2023年11月30日木曜日

ロンドン ビークストリート41番地(41 Beak Street)

カナレットが1749年から1752年までの間
居住したビークストリート41番地の建物(その1)
<筆者撮影>


ヴェネツィア共和国(Republic of Venice)の景観画家 / 版画家であるカナレット(Canaletto)こと、ジョヴァンニ・アントーニオ・カナール(Giovanni Antonio Canal:1697年ー1768年)は、1746年から1756年までの間、英国に滞在していた。特に、1749年から1752年までの間に、彼が居住していたビークストリート41番地(41 Beak Street)は、ロンドンの中心部シティー・オブ・ウェストミンスター区(City of Westminster)のソーホー地区(Soho)内に所在している。


カナレットが1749年から1752年までの間
居住したビークストリート41番地の建物(その2)
<筆者撮影>


地下鉄ピカデリーサーカス駅(Piccadilly Circus Tube Station)と地下鉄オックスフォードサーカス駅(Oxford Circus Tube Station)を南北に結ぶリージェントストリート(Regent Street)のほぼ中間点からソーホー地区方面へ、つまり、東方面へ向かう道が、ビークストリート(Beak Street)である。


ビークストリート41番地の建物の外壁には、
カナレットがここに住んでいたことを示す
London City Council のプラークが架けられている。
<筆者撮影>

ビークストリートを東方面へ進むと、進行方向左手側で、キングリーストリート(Kingly Street)、カーナビーストリート(Carnaby Street)、そして、マーシャルストリート(Marshall Street)と交差する。

2番目に交差するカーナビーストリートと3番目に交差するマーシャルストリートの間で、進行方向左手側に建つのが、カナレットが住んでいたビークストリート41番地の建物である。

ビークストリート41番地の建物のほぼ反対側から、アッパージェイムズストリート(Upper James Street)が、ピカデリーサーカス(Piccadilly Circus)方面へ向かって、南に延びている。


カナレットが1749年から1752年までの間
居住したビークストリート41番地の建物(その3)
<筆者撮影>

カーナビーストリートは、歩行者専用のショッピングストリートで、多くの独立したファッションブティックを初めとして、ファッションとライフスタイルの小売店が通り沿いに軒を並べていて、買い物客や観光客等でいつも賑わっている。

カーナビーストリート周辺は再開発されて、小売店が多く入ったショッピングセンターやフラット等の新しい施設や建物が出来上がっている。それに合わせて、カーナビーストリート周辺には、レストラン、カフェやバー等の飲食店が、数多く点在している。

カナレットが住んでいたビークストリート41番地の建物の前を東西に走るビークストリートは、細い通りであるが、飲食店が多く並んでいるので、夜間まで、人通りは多い。


2023年11月29日水曜日

コナン・ドイル作「まだらの紐」<グラフィックノベル版>(The Speckled Band by Conan Doyle )- その3

ストークモラン(Stoke Moran)にある
グリムズビー・ロイロット博士邸に到着した
シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンの2人は、
待っていたヘレン・ストーナーに対して、
屋敷内の案内を頼むのであった。


チェコ共和国(Czech Republic)ヴィソチナ州トシェビーチ郡の都市トシェビーチ出身のイラストレーターであるペトル・コプル(Petr Kopl:1976年ー)によるグラフィックノベル版「まだらの紐(The Speckled Band)」の場合、サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)の原作に比べると、物語の展開上、以下の違いが見受けられる。


(6)

<原作>

原作の場合、事件の依頼人であるヘレン・ストーナー(Helen Stoner - 双子の妹)が、早朝にベイカーストリート221B(221B Baker Street → 2014年6月22日 / 6月29日付ブログで紹介済)を訪れ、事件の説明をした際に、シャーロック・ホームズは、彼女の傷付いた手首に気付き、「グリムズビー・ロイロット博士(Dr. Grimesby Roylott - ジュリア・ストーナー(Julia Stoner - 双子の姉で、2年前に死亡)とヘレン・ストーナーの義父)に酷い扱いを受けている。」と、彼女に告げる。

また、ホームズは、ヘレン・ストーナーが膝の上に置いていた手にはめていた黒いレースの手袋のレースのフリルを少しずらして、彼女の手首の傷を指摘すると言う優しい方法で行なっている。

<グラフィックノベル版>

グラフィックノベル版の場合、シャーロック・ホームズが、ヘレン・ストーナーの手首の傷に気付くのは、ストークモラン(Stoke Moran)にあるグリムズビー・ロイロット博士の屋敷に到着して、彼女の案内で、各部屋を調べている最中である。

ホームズは、ヘレン・ストーナーの右手を掴み、彼女の袖口を下げて、手首の傷を指摘すると言うやや強引な方法で行っている。


ペトル・コプルによるグラフィックノベル版の場合、
シャーロック・ホームズは、やや乱暴なやり方で、
ヘレン・ストーナーの手首の傷を指摘している。

(7)

