2025年3月11日火曜日

アガサ・クリスティー作「二十四羽の黒つぐみ」<英国 TV ドラマ版>(Four-and-Twenty Blackbirds by Agatha Christie )- その1

第4話「二十四羽の黒つぐみ」が収録された
エルキュール・ポワロシリーズの DVD コレクション No. 1 の表紙


アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「二十四羽の黒つぐみ(Four-and-Twenty Blackbirds)」(1940年)の TV ドラマ版が、英国の TV 会社 ITV 社による制作の下、「Agatha Christie’s Poirot」の第4話(第1シリーズ)として、1989年1月29日に放映されている。英国の俳優であるサー・デヴィッド・スーシェ(Sir David Suchet:1946年ー)が、名探偵エルキュール・ポワロを演じている。ちなみに、日本における最初の放映日は、1990年2月3日である。


英国 TV ドラマ版における主な登場人物(エルキュール・ポワロを除く)と出演者は、以下の通り。なお、順番は、エンディングの出演者順。


(1)アーサー・ヘイスティングス大尉(Captain Arthur Hastings):Hugh Fraser

(2)ジャップ主任警部(Chief Inspector Japp):Philip Jackson

(3)ミス・フェリシティー・レモン(Miss Felicity Lemon):Pauline Moran


(4)ジョージ・ロリマー(George Lorrimer - 劇場の支配人):Richard Howard

(5)ハリー・クラーク(Harry Clarke - ジョージ・ロリマーのアシスタント):Geoffrey Larder

(6)ボニントン(Bonnington - ポワロの友人で、歯医者)

(7)ダルシー・ラング(Dulcie Lang - 画家であるヘンリー・ガスコイン(Henry Gascoigne)のモデル):Holly De Jong

(8)ピーター・メイキンスン(Peter Makinson - 画家であるヘンリー・ガスコインのエージェント):Clifford Rose

(9)カッター(Cutter - 病理学者(pathologist)):Philip Locke

(10)ヒル夫人(Mrs. Hill - アンソニー・ガスコイン(Anthony Gascoigne)の家政婦):Hilary Mason

(11)モリー(Molly - Bishop’s Chop House のウェイトレス):Cheryl Hall


アガサ・クリスティーの原作に比べると、英国 TV ドラマ版における登場人物には、以下の違いが見受けられる。


(1)・(2)(3)

<原作>

アーサー・ヘイスティングス大尉、ジャップ主任警部とミス・フェリシティー・レモンは、登場しない。

<英国 TV ドラマ版>

アーサー・ヘイスティングス大尉、ジャップ主任警部とミス・フェリシティー・レモンは、レギュラーメンバーとして登場。


(4)

<原作>

ジョージ・ロリマーは、ウィンブルドン(Wimbledon)に住む医師と言う設定になっている。

<英国 TV ドラマ版>

ジョージ・ロリマーがどこに住んでいるのかは不明。また、彼は、ベスナルグリーン地区(Bethnal Green → 2024年9月19日付ブログで紹介済)にあるカールトン劇場(Carlton Theatre)の支配人と言う設定に変更されている。


(5)

<原作>

ハリー・クラークは、登場しない。

<英国 TV ドラマ版>

ハリー・クラークは、カールトン劇場の支配人であるジョージ・ロリマーのアシスタントを務めている。


(6)

<原作>

ヘンリー・ボニントン(Henry Bonnington)がフルネームで、ポワロの友人であるが、職業は不明。

<英国 TV ドラマ版>

ヘンリー・ガスコインが登場する関係上、物語上、ボニントンのファーストネームについては、言及されていない。また、ポワロが通う歯医者と言う設定になっている。


(7)

<原作>

ダルシー・ラングは、登場しない。

<英国 TV ドラマ版>

ダルシー・ラングは、画家であるヘンリー・ガスコインのモデルを務めている。


(8)

<原作>

ピーター・メイキンスンは、登場しない。

<英国 TV ドラマ版>

ピーター・メイキンスンは、画家であるヘンリー・ガスコインのエージェントを務めている。


(9)

<原作>

カッターは、登場しない。

<英国 TV ドラマ版>

カッターは、病理学者として、原作のマックアンドリュー医師(Dr. MacAndrew)の代わりを務めている。


(10)

