2025年12月3日水曜日

エドガー・アラン・ポー作「赤死病の仮面」<小説版>(The Masque of the Red Death by Edgar Allan Poe )- その3

国の Penguin Books Ltd. から2008年に出版された
Penguin Readers シリーズの1冊である
エドガー・アラン・ポー作「黒猫とその他の物語」のうち、
「赤死病の仮面」に付された挿絵(その2)
Illustration by David Cuzik -
立て籠もった城砦内において、国王プロスペロウが開催した仮面舞踏会は、
深夜まで続き、最も奥にある黒い部屋に吸えられた黒壇の時計が12時を告げる。
その時、仮面舞踏会の参加者達は、奇妙な仮装をした人物が自分達の中に紛れ込んでいることに気付く。

 米国の小説家/詩人で、かつ、雑誌編集者で、名探偵の C・オーギュスト・デュパン(C. Auguste Dupin → 2017年12月4日付ブログで紹介済)を生み出していたエドガー・アラン・ポー(Edgar Allan Poe:1809年ー1849年 → 2022年12月31日付ブログで紹介済)が米国の雑誌である「グラハムズ マガジン(Graham's Magazine)」の1842年5月号に発表した短編「赤死病の仮面The Masque of the Red Death)」の場合、ある国において、「赤死病(Red Death - ひとたび罹患すると、まず最初に、胃に焼けるような痛みを感じ、続いて、眩暈が起こり、最後には、全身から血が吹き出して、死に至ると言う非常に恐ろしい疫病)」と呼ばれる疫病が至るところで蔓延している状況から、その物語が始まる。

「赤死病」により国内の半分の人々が亡くなると、勇敢で賢明な国王プロスペロウ(Prince Prospero)は、疫病の魔の手から逃れるために、健康な臣下達と友人達の千人を引き連れて、都市を離れると、森の中に所在し、周囲を高くて強固な城壁が取り巻く城砦の奥に立て籠もった。

城砦外では、疫病が引き続き猛威を振るうのを余所に、城砦内では、完全に安心しきった国王プロスペロウと友人達は、踊り子や音楽家を呼んで、ワインを飲み、食事を楽しみ、饗宴の日々を送り、5ヶ月が経過する。城砦外では、あいかわらず、「赤死病」が蔓延したままだった。

饗宴に耽る国王プロスペロウは、彼の友人達のために、仮面舞踏会(masquerade ball)を開催することを思い立つ。

仮面舞踏会の会場は、城砦内でも、非常に奇妙なつくりになっていて、7つの部屋が続きの間として不規則に繋がっていた。更に、7つの部屋のそれぞれが、壁一面、一色に塗られており、窓に嵌め込まれたステンドグラスも、同じ色になっていた。


*1番目の部屋:青色

*2番目の部屋:紫色

*3番目の部屋:緑色

*4番目の部屋:オレンジ色

*5番目の部屋:白色

*6番目の部屋:黄色


ところが、最も奥にある部屋だけは例外で、壁の色は黒色に塗られているが、窓のステンドグラスは、血のような赤色だった。そのため、その不気味な奥の部屋まで足を踏み入れようとする者は、誰も居なかったのである。


国王プロスペロウが開催した仮面舞踏会は、深夜まで続き、最も奥にある黒い部屋に吸えられた黒壇の時計が12時を告げた時、仮面舞踏会の参加者達は、奇妙な仮装をした人物が自分達の中に紛れ込んでいることに気付く。

その人物は、なんと、全身に死装束を纏い、顔には不気味な死者の仮面を付けていた。更に、「赤死病」の症状を模す化のように、仮面にも、衣装にも、赤い斑点がいくつも散っていたのである。


その仮装を見て、激怒した国王プロスペロウは、謎の人物を追いかけ、6つの部屋を通り抜けて、最も奥にある黒い部屋まで追い詰めると、謎の人物に短剣を突き立てようとした。ところが、その謎の人物が振り返り、国王プロスペロウと対峙した途端、国王プロスペロウは、絨毯の上に倒れ込んで、急死してしまう。


そこで、仮面舞踏会の参加者達が勇気を振り絞って、謎の人物の仮装を剥ぎ取ってみると、驚いたことに、その下には、何も実体がなかったのである。

この時、誰もが、「赤死病」が城砦内に入り込んでいることが判った。(Everyone understood that the Red Death was among them.)