<原作>

原作の場合、夜中になり、ヘレン・ストーナーからランプの合図を受けるまでの間、シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンの2人が待機した場所は、ストークモランにある宿屋「クラウンイン(Crown Inn)」の上階の部屋(居間+寝室)である。

<グラフィックノベル版>

グラフィックノベル版の場合、シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンの2人が待機した場所は、グリムズビー・ロイロット博士の敷地内に建っている小屋へと変更されている。


原作とは異なり、
シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンの2人は、
ストークモランにある宿屋ではなく、
グリムズビー・ロイロット博士の敷地に隣接する空き家において待機して、
ヘレン・ストーナーによるランプの合図を待った。

(8)

<原作>

原作の場合、ヘレン・ストーナーからランプの合図を受けたシャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンの2人は、庭を囲む古い壁の割れ目から、グリムズビー・ロイロット博士の敷地へと入り込んだ。

<グラフィックノベル版>

グラフィックノベル版の場合、シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンの2人は、柵を乗り越えて、グリムズビー・ロイロット博士の敷地へと侵入した。


シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンの2人は、
柵を乗り越えて、グリムズビー・ロイロット博士の敷地へと入った。


(9)

<原作>

原作の場合、シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンの2人がグリムズビー・ロイロット博士の屋敷に近付いた際、月桂樹の茂みの中から、ヒヒ(baboon)が突然駆け出して来て、2人は驚く。

<グラフィックノベル版>

グラフィックノベル版の場合、シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンの2人がグリムズビー・ロイロット博士の敷地を歩いている時に、ヒヒが2人の前の芝生の上を横切って行く。


グリムズビー・ロイロット博士の屋敷へと向かう
シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンの前の芝生の上を、
博士が飼っているヒヒが横切って行った。


2023年11月28日火曜日

アガサ・クリスティー作「予告殺人」<英国 TV ドラマ版>(A Murder Is Announced by Agatha Christie )- その4

Harper Collins Publishers 社から出版されている

「予告殺人」のペーパーバック版の表紙には、

ビル・ブラッグ氏(Mr. Bill Bragg)によるイラストが、

薔薇の花束が活けられた花瓶の形に切り取られているものが使用されている。


英国の TV 会社 ITV 社が制作したアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「「予告殺人(A Murder Is Announced → 2022年12月5日付ブログで紹介済)」(1950年)の TV ドラマ版である「Agatha Christie’s Miss Marple」の第4話(第1シリーズ)「予告殺人」の場合、アガサ・クリスティーの原作に比べると、物語の展開上、以下の違いが見受けられる。


(11)

<原作>

原作の場合、チッピングクレグホーン村(Chipping Cleghorn)の郊外にあるリトルパドックス館(Little Paddocks)の女主人レティシア・ブラックロック(Letitia Blacklock)は、同館に同居しているジュリア・シモンズ(Julia Simmons - レティシア・ブラックロックの年離れた従姉妹)ではなく、本物のジュリア・シモンズから手紙を受け取ったため、ジュリア・シモンズを名乗っていた人物と直接対峙。

すると、彼女は、本当は、資産家ランダル・ゲドラー(Randall Goedler)の反対を押し切って、駆け落ち結婚をした妹ソニア・ゲドラー(Sonia Goedler)の双子の子供の一人であるエマ(Emma)であることを白状する。また、彼女は、ルディー・シャーツ(Rudi Scherz - リトルパドックス館へ押し入ったスイス人の強盗)の殺人とレティシア・ブラックロックの殺人未遂を否定し、双子のもう一方であるピップ(Pip)とは、幼児の時以来、会っていないと答えた。

<TV ドラマ版>

TV ドラマ版の場合、レティシア・ブラックロックは、ジュリア・シモンズを名乗っていた人物の部屋に入り、彼女のパスポートを発見。そのパスポートに、ジュリア・シモンズではなく、エマ・メースフィールド(Emma Masefield)と書かれていたため、レティシア・ブラックロックは、彼女がソニア・ゲドラーの双子の子供の一人であるエマであることが判った。

レティシア・ブラックロックから指摘を受けたエマは、「自分達双子が3歳の時に、両親が離婚して、父親のアレックス(Alex)は、名字をファブリカント(Fabricant)からメースフィールドへと変更した。自分は父親に引き取られ、ピップは母親に引き取られて、それ以来、会っていない。」と答えた。


(12)

<原作>

原作の場合、上記(11)が起きるのは、エイミー・マーガトロイド(Amy Murgatroyd - 養鶏業者)が、何者かに絞殺される前である。

<TV ドラマ版>

TV ドラマ版の場合、上記(11)が起きるのは、物語の終盤、捜査主任のダーモット・クラドック警部(Inspector Dermot Craddock)が、事件の関係者全員をリトルパドックス館に集めた際である。


