2021年10月24日日曜日

ジョージ・マン作「シャーロック・ホームズ / 精神の箱」(Sherlock Holmes : The Spirit Box by George Mann) - その1

英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から
2014年に出版された
ジョージ・マン作
「シャーロック・ホームズ / 精神の箱」の表紙
(Images : Dreamstime / Shutterstock / funnylittlefish)


本作品「シャーロック・ホームズ / 精神の箱」(Sherlock Holmes / The Spirit Box)」は、英国リンカンシャー州(Lincolnshire)出身の作家であるジョージ・マン(George Mann:1978年ー)によって、2014年に発表された。

ジョージ・マンは、ヴィクトリア朝時代を舞台に、サー・モーリス・ニューベリー(Sir Maurice Newbury)とヴェロニカ・ホベス嬢(Miss Veronica Hobbes)が活躍する Newbury & Hobbes シリーズ(2008年ー2013年)や The Ghosts シリーズ(2010年ー2017年)等で、人気がある。


舞台は、1915年の夏のロンドン。第一次世界大戦(1914年ー1918年)が始まり、ロンドンは、ドイツ軍の飛行船ツェッペリン(Zeppelin)による爆撃の脅威に曝されていた。

ジョン・H・ワトスン(以下、ワトスン)は、ロンドンの戦火を逃れて、1ヶ月近く、田舎に疎開していた。一方で、彼は、ワトスン家で残された唯一の肉親である甥(ジョン・ワトスンの亡くなった兄の息子)のジョーゼフ・ワトスン(Joseph Watson)を、フランス戦線で亡くしていた。甥の戦死を知らせる電報を受け取った以降、1週間程、ワトスンは、何もする気力がなかった。


そんなある日、カーター(Carter)と名乗る若い男性が、ワトスンの家を訪ねて来る。シャーロック・ホームズの兄であるマイクロフト・ホームズ(Mycroft Holmes)の使いでやって来たと言う。ワトスンは、カーターが運転する車に乗せられて、マイクロフトの指示に従い、ヴィクトリア駅(Victoria Station)へと向かった。

カーターの説明によると、ブライトン(Brighton)発で、午後2時にヴィクトリア駅に到着予定の列車に乗っているある人物を出迎える、とのこと。一等車から降りて来たのは、シャーロック・ホームズで、マイクロフトによって、引退先の南イングランドから呼び戻されたのである。


車中で、シャーロック・ホームズ(以下、ホームズ)は、ワトスンに対して、「マイクロフトから、次の3つのケースを調査するよう、指示を受けた。」と告げる。


(1)英国陸軍のジョン・カミンズ大尉(Captain John Cummins)が、ドイツへの降伏を頑強に力説した後、ロンドン動物園(London Zoo)の虎の檻の中に身を投げたケース(虎に喉を食い破られて死亡)

(2)有名な女性参政権論者のメアリー・テンプル(Mary Temple)が、ドイツ軍との戦争を断念するよう、タイムズ紙(The Times)に寄稿した翌日、地下鉄の駅構内で列車の前に転落したケース(列車に右足付け根を轢かれて死亡)

(3)国会議員のハーバート・グランジ(Herbert Grange)が、議会でドイツ側に肩入れする演説を行った後、テムズ河(River Thames)に投身したケース(テムズ河で溺死)


そして、ホームズとワトスンの二人を乗せた車は、死体安置所へと向かった。

死体安置所で、ホームズ達は、スコットランドヤードのギディオン・フォルクス警部(Inspector Gideon Foulkes)の出迎えを受ける。ホームズ達は、早速、問題の3人の死体を検分した。

3人が亡くなる前の事情について、フォルクス警部からの説明を受けたホームズは、「ジョン・カミンズ大尉は自殺、メアリー・テンプルは事故死。ただし、ハーバート・グランジ議員の場合は、殺人の疑いがある。これが、マイクロフトが自分に捜査してほしいと思っている件だ。」と告げる。フォルクス警部は、ホームズ達に対して、「ハーバート・グランジ議員は、テムズ河に投身する前に、陸軍省(War Office - 1684年から1964年までの間に存在した英国陸軍を統括する英国の行政機関)において、ロンドンに定住しているドイツ人達への聴取を行っていた。」と説明する。

これを聞いたホームズ達は、次に陸軍省へと向かった。


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