付けたのである。


(16)ティザン(Tisanes)



世界一周旅行から戻ったアガサ・クリスティーは、エルキュール・ポワロの長編第2作目に該る「ゴルフ場殺人事件(The Murder on the Link)」を発表する。「ティザン」は、ポワロが好むお茶である。


(17)クレーム・ド・マント(Creme de menthe)



「クレーム・ド・マント」も、エルキュール・ポワロが好む飲み物の一つで、緑色をした薄荷味のリキュールである。


(18)トランプタワー(Card houses)



エルキュール・ポワロは、事件を推理する際、トランプでタワーをつくり、精神を集中させる。


(19)革靴(Patent leather footwear)



エルキュール・ポワロが好んで履く革靴も、90個の手掛かりの一つとして、描かれている。


(20)モーリス・カウリー車(Morris Cowley)



1922年の世界一周旅行でインスピレーションを得たアガサ・クリスティーは、1924年に「茶色の服の男(The Man in the Brown Suit → グラフィックノベル版については、2021年1月18日付ブログで紹介済)」を発表した。この出版により、まとまった収入を得た彼女は、彼女にとって最初の車となるモーリス・カウリー車を購入する。

モーリス社は、1910年にウィリアム・モーリスが自転車製造メーカーとして創業した会社で、創業後、自動車の製造へと向かい、1913年、英国オックスフォード(Oxford)のカウリー(Cowley)に自動車製造工場を建設した。なお、モーリス・カウリー車は、1915年から1935年にかけて製造された車種である。


また、アガサ・クリスティーは、上記のまとまった収入を使って、ロンドン近郊の田園都市であるサニングデール(Sunningdale)の家を購入して、彼女の処女作で、エルキュール・ポワロの長編第1作目でもある「スタイルズ荘の怪事件(The Mysterious Affairs at Styles)」に因んで、「スタイルズ荘(Styles)」と命名している。


2022年12月27日火曜日

アガサ・クリスティーの世界<ジグソーパズル>(The World of Agatha Christie )- その2

英国の Orion Publishing Group Ltd. から出ている「アガサ・クリスティーの世界(The World of Agatha Christie)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)の生涯や彼女が執筆した作品等に関連した90個の手掛かりについて、今回から順番に紹介していきたい。


(1)スケート靴(Skating)



1890年9月15日、米国人の実業家である父親のフレデリック・アルヴァ・ミラー(1846年-1901年)と彼の従妹である母親のクララ・ベーマー(1854年ー1926年)の次女として、英国南西部にあるデヴォン州(Devon)トーキー(Torquay)に出生したアガサは、少女時代、兄や姉のように正式の学校で学ぶのではなく、母親から直接教育を受けた。彼女は、海岸で泳ぎや遊歩桟橋でスケート等をして、楽しんだ。


(2)看護師(Voluntary Aid Detachment Nurse (VAD))



1914年にアーチボルド・クリスティー大尉(Captain Archibald Christie:1889年ー1962年)と結婚したアガサは、第一次世界大戦中(1914年ー1918年)、Voluntary Aid Detachment Nurse (VAD) として働いた。


(3)トーキータウンホール(Torquay Town Hall)


第一次世界大戦中、トーキーのタウンホールが、臨時病院として接収され、アガサ・クリスティーは、VAD Nurse として、ここで働いた。


画面左端に掛けられている
イラストが、
「トーキータウンホール」。


(4)毒薬(Poison)


第一次世界大戦中、アガサ・クリスティーは、薬剤師の助手としても働き、そこで毒薬の知識を得た。



(5)ノート(Notebook)


姉から勧められて、アガサ・クリスティーは、推理小説を書き始めた。彼女は、ノートに筋立て、登場人物やアイデア等をいろいろと書き付けた。



(6)口髭(Moustaches)


アガサ・クリスティーが創造したベルギー人の名探偵エルキュール・ポワロのトレードマークである。



(7)エルキュール・ポワロ(Herucule Poirot)


数々の出版社で不採用になった後、アガサ・クリスティーは、1920年に長編「スタイルズ荘の怪事件(The Mysterious Affairs at Styles)」を出版して、推理作家としてデビューする。本作品が、ポワロが初登場する作品である。



(8)ストリキニーネ(Strychnine)


ポワロが初登場した「スタイルズ荘の怪事件」において、ストリキニーネが、スタイルズ荘(Styles)の女主人であるエミリー・イングルソープ(Emily Inglethorp)を殺害する毒薬として、使用されている。


画面中央に置かれているのが、
ストリキニーネが入った小瓶。


(9)連合国側の情勢にとって極めて重要する機密書類(Papers)


画面右端に置かれたのが、
「秘密機関」において、争奪戦の対象となる重要書類。


「スタイルズ荘の怪事件」に続いて、アガサ・クリスティーは、1922年に長編第2作目「秘密機関(The Secret Adversary)」を発表する。本作品において、トマス・ベレズフォード(Thomas Beresford - 愛称:トミー(Tommy))/ プルーデンス・カウリー(Prudence Cowley - 愛称:タペンス(Tuppence)が探偵役を務め、「ルシタニア号(Lusitania)」により、米国から英国へと運ばれる途中で、行方不明となった連合国側の情勢にとって極めて重要する機密書類の在り処を探すことになる。