物語の終盤、捜査主任のダーモット・クラドック警部は、事件の関係者全員をリトルパドックス館に集める。


(1

<原作>

原作の場合、ダーモット・クラドック警部が、エドマンド・スウェッテナム(Edmund Swetlenham - 文学青年)を双子のもう一方であるピップだと指摘した際に、フィリッパ・ヘイムズ(Phillipa Haymes - リトルパドックス館に下宿している美貌の女性)が、ソニア・ゲドラーの双子の子供の一人であるピップであることを認める。

<TV ドラマ版>

TV ドラマ版の場合、レティシア・ブラックロックによって、エマであることを暴露されたジュリア・シモンズを名乗っていた人物が、フィリッパ・ヘイムズに近寄って、彼女がピップであることを指摘する。エマ曰く、「2日前に、フィリッパ・ヘイムズがピップであることが判った。」と告げた。


(1

<原作>

原作の場合、その際、ミッチー(Mitzi - リトルパドックス館で働く外国人のメイド / 料理人)が、「レティシア・ブラックロックが、ルディー・シャーツを銃で撃ったのを目撃した。」と主張するが、ダーモット・クラドック警部は、これに取り合わなかった。

暫くして、台所から悲鳴が聞こえたため、皆が台所に駆け付けると、レティシア・ブラックロックがミッチーの顔を流しに押し付けて、溺れさせようとしているところだった。そのため、レティシア・ブラックロックは、その場で逮捕される。

これは、ミス・ジェイン・マープルが、ミッチーと一緒に、犯人であるレティシア・ブラックロックに対して、仕掛けた罠であった。

<TV ドラマ版>

TV ドラマ版の場合、メイド / 料理人ミッチー・コジンスキー(Mitzi Kosinski)は、ダーモット・クラドック警部が集めた事件関係者の中に入っていなかったが、包丁を持って、突然、部屋の中に入って来ると、「あなたが、エイミー・マーガトロイドを殺したんだ!」と叫び、レティシア・ブラックロックを刺そうとした。ミッチー・コジンスキーは、皆に取り押さえられ、部屋の外へと連れ出される。

その後、台所での件は、発生しない。

また、ミッチー・コジンスキーが、レティシア・ブラックロックに対して、包丁で襲い掛かったことも、ミス・ジェイン・マープルが仕掛けた罠ではなかった。


ミス・マープルは、事件の関係者に対して、事件の真相を明らかにする。


*本当のレティシア・ブラックロックは、スイスにおいて、肺炎で既に亡くなって降り、妹のシャーロット・ブラックロック(Charlotte Blacklock)が、今まで姉のレティシアに成り済ましていた。

ルディー・シャーツは、以前、スイスの病院に務めて降り、シャーロット・ブラックロックの顔に見覚えがあったため、レティシア・ブラックロックに成り済ましたシャーロット・ブラックロックによって、殺された。

ドラ・バンナー(Dora Bunner)は、ブラックロック姉妹の幼馴染で、シャーロット・ブラックロックがレティシア・ブラックロックに成り済ましていることも知っていた。ただ、ドラ・バンナーが、レティシア・ブラックロックの愛称である「レティー(Lettie)」ではなく、シャーロット・ブラックロックの愛称である「ロティー(Lottie)」と、時々口走ることがあったため、殺された。

ルディー・シャーツが殺された際、自分は部屋の中に居らず、暗闇の中、部屋を抜け出て、ルディー・シャーツの後ろに居たことを、エイミー・マーガトロイドが思い出すことを恐れたレティシア・ブラックロックに成り済ましたシャーロット・ブラックロックによって、殺された。


事件が解決した後の展開も、原作と TV ドラマ版では、次のように異なっている。


<原作>

*メイド / 料理人ミッチーは、サウザンプトン(Southampton)で新しい職を得る。

*フィリッパ・ヘイムズ(ピップ)とジュリア・シモンズ(エマ)の2人が、ゲドラー家の財産を相続する。

*エドマンド・スウェッテナムとフィリッパ・ヘイムズは結婚して、チッピングクレグホーン村に住むことになる。

<TV ドラマ版>

メイド / 料理人ミッチー・コジンスキーのその後の顛末については、言及されていない。

*フィリッパ・ヘイムズ(ピップ)とジュリア・シモンズ(エマ)の2人が、ゲドラー家の財産を相続することになる。

*エドマンド・スウェッテナムとフィリッパ・ヘイムズが結婚する展開にはならない。TV ドラマ版の場合、飲酒癖のため、妻に離婚されたアーチー・イースターブルック大佐(Colonel Archie Easterbrook - インドから戻った軍人)とサディー・スウェッテナム(Sadie Swetlenham)と交際しているが、彼女の息子であるエドマンド・スウェッテナムは、そのことを快く思っていなかったが、事件解決後、サディー・スウェッテナムが、アーチー・イースターブルック大佐とエドマンド・スウェッテナムの2人の手を引いて、リトルパドックス館を仲良く後にする場面が描かれている。