<原作>

ヒル夫人は、アンソニー・ガスコインの家政婦で、アメリア(Amelia)と言うファーストネームが与えられている。

<英国 TV ドラマ版>

原作と同様に、ヒル夫人は、アンソニー・ガスコインの家政婦であるが、ファーストネームに関しては、言及されていない。


(11)

<原作>

モリーは、チェルシー地区(Chelsea)内のキングスロード(King’s Road → 2025年3月8日 / 3月10日付ブログで紹介済)沿いにあるレストラン「ギャラント エンデヴァー(Gallant Endeavour)」のウェイトレスと言う設定になっている。

<英国 TV ドラマ版>

モリーは、原作とは異なり、レストラン「ギャラント エンデヴァー」ではなく、「Bishop’s Chop House」 のウェイトレスと言う設定に変更されている。原作におけるレストラン名「ギャラント エンデヴァー」が、英国の視聴者には判りづらいと言う配慮なのではないだろうか?


           

2025年3月10日月曜日

ロンドン キングスロード(King’s Road)- その2

東側の起点であるスローンスクエア方面のキングスロードを望む


アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)によるエルキュール・ポワロシリーズの短編で、1960年に刊行された短編集「クリスマスプディングの冒険(The Adventure of Christmas Pudding)」に収録されている「二十四羽の黒つぐみ(Four-and-Twenty Blackbirds → 2025年3月5日 / 3月6日付ブログで紹介済)」(1940年)は、ある夜、エルキュール・ポワロが、チェルシー地区(Chelsea)内のキングスロード(King’s Road)沿いにあるレストラン「ギャラント エンデヴァー(Gallant Endeavour)」において、友人のヘンリー・ボニントン(Henry Bonnington)と食事をしている場面から始まる。



ポワロと彼の友人であるヘンリー・ボニントンの2人が食事をしたレストラン「ギャラント エンデヴァー」があるキングスロードは、ロンドンの中心部の一つであるケンジントン&チェルシー王立区(Royal Borough of Kensington and Chelsea)のチェルシー地区内に所在する通りである。





キングスロードの東側は、地下鉄のサークルライン(Circle Line)/ ディストリクトライン(District Line)が停まる地下鉄スローンスクエア駅(Sloane Square Tube Station)があるスローンスクエア(Sloane Square)を起点として、テムズ河(River Thames)に沿うように、チェルシー地区内を南西方面へと延びる。


ソーホースクエアガーデンズ(Soho Square Gardens)内に
設置されているチャールズ2世像 -
デンマーク人の彫刻家 Caius Gabriel Cibber (1630年―1700年)が制作


王政復古(Restoration)後のステュアート朝(House of Stuart)国王であるチャールズ2世(Charles II:1630年ー1685年 在位期間:1660年ー1685年)が、ロンドンの南西部にあるキュー(Kew)へと向かう際に使用した私的な道路が、キングスロードの始まりである。そして、国王が使用した道路と言うことが、「キングスロード」と呼ばれるようになった所以である。





キングスロードは、1830年まで英国王室所有の道路であったが、ロンドン内の交通状況を改善するために、英国王室関係者や一般に解放された。




1960年代後半から1980年代前半にかけて、ヒッピーやパンク文化等に感化された若者達がキングスロード界隈を闊歩し、若者文化の中心地として、ソーホー地区(Soho)内にあるカーナビーストリート(Carnaby Street)界隈とともに注目された。




現在は、チェルシー地区内におけるメイン通り(High Street)として、ロンドン内で最もファッショナブルな通りとして知られている。


2025年3月8日土曜日

ロンドン キングスロード(King’s Road)- その1

キングスロードの東側の起点に該る
スローンスクエアの南西の角には、
デパート「ピータージョーンズ(Peter Jones)」が建っている。


アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)によるエルキュール・ポワロシリーズの短編で、1960年に刊行された短編集「クリスマスプディングの冒険(The Adventure of Christmas Pudding)」に収録されている「二十四羽の黒つぐみ(Four-and-Twenty Blackbirds → 2025年3月5日 / 3月6日付ブログで紹介済)」(1940年)は、ある夜、エルキュール・ポワロが、チェルシー地区(Chelsea)内のキングスロード(King’s Road)沿いにあるレストラン「ギャラント エンデヴァー(Gallant Endeavour)」において、友人のヘンリー・ボニントン(Henry Bonnington)と食事をしている場面から始まる。