そして、仮面舞踏会の参加者達は、次々と「赤死病」に罹患して、死を迎える。

最後の一人が倒れ込むと、ランプの灯りが消え、時計も止まってしまい、そして、静寂と暗闇が城砦内を満たしたのだった。(And everything was silence and darkness.)


英国の Penguin Books Ltd. から2008年に出版された
Penguin Readers シリーズの1冊である
エドガー・アラン・ポー作「黒猫とその他の物語」のうち、
「赤死病の仮面」に付された挿絵(その3)
Illustration by David Cuzik -
全身に死装束を纏い、顔には不気味な死者の仮面を付けた謎の人物に対峙した
国王プロスペロウが急死した後、
仮面舞踏会の参加者達が勇気を振り絞って、謎の人物の仮装を剥ぎ取ってみると、
不可思議なことに、その下には、何も実体がなかったのである。

エドガー・アラン・ポー作「赤死病の仮面」に出てくる「赤死病」は、ペストである「黒死病」を想起させるが、エドガー・アラン・ポーは、1832年にコレラが流行した際に、フランスのパリにおいて開催された舞踏会から着想を得たと言われている。

それに加えて、エドガー・アラン・ポーの義母であるフランセス・アラン、実兄のウィリアム・ヘンリー・レオナルド・ポー(William Henry Leonard Poe:1807年ー1831年)、そして、妻のヴァージニア・エリザ・クレム(Virginia Eliza Clemm:1822年-1847年)が結核のために亡くなっていることも、影響を与えているものと思われる。


「赤死病の仮面」が「グラハムズ マガジン(Graham's Magazine)」の1842年5月号に発表された際、タイトルは「The Mask of the Red Death: A Fantasy」であったが、その後、「ブロードウェイ ジャーナル(Broadway Journal)」の1845年7月号に改訂版が掲載された際に、タイトルが「The Masque of the Red Death」へ変更されている。

このタイトル変更(Mask → Masque)に伴い、立て籠もった城砦内で国王プロスペロウが開催した「仮面舞踏会」がより強調されている。


2025年12月2日火曜日

エルキュール・ポワロの世界 <ジグソーパズル>(The World of Hercule Poirot )- その16A

英国の Harper Collins Publishers 社から以前に出版されていた
アガサ・クリスティー作「ブラックコーヒー」の
ペーパーバック版の表紙 
-
科学者のサー・クロード・エイモリー(Sir Claud Amory)が研究していた
新しい原子爆発の方程式が盗まれたことに端を発して、
彼が毒殺される事件が発生する。
そのため、当
ペーパーバック版表紙には、
原子モデルが描かれている。

英国の Orion Publishing Group Ltd. から2023年に発行されている「エルキュール・ポワロの世界(The World of Hercule Poirot)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているエルキュール・ポワロシリーズの登場人物や各作品に関連した112個の手掛かりについて、引き続き、紹介したい。

前回に引き続き、各作品に出てくる登場人物、建物や手掛かり等が、その対象となる。


ジグソーパズル「エルキュール・ポワロの世界」の完成形
<筆者撮影>


(30)ブラックコーヒー(black coffee)



ジグソーパズルの下段中央にある長椅子の右端に座る男性が、ブラックコーヒーを飲んでいる。


(31) 原子爆発の方程式(chemical formula)



ジグソーパズルの中段の一番左手にあるテーブルの上に、原子爆発の方程式が書かれた紙が、上から2番目に置かれている。


これらから連想されるのは、アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1930年に発表した戯曲「ブラックコーヒー(Black Coffee)」である。