*資産家ランダル・ゲドラーの妻で、長らく病床にあったベル・ゲドラー(Belle Goedler)が亡くなる場面を以って、物語は最後を迎えるのであった。


ちなみに、犯人のレティシア・ブラックロックを演じた Zoe Wanamaker は、英国の TV 会社 ITV 社が制作した「Agatha Christie’s Poirot」において、アリアドニ・オリヴァー(Ariadne Oliver - 探偵作家で、ポワロの友人)も演じている。

なお、アリアドニ・オリヴァーが登場する作品は、以下の通り。


*第10シリーズ / 第55話「ひらいたトランプ(Cards on the Table)」

*第11シリーズ / 第58話「マギンティ夫人は死んだ(Mrs. McGinty’s Dead)」

*第11シリーズ / 第60話「第三の女(Third Girl)」

*第12シリーズ / 第63話「ハロウィーンパーティー(Hallowe’en Party)」

*第13シリーズ / 第66話「象は忘れない(Elephants Can Remember)」

*第13シリーズ / 第68話「死者のあやまち(Dead Man’s Folly)」


2023年11月27日月曜日

カナレット(Canaletto)- その2

ヴェネツィア共和国の景観画家 / 版画家である
ジョヴァンニ・アントーニオ・カナレット(Giovanni antonio Canaletto:1697年ー1768年)作
「Venice: the Bacino di San Marco from San Giorgio Maggiore」(1735 - 1744) -
ロンドンのウォレスコレクション(Wallace Collection → 2014年6月15日付ブログで紹介済)で
筆者が購入した絵葉書から抜粋。


ヴェネツィア共和国(Republic of Venice)の景観画家 / 版画家であるカナレット(Canaletto)こと、ジョヴァンニ・アントーニオ・カナール(Giovanni Antonio Canal:1697年ー1768年)は、1697年、画家 / 劇場舞台背景制作者のベルナルド・カナール(Bernardo Canal:1664年ー1744年)の子として、ヴェネツィア(Venice)に出生すると、父親の下で見習いを始め、ローマにおいて、父親と一緒に、劇場舞台背景制作に携わった。

彼は、1719年にローマからヴェネツィアに戻って来た後、絵画の制作を開始した。


カナレットは、生地のヴェネツィアをパノラマ風に描き、写真のような絵画を数多く残した。

彼は、大商人で、ヴェネツィアにおける英国商人の代表でもあったジョーゼフ・スミス(Joseph Smith:1682年ー1770年)をパトロンとした。ジョーゼフ・スミスは、カナレット作品の収集家であるとともに、カナレット作品を他の英国人へ売る画商でもあった。ジョーゼフ・スミスは、1744年から1760年までの間、英国のヴェネツィア領事を務めている。


ヴェネツィア共和国の景観画家 / 版画家である
ジョヴァンニ・アントーニオ・カナレット(Giovanni antonio Canaletto:1697年ー1768年)作
「Venice: the Bacino di San Marco from the Canale della Giudecca」(1735 - 1744) -
ロンドンのウォレスコレクションで筆者が購入した絵葉書から抜粋。


カナレットは、1746年から1756年までの間、英国に滞在。特に、彼は、1749年から1752年までの間、ロンドンのソーホー地区(Soho)内にあるビークストリート41番地(41 Beak Street)に居住。

英国滞在中に、彼は、ロンドンの他に、ウォーリック城(Warwick Castle → 2023年8月28日 / 8月30日付ブログで紹介済)やアニック城(Alnwick Castle)等の風景作品を多く制作した。


カナレットの作品を収集したジョーゼフ・スミスは、自分のコレクションである絵画50点と素描140点以上を、1762年位、ハノーヴァー朝(House of Hanover)の第3代英国王であるジョージ3世(George III:1738年ー1820年 在位期間:1760年ー1820年)に対して、売却している。これにより、英国王室は、カナレット作品の最大の収集家となっている。


英国からヴェネツィアに戻ったカナレットは、1768年4月19日に没した。


2023年11月26日日曜日

コナン・ドイル作「まだらの紐」<グラフィックノベル版>(The Speckled Band by Conan Doyle )- その2

ペトル・コプルによるグラフィックノベル版の場合、
コナン・ドイルの原作とは異なり、
シャーロック・ホームズは、一人で
事件の依頼人であるヘレン・ストーナーの訪問を受ける。
従って、ジョン・H・ワトスンは、同席していない。


チェコ共和国(Czech Republic)ヴィソチナ州トシェビーチ郡の都市トシェビーチ出身のイラストレーターであるペトル・コプル(Petr Kopl:1976年ー)によるグラフィックノベル版「まだらの紐(The Speckled Band)」の場合、サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)の原作に比べると、物語の展開上、以下の違いが見受けられる。


(1)