ヘンリー・ボニントンは、レストランの隅に座る髭の老人を指差すと、「あの老人は、10年近くの間、毎週、同じ曜日(火曜日と木曜日)の夜に現れ、同じ席で同じ食事をとるんだ。それなのに、彼の名前、住所や職業を、誰一人知らないんだ。」と、ポワロに語る。

ポワロ達が座るテーブルへ食事を運んで来たウェイトレスのモリー(Molly)が、ポワロ達が髭の老人を見ていることに気付くと、彼らに対して、「あの老人は、先週、いつもとは違う曜日(月曜日)にもやって来て、更に、今までに注文したことがない食事を注文したんです。」と話すのを聞いて、ポワロは非常に興味を惹かれるのであった。


ングスロードの東側の起点に該る
スローンスクエアの南側に設置されている噴水

画面左奥へと延びている通りが、キングスロードである。

ポワロと彼の友人であるヘンリー・ボニントンの2人が食事をしたレストラン「ギャラント エンデヴァー」があるキングスロードは、ロンドンの中心部の一つであるケンジントン&チェルシー王立区(Royal Borough of Kensington and Chelsea)のチェルシー地区内に所在する通りである。


バスがキングスロードからスローンスクエアへと丁度出てきたところ。

スローンスクエア側から見たキングスロード

キングスロードの東側は、地下鉄のサークルライン(Circle Line)/ ディストリクトライン(District Line)が停まる地下鉄スローンスクエア駅(Sloane Square Tube Station)があるスローンスクエア(Sloane Square)を起点としている。

スローンスクエアから始まるキングスロード は、テムズ河(River Thames)に沿うように、チェルシー地区内を南西方面へと延びる。



チェルシー地区とは異なるロンドン特別区の一つであるハマースミス&フラム区(London Borough of Hammersmith and Fulham)内にあるフラム地区(Fulham)まで到達したキングスロードは、その北側に並行して走るフラムロード(Fulham Road)から南北に延びるウォーターフォードロード(Waterford Road)と交差した地点で、ニューキングスロード (New King’s Road)へと名前を変える。


キングスロードから東へ少し入ったところにある
ブロンズ像「二人の生徒(Two Pupils)」(その1)

キングスロードから東へ少し入ったところにある
ブロンズ像「二人の生徒(Two Pupils)」(その2)

キングスロードから東へ少し入ったところにある
ブロンズ像「二人の生徒(Two Pupils)」(その3)

キングスロード から名前を変えたニューキングスロード は、フラムロードから南北に延びるフラムハイストリート(Fulham High Street)に突き当たったところで終わる。これは、テムズ河を渡るパットニー橋(Putney Bridge)の袂に該る。 


2025年3月6日木曜日

アガサ・クリスティー作「二十四羽の黒つぐみ」(Four-and-Twenty Blackbirds by Agatha Christie)- その2

英国の Harper Collins Publishers 社から現在出版されていた
アガサ・クリスティー作エルキュール・ポワロシリーズ
「クリスマスプディングの冒険」のペーパーバック版表紙


アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)によるエルキュール・ポワロシリーズの短編で、1960年に刊行された短編集「クリスマスプディングの冒険(The Adventure of Christmas Pudding)」に収録されている「二十四羽の黒つぐみ(Four-and-Twenty Blackbirds)」(1940年)は、ある夜、エルキュール・ポワロが、チェルシー地区(Chelsea)内のキングスロード(King’s Road)沿いにあるレストラン「ギャラント エンデヴァー(Gallant Endeavour)」において、友人のヘンリー・ボニントン(Henry Bonnington)と食事をしている場面から始まる。


レストランのウェイトレスであるモリー(Molly)は、客の食べ物の好き嫌いを覚えていることが御自慢だった。

「人の好みは、いつも同じなのか?偶には、食べるものを変えたくはないのか?」と尋ねるポワロに対して、モリーは、「殿方は、お変えになりません。御婦人方は、いろいろなものがお好きですが、殿方は、いつも同じものをお召し上がりになります。」と答える。


モリーの答えを受けたヘンリー・ボニントンは、レストランの隅に座る髭の老人を指差すと、「あの老人は、10年近くの間、毎週、同じ曜日(火曜日と木曜日)の夜に現れ、同じ席で同じ食事をとるんだ。それなのに、彼の名前、住所や職業を、誰一人知らないんだ。」と、ポワロに語る。