エルキュール・ポワロは、
ジグソーパズル「エルキュール・ポワロの世界」の中央に立っている。
<筆者撮影>


「ブラックコーヒー」の場合、エルキュール・ポワロ(Hercule Poirot → 2025年10月11日付ブログで紹介済)が探偵役を務め、アーサー・ヘイスティングス大尉(Captain Arthur Hastings → 2025年10月12日付ブログで紹介済)とスコットランドヤードのジャップ警部(Inspector Japp → 2025年10月24日付ブログで紹介済)も登場する。


アーサー・ヘイスティングス大尉は、
ジグソーパズル「エルキュール・ポワロの世界」の中央に立つ
エルキュール・ポワロの左斜め後ろに居る。

<筆者撮影>


ジェイムズ・ハロルド・ジャップ警部は、
ジグソーパズル「エルキュール・ポワロの世界」の中央に立つ
エルキュール・ポワロの右斜め後ろの位置に立っている。

<筆者撮影>


アガサ・クリスティーは、1929年に戯曲「ブラックコーヒー」を書き始め、1930年12月8日に、ロンドン北西部のスイスコテージ(Swiss Cottage)内に所在するエンバシー劇場(Embassy Theatre → 2025年3月2日 / 3月3日付ブログで紹介済)において初演された。


1930年12月8日にアガサ・クリスティー作の戯曲「ブラックコーヒー」が初演されたエンバシー劇場は、
1956年に売却され、同劇場は改装された後、
現在、Royal Central School of Speech and Drama が使用している。
<筆者撮影> 


エンバシー劇場において、1930年12月8日から同年12月20日にかけて上演された後、翌年の1931年4月9日から同年5月1日までの間、ロンドン市内のセントマーティンズ劇場(St. Martin’s Theatre → 2014年8月10日 / 2015年10月4日付ブログで紹介済)において再演された。


アガサ・クリスティーによる戯曲「ねずみとり(Mousetrap)」のロングラン公演が
行われているセントマーティンズ劇場 -
画面上は、63周年(2015年時点)であるが、
2025年11月25日に、74周年を達成済。
<筆者撮影>


アガサ・クリスティー作品の戯曲化としては、「アクロイド殺し(The Murder of Roger Ackroyd → 2022年11月7日 / 2023年9月25日 / 2023年10月2日付ブログで紹介済)」(1926年)を原作とした「アリバイ(Alibi)」(1928年)が最初であるが、アガサ・クリスティー自身が執筆した戯曲としては、「ブラックコーヒー」が初作品である。


英国の Harper Collins Publishers 社から以前に出版されていた
アガサ・クリスティー作「アクロイド殺し」の
ペーパーバック版の表紙


戯曲「ブラックコーヒー」は、1931年に映画化された後、1997年に、クリスティー財団(Christie estate)の許可を得て、オーストラリアのジャーナリスト / 批評家 / 詩人 / 小説家であるチャールズ・トマス・オズボーン(Charles Thomas Osborne:1927年ー2017年)により小説化されている。


2025年12月1日月曜日

エルキュール・ポワロの世界 <ジグソーパズル>(The World of Hercule Poirot )- その15B

英国の Harper Collins Publishers 社から現在出版されている
アガサ・クリスティー作「青列車の謎」の
ペーパーバック版の表紙 -
右手に銃を、そして、左手にキセルタバコを持った女性が線路の上に立っている場面が、
青列車の機関車の形に切り取られている。

アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1928年に発表した「青列車の謎(The Mystery of the Blue Train → 2022年11月19日付ブログで紹介済 / アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第8作目に、そして、エルキュール・ポワロ(Hercule Poirot → 2025年10月11日付ブログで紹介済)シリーズの長編としては、第5作目に該っている)の場合、1928年6月、フランスのパリから、その物語が始まる。