<原作>

原作の場合、「ボヘミアの醜聞(A Scandal in Bohemia → 2022年12月18日 / 2023年8月6日 / 8月9日 / 8月19日付ブログで紹介済)」事件は、1888年3月20日に、また、「まだらの紐」事件は、1883年4月初めに発生したと明記されている。

<グラフィックノベル版>

グラフィックノベル版の場合、1880年の冬から1881年の春にかけて発生したものと、ペトル・コプルによって設定されている。


(2)

<原作>

原作の場合、事件の依頼人であるヘレン・ストーナー(Helen Stoner - 双子の妹)が、早朝にベイカーストリート221B(221B Baker Street → 2014年6月22日 / 6月29日付ブログで紹介済)を訪れたため、午前7時15分に、ジョン・H・ワトスンは、シャーロック・ホームズに起こされる。そして、ワトスンは、ホームズと一緒に、ヘレン・ストーナーから事件の説明を受ける。

<グラフィックノベル版>

グラフィックノベル版の場合、シャーロック・ホームズは、ヘレン・ストーナーの訪問を受けて、一人でヘレン・ストーナーによる事件説明を受けている。従って、ジョン・H・ワトスンは、同席していない。その結果、サリー州(Surrey)のレザーヘッド駅(Leatherhead Station)経由、ストークモラン(Stoke Moran)へと向かう列車の中で、ワトスンは、ホームズに対して、事件の説明を求めている。


「まだらの紐」事件の事情を知らないジョン・H・ワトスンは、
サリー州のレザーヘッド駅へと向かう列車の中で、
シャーロック・ホームズに対して、説明を求めた。


(3)

<原作>

原作の場合、ヘレン・ストーナーの部屋、最初の被害者で、ヘレンの双子の姉であるジュリア・ストーナー(Julia Stoner)の部屋とグリムズビー・ロイロット博士(Dr. Grimesby Roylott - ジュリア・ストーナーとヘレン・ストーナーの義父)の部屋の3つは、全て隣り合っているという設定だったと思う。

<グラフィックノベル版>

グラフィックノベル版の場合、グリムズビー・ロイロット博士の部屋とジュリア・ストーナーの部屋の2つのみが隣り合っており、ヘレン・ストーナーの部屋だけ、別棟にあり、ゲストルームと隣り合っている設定に変更されている。


ペトル・コプルによるグラフィックノベル版の場合、
コナン・ドイルの原作とは異なり、
グリムズビー・ロイロット博士の部屋とジュリア・ストーナーの部屋は、
建物の右翼に、そして、
ヘレン・ストーナーの部屋とゲストルームは、
建物の左翼に位置している。

具体的に言うと、グリムズビー・ロイロット博士の部屋とジュリア・ストーナーの部屋は、建物の右翼にあり、ヘレン・ストーナーの部屋とゲストルームは、建物の左翼にある。


(4)

<原作>

原作の場合、ヘレン・ストーナーが辞去した後、グリムズビー・ロイロット博士がベイカーストリート221Bへと乗り込んで来て、シャーロック・ホームズとのやりとりに激怒した彼は、そこにあった火搔き棒をひん曲げてしまう。

グリムズビー・ロイロット博士がベイカーストリート221Bから出て行った後、ホームズは、グリムズビー・ロイロット博士がひん曲げた火搔き棒を、元の通り、真っ直ぐに戻してしまう。

ハドスン夫人(Mrs. Hudson)は、その場に同席していない。

<グラフィックノベル版>

グラフィックノベル版の場合、ヘレン・ストーナーが辞去した後、ベイカーストリート221Bへと乗り込んで来たグリムズビー・ロイロット博士は、シャーロック・ホームズとのやりとりに激怒して、そこにあった火搔き棒をひん曲げてしまう。


ヘレン・ストーナーが帰った後、ベイカーストリート221Bに押しかけて来た
グリムズビー・ロイロット博士は、
シャーロック・ホームズを威嚇するために、
そこにあった火搔き棒をひん曲げてしまう。


グリムズビー・ロイロット博士が出て行った後、ホームズは、調べもののために、直ぐに外出してしまう。

その場に同席したハドスン夫人は、グリムズビー・ロイロット博士がひん曲げた火搔き棒のことで、ホームズに対して、強くクレームをする。


グリムズビー・ロイロット博士がひん曲げた火搔き棒をそのままにして、
調べもののために外出したシャーロック・ホームズに対し、
ハドスン夫人は、強くクレームした。

ホームズが、グリムズビー・ロイロット博士によってひん曲げられた火搔き棒を、元の通り、真っ直ぐに戻すのは、「まだらの紐」事件が解決して、ベイカーストリート221Bへと戻った後である。


「まだらの紐」事件が解決した後、シャーロック・ホームズは、
グリムズビー・ロイロット博士がひん曲げた火搔き棒を、
元の通り、真っ直ぐに戻した。

(5)