ポワロ達が座るテーブルへ食事を運んで来たモリーが、ポワロ達が髭の老人を見ていることに気付くと、彼らに対して、「あの老人は、先週、いつもとは違う曜日(月曜日)にもやって来て、更に、今までに注文したことがない食事を注文したんです。」と話すのを聞いて、ポワロは非常に興味を惹かれる。


髭の老人を「古時計さん(Old Father Time)」と呼んでいるモリーによると、


*髭の老人が、初めての来店以来、キドニープディング(suet pudding)、黒イチゴ(blackberries)やポタージュスープ(thick soup)を注文したことは全くない。


*にもかかわらず、先週の月曜日の晩には、トマトのポタージュスープ(thick tomato soup)、ビーフステーキ(beefsteak)、キドニープディング(kidney pudding)、更に、黒イチゴのタルト(blackberry tart)を注文。


とのことだった。


3週間後、地下鉄でヘンリー・ボニントンと再会したポワロは、ヘンリー・ボニントンから「例の髭の老人が、1週間、レストランに姿を見せていない。」と告げられる。


更に興味を覚えたポワロは、チュルシー地区内で最近亡くなった人のリストの中から、髭の老人に該当する人物として、ヘンリー・ガスコイン(Henry Gascoigne)を見つけ出すと、彼の検視医であるマックアンドリュー医師(Dr. MacAndrew)の元を訪ねる。


ポワロが調査した結果、


*ヘンリー・ガスコインは、一人暮らしで、11月3日(木曜日)の夜、自宅(フラット)の階段から転落死。

*胃の内容物から、彼が亡くなったのは、食後2-3時間後。当日、午後7時過ぎにレストラン「ギャラント エンデヴァー」で食事をしていたので、彼の死亡時刻は午後10時頃と推定。

*ヘンリー・ガスコインには、キングストンヒル(Kingston Hill)に住む双子の兄であるアンソニー・ガスコイン(Anthony Gascoigne)が居たが、長い闘病生活の末、弟ヘンリーと同じ日の午後に死亡。

*双子の兄弟であるアンソニー・ガスコイン / ヘンリー・ガスコインにとって、生存している唯一の親族は、ウィンブルドン(Wimbledon)に住む甥であるジョージ・ロリマー(George Lorrimer)。

*階段から転落死したヘンリー・ガスコインのポケットには、ジョージ・ロリマーが出した手紙が入っており、手紙の日付は11月3日で、郵便局の消印は11月3日の午後4時半となっていた。


等が判明。


レストラン「ギャラント エンデヴァー」を再度訪れたポワロは、当日の夜、ヘンリー・ガスコインが食べたものが、


*マリガトニースープ(mulligatawny soup - 肉の濃厚な出し汁に鶏肉、野菜やクリーム等を入れたインドのカレースープ)

*羊肉(mutton)

*黒イチゴとリンゴ入りのパイ(blackberry and apple pie)

*チーズ(cheese)


で、いつもの習慣とは違う食事をまたしていたことが聞き付けた。


また、ヘンリー・ガスコインの歯が、年齢の割りには非常に白かったことから、階段から転落した彼が、当日の夜、黒イチゴとリンゴ入りのパイを食べたとは、どうしても考えられなかったのである。


2025年3月5日水曜日

アガサ・クリスティー作「二十四羽の黒つぐみ」(Four-and-Twenty Blackbirds by Agatha Christie)- その1

英国の Harper Collins Publishers 社から以前出版されていた
アガサ・クリスティー作エルキュール・ポワロシリーズ
「クリスマスプディングの冒険」のペーパーバック版表紙


アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1953年に発表したミス・マープルシリーズの長編第6作目「ポケットにライ麦を(A Pocket Full of Rye)」は、マザーグース(Mother Goose)の童謡の歌詞通りに、殺人事件が発生する「見立て殺人」をテーマにした作品である。