物語は、1928年6月のパリから始まる。-

Harper Collins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「青列車の謎」の
グラフィックノベル版(→ 2022年11月12日 / 11月17日付ブログで紹介済)から抜粋。


フランスのパリにおいて、米国の大富豪であるルーファス・ヴァン・オールディン(Rufus Van Aldin)は、ロシア人の外交官から、悲劇と暴力の長い歴史に彩られた「炎の心臓(Heart of Fire)」と呼ばれる傷一つないルビーを手に入れた。


米国の大富豪であるルーファス・ヴァン・オールディンは、
法外な値段にもかかわらず、
ロシア人の外交官から、「炎の心臓」と呼ばれるルビーを手に入れた。
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Harper Collins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「青列車の謎」のグラフィックノベル版から抜粋。


ルーファス・ヴァン・オールディンが、ロシア人の外交官からルビーを買い取ってから10分も経たないうちに、彼は2人の暴漢に襲われるが、なんとか事なきを得る。実は、2人の暴漢は、「侯爵(Monsieur Le Marquis)」と呼ばれる男が差し向けた手の者だった。

この「侯爵」は、国際的な宝石泥棒で、英国人にしては、フランス語を非常に流暢に話すことができた。「侯爵」は、珍しい骨董品ばかりを取り扱うパポポラス(Papopolous)の店を訪れると、「暴漢による襲撃は失敗したが、次の計画は失敗する筈がない。」と豪語するのであった。


二人組の暴漢による襲撃によるルビー「炎の心臓」の強奪に失敗した
国際的な宝石泥棒である「侯爵」は、
パポポラスの店を訪れ、「次の計画で、必ずルビーを手に入れる。」と豪語した。-

Harper Collins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「青列車の謎」のグラフィックノベル版から抜粋。


ルーファス・ヴァン・オールディンが、法外な値段にもかかわらず、不気味な伝説を伴うルビーを手に入れたのは、彼の人生で唯一愛する娘のルース・ケタリング(Ruth Kettering)のためだった。このルビーで、結婚に失敗した娘の気を紛らわせることができるのであれば、ルーファス・ヴァン・オールディンは、金に糸目を全くつけなかったし、如何なる危険も顧みなかったのである。


パリからロンドンへと戻ったルーファス・ヴァン・オールディンは、
秘書のリチャード・ナイトン少佐(Major Richard Knighton)に対して、
パリで手に入れたルビー「炎の心臓」を見せて、驚かせる。
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Harper Collins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「青列車の謎」のグラフィックノベル版から抜粋。


ルーファス・ヴァン・オールディンの娘のルースは、将来、レコンバリー卿(Lord Leconbury)となるデリク・ケタリング(Derek Kettering)と結婚していた。

ルースと結婚する前のデリク・ケタリングは、派手なギャンブルや出鱈目な生活等で、一家の財産を食い潰してきたが、結婚を機にして、その暮らしぶりを改めるのではないかと思われた。ところが、周囲の期待とは裏腹に、デリク・ケタリングの暮らしぶりが改まることはなく、それに加えて、悪名高いダンサーであるミレーユ(Mirelle)を愛人にしていた。


愛人のミレーユは、デリク・ケタリングに対して、
「ルースは、リヴィエラではなく、パリへ行って、
そこで元恋人のローシュ伯爵と逢い引きする筈だ。」と主張した。
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Harper Collins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「青列車の謎」のグラフィックノベル版から抜粋。


パリからロンドンへと戻ったルーファス・ヴァン・オールディンは、早速、ルビーを娘のルースにプレゼントするとともに、ろくでなしの夫デリクとの離婚を勧めるのであった。当初、妙に躊躇うそぶりを見せるルースであったが、ルーファス・ヴァン・オールディンは、「デリクは、金目当てに、お前と結婚した」ことをルースに認めさせ、離婚の手続を進めることに同意させた。