<原作>

原作の場合、シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンの2人が、サリー州のレザーヘッド駅経由、ストークモランへと向かうために、列車に乗った駅は、ウォータールー駅(Waterloo Station → 2014年10月19日付ブログで紹介済)である。


ウォータールー駅の正面玄関


<グラフィックノベル版>

グラフィックノベル版の場合、シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンの2人が列車に乗った駅は、チャリングクロス駅(Charing Cross Station → 2014年9月20日付ブログで紹介済)へと変更されている。


チャリングクロス駅において、シャーロック・ホームズの到着を待つ
ジョン・H・ワトスン。

ストランド通り(Strand)に面しているチャリングクロス駅の正面


2023年11月25日土曜日

チャールズ・ディケンズの世界<ジグソーパズル>(The World of Charles Dickens )- その7

画面中央の男性(右手に原稿の束を、左手に羽根ペンを持った男性)が、
英国の小説家 / 推理作家 / 劇作家であるウィリアム・ウィルキー・コリンズである。
彼の左側に立つ女性は、彼が1859年から1860年にかけて
チャールズ・ディケンズ主宰の雑誌に連載した「白衣の女」に登場する
アン・キャサリックである。


英国の Laurence King Publishing Group Ltd. より、2021年に発売されたジグソーパズル「チャールズ・ディケンズの世界(The World of Charles Dickens)」のイラスト内には、ヴィクトリア朝を代表する英国の小説家であるチャールズ・ジョン・ハファム・ディケンズ(Charles John Huffam Dickens:1812年ー1870年)や彼が生きた時代の人物、そして、彼の作品に登場するキャラクター等が散りばめられているので、次回以降、順番に紹介していきたい。


今回紹介するのは、推理小説「月長石(The Monnstone → 2022年9月30日 / 10月13日付ブログで紹介済)」(1868年)の作者で、ヴィクトリア朝時代(1837年-1901年)に活躍した英国の小説家 / 推理作家 / 劇作家のウィリアム・ウィルキー・コリンズ(William Wilkie Collins:1824年ー1889年 → 2022年9月2日 / 9月4日付ブログで紹介済)が発表した推理小説 / 恋愛小説「白衣の女(The Woman in White)」(1860年)である。


「白衣の女」は、チャールズ・ディケンズが主宰する雑誌「All the Year Round」に、1859年11月から1860年8月まで連載され、連載後直ぐに出版されると、1860年11月までに第8版まで重ねる大ヒットとなり、書店には長い行列ができた。


「白衣の女」の場合、1849年から1850年にかけて、時代設定が為されている。


ロンドンに住む青年画家であるウォルター・ハートライト(Walter Hartright)は、ある夜、荒野を散歩中、白衣の女性に呼び止められ、道を尋ねられた。

彼は、友人で、イタリア語の教師であるペスカ教授(Professor Pesca)による推薦を受け、カンバーランド(Cumberland)にあるリメリッジハウス(Limmeridge Hose)において、美術教師をすることになっていたが、白衣の女性は、何故か、彼の就職先に詳しい上に、ハンプシャー州(Hampshire)ブラックウォーターパーク(Balckwater Park)の所有者である準男爵パーシヴァル・グライド(Sir Percival Glyde, Baronet)のことを非常に恐れていた。

後で、彼は、警察官から、白衣の女性が精神病院から脱走したアン・キャサリック(Anne Catherick)であることを知らされた。


翌日、カンバーランドにあるリメリッジハウスに到着したウォルター・ハートライトは、驚いた。

彼の生徒となるのは、屋敷の所有者であるフレデリック・フェアリー(Frederick Fairlie)の姪ローラ・フェアリー(Laura Fairlie)と彼の異母姉マリアン・ハルコム(Marian Halcombe)の2人だが、ローラ・フェアリーの方が、白衣の女性アン・キャサリックと瓜二つだったからである。


ウォルター・ハートライトがローラ・フェアリーとマリアン・ハルコムの美術教師を始めて、2-3ヶ月すると、ウォルター・ハートライトとローラ・フェアリーの2人は、恋仲となるが、ローラ・フェアリーが、亡き父が決めた相手である準男爵パーシヴァル・グライドと結婚することを決めた。

すると、ローラ・フェアリーは、準男爵パーシヴァル・グライドとの結婚を諫める匿名の手紙を受け取るようになる。ウォルター・ハートライトは、アン・キャサリックがこの匿名の手紙を出したものと考えて、彼女の行方を探す。


カンバーランドにおいて、アン・キャサリックと再会したウォルター・ハートライトは、彼女から、驚く話を聞いた。


*アン・キャサリックは、ローラ・フェアリーの父の庶子で、2人が瓜二つであるのは、そのためだった。


*ローラ・フェアリーに遺産を集中させるために、準男爵パーシヴァル・グライドは、彼女の母ジェーン・キャサリック(Jane Catherick)と通じて、アン・キャサリックを精神病院へと入院させた。


*ローラ・フェアリーに遺産を集中させた準男爵パーシヴァル・グライドは、彼女と結婚して、彼女の財産を奪い取ろうと考えていた。


ウォルター・ハートライトの思いも虚しく、1849年12月、ローラ・フェアリーは、準男爵パーシヴァル・グライドと結婚すると、イタリアへと6ヶ月間の旅行に出かけてしまったのである。


ローラのことを愛するウォルター・ハートライトと異母妹思いのマリアン・ハルコムは、どうするのか?