ビル・ブラッグ氏Mr. Bill Braggが描く
ミス・マープルシリーズの長編第6作目である

「ポケットにライ麦を」の一場面で、

投資信託会社の社長であるレックス・フォーテスキュー(Rex Fortescue)が、

オフィスにおいて、朝の紅茶を飲んだ後、急逝する前のシーンが描かれている。

床に伸びた影は、彼の個人秘書である

アイリーン・グローヴナー(Miss Irene Grosvenor)だと思われる。

Harper Collins Publishers 社から出版されている

「ポケットにライ麦を」のペーパーバック版の表紙には、

ビル・ブラッグ氏によるイラストが、

紅茶が入ったポットの形に切り取られているものが使用されている。


この童謡は「6ペンスの唄を歌おう(Sing a Song of Sixpence → 2024年9月7日付ブログで紹介済)」で、物語において、ミス・ジェイン・マープルがスコットランドヤードのニール警部(Inspector Neele)に対して歌って聞かせている。

なお、歌詞は以下の通り。


< 英語原詞 >


Sing a song of sixpence,

A pocket full of rye,
Four and twenty blackbirds,
Baked in a pie.


When the pie was opened,
The birds began to sing,
Was not that a dainty dish,
To set before the king ?

The king was in his counting-house,
Counting out his money,
The queen was in the parlour,
Eating bread and honey.

The maid was in the garden,
Hanging out the clothes,
There came a little blackbird,
And snapped off her nose.

< 日本語訳(宇野利泰訳) >

六ペンスの歌をうたおう

ポケットに ライ麦を

詰めて歌うは 街の唄

くろつぐみを二十四 パイに焼き

切って差出しゃ 鳴きいだす

お城料理の すばらしさ


王様お倉で 宝をかぞえ

女王は広間で パンに蜂蜜

若い腰元 庭へ出て

乾しに並べた お召もの

そこへ小鳥が 飛んできて

可愛いお鼻を 突っついた


ジズソーパズル内の右側の窓の外の縁には、
ミス・ジェイン・マープルが節をつけて歌い出したマザーグースの童謡の中に出てくる
黒鶫(クロツグミ)がとまっている。-
ジグソーパズル「アガサ・クリスティーの世界(The World of Agatha Christie)」の一部


黒鶫<クロツグミ>(blackbird)は、スズメ目ツグミ科の鳥で、雄の場合、体が黒く、目の周りが黄色で、嘴も黄色い。ヨーロッパにおいて、黒鶫は「春の訪れを告げる鳥」として親しまれており、スウェーデンでは、国鳥に指定されている。


童謡「6ペンスの唄を歌おう」内に出てくる「二十四羽の黒つぐみ(Four and twenty blackbirds)」を題名とするエルキュール・ポワロシリーズの作品が存在する。


それは、短編「二十四羽の黒つぐみ(Four-and-Twenty Blackbirds)」で、1960年に刊行された短編集「クリスマスプディングの冒険(The Adventure of Christmas Pudding)」に収録されている。


短編「二十四羽の黒つぐみ」は、米国において、「コーリアズマガジン(Collier’s Magazine)」1940年11月9日号に発表された後、英国では、「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」1941年3月号に、「ポワロと常連のお客(Poirot and the Regular Customer)」と言う題名で掲載されている。


物語は、ある夜、エルキュール・ポワロが、チェルシー地区(Chelsea)内のキングスロード(King’s Road)沿いにあるレストラン「ギャラント エンデヴァー(Gallant Endeavour)」において、友人のヘンリー・ボニントン(Henry Bonnington)と食事をしている場面から始まる。 


2025年3月3日月曜日

ロンドン エンバシー劇場(Embassy Theatre)- その2

画面左手奥に、エンバシー劇場が建っている。
昼間、画面手前の広場には、各国の屋台が出店しており、
多くの人達が昼食を買っている。


アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)による戯曲「ブラックコーヒー(Black Coffee → 2025年2月27日 / 2月28日付ブログで紹介済)」が1930年12月8日から同年12月20日にかけて初演されたエンバシー劇場(Embassy Theatre)は、ロンドンの中心部にあるロンドン特別区の一つであるカムデン区(London Borough of Camden)のスイスコテージ地区(Swiss Cottage)内にあるイートンアベニュー64番地(64 Eton Avenue)に建っている。



エンバシー劇場は、英国の舞台 / 映画女優である Sybil Arundale(1879年ー1965年)と Herbert Jay により、1928年9月にオープン。


エンバシー劇場は、現在、Royal Central School of Speech and Drama として使用されている。

その後、エンバシー劇場の舞台監督は、


<1930年ー1932年>

Alec L. Rea / A. R. Whatmore(英国の俳優 / 脚本家 / 演劇プロデューサー:1889年ー1960年)