ルーファス・ヴァン・オールディンは、
結婚に失敗した娘のルース・ケタリングにルビー「炎の心臓」をプレゼントして、
彼女の気を紛らわせようとする。
近いうちに、南フランスのリヴィエラへ向かうルースは、ルビーを持参しようとするが、
父のルーファスは、銀行の貸金庫に預けるよう、強く警告した。-

Harper Collins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「青列車の謎」のグラフィックノベル版から抜粋。


ルースは、南フランスのリヴィエラ(Riviera)で冬のシーズンを過ごすため、近いうちに、ロンドンを発つ予定だった。ルーファス・ヴァン・オールディンは、ルースに対して、ルビーをリヴィエラへ持参するリスクは避けて、銀行の貸金庫に保管しておくよう、強く警告する。

しかしながら、残念なことに、ルーファス・ヴァン・オールディンの警告は、無視されることとなった。そして、それが、ルースにとって、悲劇を呼ぶことになる。ルースは、代償として、自分の命を落とすことになるのであった。


愛人のミレーユは、デリク・ケタリングに対して、「ルース・ケタリングは、リヴィエラで冬のシーズンを過ごすと言っているが、実際にはパリへ向かう予定で、そこでアルマン・ド・ラ・ローシュ伯爵(Arman, Comte de la Roche)と逢い引きする筈だ!」と話す。

10年前、デリクと結婚するまで、ルースが女誑しの悪党であるローシュ伯爵と恋仲だったことを考えると、あり得る話だった。


ミレーユの話を聞いたデリク・ケタリングは、ミレーユのフラットを飛び出すと、ニース(Nice)行き青列車(Blue Train)の寝台を予約した。それは、妻のルースがリヴィエラへ向かう列車で、ミレーユの話が本当であれば、少なくとも、パリまでは乗って行く筈だ。


ミレーユから話を聞いたデリク・ケタリングは、
妻のルースが乗車するニース行き青列車の寝台を予約する。-

Harper Collins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「青列車の謎」のグラフィックノベル版から抜粋。


ニース行きの青列車は、リヴィエラで冬のシーズンを過ごす予定である英国の有閑階級の人達で満席だった。

ルース・ケタリングは、メイドのエイダ・メイスン(Ada Mason)を連れて、青列車に乗車する。父親のルーファス・ヴァン・オールディンに強く警告されたにもかかわらず、リースは、父親からプレゼントされたルビー「炎の心臓」を携えたままであった。


ルーファス・ヴァン・オールディンは、
ニースへと向かう娘のルースの見送りにやって来る。
ルースは、メイドのエイダ・メイスンを伴っていた。
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Harper  Collins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「青列車の謎」のグラフィックノベル版から抜粋。


青列車の乗客の中には、英国の有閑階級の人達に初めて加わるキャサリン・グレイ(Katherine Grey)も居た。彼女は、ついこの前まで金持ちの話し相手(コンパニオン)を務めていて、彼女の雇い主が遺してくれた財産を相続したばかりだった。

彼女は、長い間、連絡の途絶えていた従姉妹のレディー・ロザリー・タンプリン(Lady Rosalie Tamplin)から、「数ヶ月間、リヴィエラで一緒に過ごさないか?」と招かれていた。レディー・タンプリンにとって、興味があるのは、自分が相続したばかりの財産だと気付いてはいたが、キャサリン・グレイは、自分に巡ってきた幸運を享受するつもりだった。


キャサリン・グレイは、コンパニオンを務めた彼女の雇い主が遺してくれた財産を使って、
リヴィエラに住む従姉妹のレディー・タンプリンのところへ出かけるところだった。
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Harper Collins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「青列車の謎」のグラフィックノベル版から抜粋。


昼食をとるために、食堂車へと向かったキャサリン・グレイは、ルース・ケタリングと隣席になる。ルースは、「自分がこれからパリでしようとしている逢い引きについて、無謀だった。」と感じ始めており、キャサリンに対して、自分の気持ちを吐露するのであった。