2023年11月24日金曜日

アガサ・クリスティー作「杉の柩(Sad Cypress)」の原題の由来

英国の Harper Collins Publishers 社から出版されている
アガサ・クリスティー作エルキュール・ポワロシリーズ
「杉の柩」のペーパーバック版表紙


アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1940年に発表したエルキュール・ポワロシリーズ作品「杉の柩(Sad Cypress)」の原題の由来について、今回、紹介したい。

なお、本作品は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第27作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第18作目に該っている。


「杉の柩」の原題である「Sad Cypress」は、イングランドの劇作家 / 詩人であるウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare:1564年ー1616年 → 2023年5月19日付ブログで紹介済)作の喜劇「十二夜(Twelfth Night, or What You Will → 2023年6月9日付ブログで紹介済)」(1601年 / 1602年頃)の第2幕第4場に出てくる歌詞が由来となっている。

なお、「十二夜」の副題は、「御意のままに」となっている。


Come away, come away, death,

And in sad cypress let me be laid;

Fly away, fly away, breath;

I am slain by a fair cruel maid.

My shroud of white, stuck all with yew,

O, prepare it!

My part of death, no one so true

Did share it.


來をれ、最期《いまは》よ、來をるなら、來をれ、 

杉の柩に埋めてくりゃれ。 

絶えよ、此息、絶えるなら、絶えろ、 

むごいあの兒に殺されまする。 

縫うてたもれよ白かたびらを、 

縫ひ目~に水松《いちゐ》を挿して。 

又とあるまい此思ひ死。

(坪内逍遥訳)


ナショナルポートレートギャラリー
(National Portrait Gallery)で販売されている
ウィリアム・シェイクスピアの肖像画の葉書
(Associated with John Taylor
 / 1610年頃 / Oil on panel
552 mm x 438 mm)


アガサ・クリスティーの原作の場合、婚約中のエリノア・カーライル(Elinor Carlisle)とロデリック・ウェルマン(Roderick Welman)の2人が、見舞いのため、ハンターベリー(Hunterbury)の屋敷を訪れた際、エリノアの叔母で、金持ちの未亡人であるローラ・ウェルマン(Mrs. Laura Welman)が、寝たきりのベッドの中で、上記の歌詞を唱えている。


「Sad Cypress」を直訳すると、「悲しいイトスギ / セイヨウヒノキ」となるが、日本の小説家 / 評論家 / 翻訳家 / 劇作家である坪内逍遥(1859年ー1935年)や日本の英文学者 / 演劇評論家である小田島雄志(1930年ー)が「杉の柩」と訳したため、アガサ・クリスティー作「Sad Cypress」の日本語タイトルについても、「杉の柩」で定着したものと言われている。


ウィリアム・シェイクスピア作「十二夜」の歌詞は、届かない片想いへの嘆きを表しており、アガサ・クリスティー作「杉の柩」の場合、ウェルマン家の門番の美しい娘であるメアリー・ジェラード(Mary Gerrard)に心を奪われて、気持ちが離れていってしまったロデリック・ウェルマンに対するエリノア・カーライルの嘆きを重ね合わせているのではないかと思われる。


2023年11月23日木曜日

アガサ・クリスティー作「予告殺人」<英国 TV ドラマ版>(A Murder Is Announced by Agatha Christie )- その3

2016年9月15日に、アガサ・クリスティー没後40周年に際して、
英国のロイヤルメール(Royal Mail)が発行した記念切手6種類のうちの
1枚である「予告殺人」 -
リトルパドックス館内の明かりが突然消えて、部屋の扉が開き、
懐中電灯を持った謎の男(ルディー・シャーツ)が部屋に侵入して来たシーンが描かれている。
ルディー・シャーツが持った懐中電灯で照らされた部屋の壁が、時計のようにデザインされている。
明かりが消えたランプが12時を、ミス・ジェイン・マープルの横顔が描かれた絵が3時を、
午後6時半を示すスイス製時計が午後9時を、
そして、ルディー・シャーツの拳銃で狙われた女性が6時を指している。
また、その女性は右手に地元紙朝刊「ギャゼット」を持っていて、
予告殺人が掲載された広告欄が懐中電灯に照らし出されている。