<1932年ー1939年>

Ronald George Hinings Adams(英国の舞台 / 映画俳優で、劇場監督:1896年ー1979年)


を経る。


Ronald George Hinings Adams が舞台監督を務めていた際、150を超える作品が生み出され、30を超える作品がウェストエンド(West End)の劇場でも上演された。

また、1932年に、劇場内に演劇学校(Embassy school of acting)も開設された。


エンバシー劇場の右側の建物は、
Royal Central School of Speech and Drama の増築部分に該る。


エンバシー劇場は、第二次世界大戦(1939年ー1945年)中に被害を蒙ったが、1945年に再オープン。

英国の俳優 / 舞台監督である Anthony John Hawtrey(1909年ー1954年)が、1945年から1954年にかけて、舞台監督を務めた。


広場を挟んで、エンバシー劇場の反対側には、
ハムステッド劇場(Hampstead Theatre)が建っている。


1953年に、エンバシー劇場は、英国の実業家である Sidney Lewis Bernstein(1899年ー1993年)に売却され、英国の作家 / 脚本家である Cyril Wolf Mankowitz(1924年ー1998年)が劇場を運営した。

なお、Sidney Lewis Bernstein は、「シャーロック・ホームズの冒険(The Adventures of Sherlock Holmes)」(1984年ー1994年)を制作した英国のグラナダテレビ(Granada Television Limited)を1954年に設立している。


ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)がシャーロック・ホームズとして主演した
英国のグラナダテレビ制作「シャーロック・ホームズの冒険」の
DVD コンプリートボックス1巻目の表紙


エンバシー劇場は、1956年に売却され、同劇場は改装された後、現在、Royal Central School of Speech and Drama が使用している。


2025年3月2日日曜日

ロンドン エンバシー劇場(Embassy Theatre)- その1


アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)による戯曲「ブラックコーヒー(Black Coffee → 2025年2月27日 / 2月28日付ブログで紹介済)」が初演されたエンバシー劇場(Embassy Theatre)は、ロンドンの中心部にあるロンドン特別区の一つであるカムデン区(London Borough of Camden)のスイスコテージ地区(Swiss Cottage)内に所在している。



具体的には、ジュビリーライン(Jubilee Line)が停まる地下鉄スイスコテージ駅(Swiss Cottage Tube Station)から地上に出ると、そこは、ゴルダースグリーン地区(Golders Green)方面へと向かうフィンチリーロード(Finchley Road)、ハムステッド地区(Hampstead → 2018年8月26日付ブログで紹介済)方面へと向かうフィッツジョンズアベニュー(Fitzjohn’s Avemue)およびリージェンツパーク(Regent’s Park → 2016年11月19日付ブログで紹介済)方面へと向かうアベニューロード(Avenue Road)から成る環状交差点(roundabout)となっている。

上記の3つの通りが交差する箇所から北に進むと、イートンアベニュー(Eton Avenue)が北東へと延びているが、イートンアベニュー64番地(64 Eton Avenue)に、エンバシー劇場が建っている。



「ブラックコーヒー」の場合、エルキュール・ポワロが探偵役を務め、アーサー・ヘイスティングス大尉(Captain Arthur Hastings)とスコットランドヤードのジャップ警部(Inspector Japp)も登場する。


アガサ・クリスティー作品の戯曲化としては、「アクロイド殺し(The Murder of Roger Ackroyd → 2023年9月25日 / 10月2日付ブログで紹介済)」(1926年)を原作とした「アリバイ(Alibi)」(1928年)が最初であるが、アガサ・クリスティー自身が執筆した戯曲としては、「ブラックコーヒー」が初作品である。



「ブラックコーヒー」は、エンバシー劇場において、1930年12月8日から同年12月20日にかけて上演された後、翌年の1931年4月9日から同年5月1日までの間、ロンドン市内のセントマーティンズ劇場(St. Martin’s Theatre → 2014年8月10日 / 2015年10月4日付ブログで紹介済)において再演された。


アガサ・クリスティーによる戯曲「ねずみとり(Mousetrap)」のロングラン公演が
行われているセントマーティンズ劇場 -
画面上は、63周年(2015年時点)であるが、
2025年2月27日時点では、73周年を既に達成済で、
同年11月25日には、74周年を迎える。


エンバシー劇場は、1956年に売却され、同劇場は改装された後、現在、Royal Central School of Speech and Drama が使用している。