2022年6月24日金曜日

ジェイムズ・ラブグローヴ作「シャーロック・ホームズ / 悪夢の塊」(Sherlock Holmes : The Stuff of Nightmares by James Lovegrove) - その3

英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から2013年に出版された
ジェイムズ・ラブグローヴ作「シャーロック・ホームズ / 悪夢の塊」の表紙
(Images : Dreamstime / Shutterstock / funnylittlefish)


読後の私的評価(満点=5.0)


(1)事件や背景の設定について ☆☆☆(3.0)


ロンドン市内を襲う爆弾事件、コシュマー男爵(Baron Cauchemar)とドゥ・ヴィルグラン子爵(Vicomte de Villegrand)を取り巻く因縁と復讐劇、そして、ヴィクトリア女王(Queen Victoria → 2017年12月10日 / 12月17日付ブログで紹介済)が乗った列車を狙うドゥ・ヴィルグラン子爵とそれを防ごうとするシャーロック・ホームズとコシュマー男爵達の闘いと、内容的には、なかなかの派手さを有しているが、物語の終盤、話がかなり荒唐無稽になってしまい、推理小説という物語としての綺麗な着地点をやや失っている感じが強い。


(2)物語の展開について ☆☆☆(3.0)


ウォータールー駅(Waterloo Station → 2014年10月19日付ブログで紹介済)での爆弾事件から始まり、テムズ河(River Thames)の係留地でのホームズ / ジョン・H・ワトスンとコシュマー男爵との出会い、ハムステッド地区(Hampstead → 2018年8月26日付ブログで紹介済)でのホームズとドゥ・ヴィルグラン子爵の決闘等、物語の見せ場は多い。ただし、物語の終盤、ヴィクトリア女王の命を狙うドゥ・ヴィルグラン子爵とそれを防ごうとするホームズ、ワトスンやコシュマー男爵の闘いが、当時の状況からすると、あまりにも荒唐無稽であり、SFぽくなり過ぎていて、正直ベース、物語にあまり入り込めない。


(3)ホームズ / ワトスンの活躍について ☆☆半(2.5)


ホームズ達が活躍する場面は、それなりにあるものの、この物語は、もう一人の主人公であるコシュマー男爵によるドゥ・ヴィルグラン子爵への復讐劇がメインであり、特に、物語の終盤は、話が荒唐無稽になり過ぎて、ホームズの活躍が制限されてしまっている。コシュマー男爵が活躍する場面が必要なのは理解するものの、個人的には、ホームズの知力を以って、ドゥ・ヴィルグラン子爵によるヴィクトリア女王殺害計画を未然に防ぐような流れにして欲しかった。


(4)総合評価 ☆☆半(2.5)


話としては、全体的に、それなりに楽しめるものの、繰り返しになるが、物語の終盤、コシュマー男爵とドゥ・ヴィルグラン子爵の闘いが、当時にしては、荒唐無稽になり過ぎてしまい、フィクションとしても、正直、筋に入り込み難い。物語のもう一人の主人公であるコシュマー男爵を重視する必要はあるものの、金属のマスクを被り、金属の装甲をその身に纏うという設定自体から、ホームズものにはやや馴染みにくく、そのため、ホームズものとして、最も重要な知的な対決がなくなってしまったのが、非常に残念である。



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