昼食の際、キャサリン・グレイと同席となったルース・ケタリングは、
これからパリで行おうとしている逢い引きについて、キャサリンに相談する。-

Harper Collins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「青列車の謎」のグラフィックノベル版から抜粋。


通常、こういった打ち明け話をした場合、打ち明けた当人は、打ち明けた相手に対して、二度と会いたがらないものだ。実際、ルースは、自室内で夕食を取るようで、食堂車へ赴いたキャサリンは、別の人物と同席することになる。それは、他ならぬエルキュール・ポワロだった。


夕食の際、キャサリン・グレイは、
名探偵であるエルキュール・ポワロと同席になった。
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Harper Collins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「青列車の謎」の
グラフィックノベル版から抜粋。


それ以降、キャサリン・グレイの身辺には、特に何も起きなかったが、青列車がニースに到着すると、彼女は恐ろしい事件に巻き込まれる。

昨日、昼食の席で隣席となったルース・ケタリングが、自室内において、就寝中、何者かによって、首を絞められて殺害された後、激しい一撃で、顔の見分けがつかない程になっているのが発見されたのである。そして、彼女が携えていたルビー「炎の心臓」が紛失していた。

メイドのエイダ・メイスンも、その姿を消していたため、警察は、キャサリン・グレイに対して、身元の確認を依頼するが、顔の判別がつかず、それは難しかった。

そして、その場に居合わせたポワロが、警察に対して、捜査の協力を申し出るのであった。


ニースに到着した青列車内において、
ルース・ケタリングの死体が発見されるとともに、
彼女が携えていたルビー「炎の心臓」が紛失していた。
偶然、青列車に乗り合わせていたポワロは、
警察に対して、捜査の協力を申し出る。
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Harper Collins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「青列車の謎」のグラフィックノベル版から抜粋。


「青列車の謎」に登場するキャサリン・グレイは、ロンドン郊外のセントメアリーミード(St. Mary Mead)に住んでいる設定になっている。

セントメアリーミードとは、アガサ・クリスティーが1930年に発表した「牧師館の殺人(The Murder at the Vicarage)」において、初登場したミス・ジェーン・マープル(Miss Jane Marple)が住んでいる場所でもある。


(27)ルビー「炎の心臓」(Heart of Fire ruby)



米国の大富豪であるルーファス・ヴァン・オールディンは、娘のルース・ケタリングに対して、ルビー「炎の心臓」を銀行の貸金庫に保管しておくよう、強く警告したにもかかわらず、彼女は、父親の警告を守らず、ルビー「炎の心臓」を携えたまま、南フランスのリヴィエラで冬のシーズンを過ごすため、青列車の寝台車に乗車し、ロンドンからニースへと向かった。

青列車がニースに到着した際、ルース・ケタリングが、自室内において、就寝中、何者かによって、首を絞められて殺害された後、激しい一撃で、顔の見分けがつかない程になっているのが発見された。そして、彼女が携えていたルビー「炎の心臓」が紛失していたのである。


(28) 青列車(blue train)



米国の大富豪ルーファス・ヴァン・オールディンの娘ルース・ケタリングは、南フランスのリヴィエラで冬のシーズンを過ごすために、青列車の寝台車に乗り、ロンドンからニースへ出発。

ところが、青列車がニースに到着すると、彼女が、自室内において、就寝中、何者かによって、首を絞められて殺害された後、激しい一撃で、顔の見分けがつかない程になっているのが発見されたのであった。


(29)シガレットケース(cigarette case)



米国の大富豪ルーファス・ヴァン・オールディンの娘ルース・ケタリングが首を絞められて殺害された部屋内から、「K」のイニシャルが刻まれたシガレットケースが発見される。

このシガレットケースは、ルース・ケタリングが、結婚後も派手なギャンブルや出鱈目な生活等を続ける夫のデリク・ケタリングに送ったものであることが判明したため、夫のデリク・ケタリングが妻のルース・ケタリングを殺害したものと疑われるのであった。