英国の TV 会社 ITV 社が制作したアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「「予告殺人(A Murder Is Announced → 2022年12月5日付ブログで紹介済)」(1950年)の TV ドラマ版である「Agatha Christie’s Miss Marple」の第4話(第1シリーズ)「予告殺人」の場合、アガサ・クリスティーの原作に比べると、物語の展開上、以下の違いが見受けられる。


チッピングクレグホーン村(Chipping Cleghorn)の郊外にあるリトルパドックス館(Little Paddocks)の女主人レティシア・ブラックロック(Letitia Blacklock)は、かつて資産家ランダル・ゲドラー(Randall Goedler)の下で、秘書として働いていた。

ランダル・ゲドラーの遺産は、彼の死後、彼の妻ベル・ゲドラー(Belle Goedler)が相続したが、彼女の死期が近かった。

ベル・ゲドラーが亡くなった場合、レティシア・ブラックロックが、ゲドラー家の財産を相続するが、万が一、レティシア・ブラックロックがベル・ゲドラーよりも先に亡くなった場合、ゲドラー家の財産は、20年前に、ランダル・ゲドラーの反対を押し切って、駆け落ち結婚をした妹ソニア・ゲドラー(Sonia Goedler)の双子の子供であるピップ(Pip)とエマ(Emma)の手に渡る手筈になっていた。


捜査主任のダーモット・クラドック警部(Inspector Dermot Craddock)は、スコットランドへ赴き、病床に臥すベル・ゲドラーと面会する。

ベル・ゲドラーによると、彼女も、レティシア・ブラックロックも、ソニア・ゲドラーの一家が、現在、どこに居るのか、また、成長した双子のピップとエマの2人が、現在、どんな容貌になっているのか、知らないとのことだった。


(4)

<原作>

原作の場合、ランダル・ゲドラーの妹ソニア・ゲドラーが駆け落ち結婚をした相手の名前は、ディミトリ・スタンフォーディス(Dmitri Stamfordis)となっている。

<TV ドラマ版>

TV ドラマ版の場合、ソニア・ゲドラーが駆け落ち結婚をした相手の名前は、アレックス・ファブリカント(Alex Fabricant)に変更されている。更に、彼には、犯罪歴があったと言う設定になっている。


ベル・ゲドラーは、更に、レティシア・ブラックロックのことにも言及した。

レティシア・ブラックロックには、甲状腺腫(goitre)を患うシャーロット・ブラックロック(Charlotte Blacklock)と言う妹が居たが、医者だった姉妹の父親は、甲状腺の手術を信用していなかった。甲状腺の手術を受けられなかった結果、シャーロットの病状は悪化して、彼女は引き籠もりになった。

第二次世界大戦(1939年-1945年)の少し前に、姉妹の父親が亡くなった際、レティシア・ブラックロックは、資産家ランダル・ゲドラーのところでの仕事を辞めると、妹シャーロットをスイスへと連れて行き、甲状腺の手術を受けさせた。

レティシアとシャーロットのブラックロック姉妹は、スイスにそのままとどまり、終戦を待ったが、妹シャーロットは、結核(consumption)のため、急死してしまった。

その結果、レティシア・ブラックロックは、独りでスイスから英国へと戻って来たのである。


(5)

<原作>

原作の場合、レティシア・ブラックロックの妹シャーロット・ブラックロックについて、ダーモット・クラドック警部は、ベル・ゲドラーから、話を聞いている。

<TV ドラマ版>

TV ドラマ版の場合、シャーロット・ブラックロックに関して、ダーモット・クラドック警部は、ルディー・シャーツ(Rudi Scherz - リトルパドックス館へ押し入ったスイス人の強盗)が殺害された時点で、レティシア・ブラックロック本人から、話を聞いている。


レティシア・ブラックロックは、彼女の親友で、リトルパドックス館に同居するドラ・バンナー(Dora Bunner)のために、誕生日会を開催して、ルディー・シャーツが殺害された際、現場に居たほぼ全員をリトルパドックス館に招待した。ミッチー・コジンスキー(Mitzi Kosinski - リトルパドックス館で働く外国人のメイド / 料理人)は、ドラ・バンナーのために、「甘美なる死(Delicious Death)」と命名した特製ケーキを焼いた。


(6)

<原作>

原作の場合、リトルパドックス館で働く外国人のメイド / 料理人の名前は、単にミッチーとなっている。

<TV ドラマ版>

TV ドラマ版の場合、ミッチー・コジンスキーと、フルネームが設定されている上、ポーランド出身となっている。


(7)

<原作>

原作の場合、誕生日パーティーの後、ドラ・バンナーは、頭痛を訴えて、レティシア・ブラックロックの部屋にあったアスピリン(Aspirin - 解熱・鎮痛・消炎剤)を飲むが、翌朝、彼女が、アスピリンに仕込まれていた毒により、亡くなっているのが発見される。

<TV ドラマ版>

TV ドラマ版の場合、誕生日パーティーの翌朝、ドラ・バンナーが毒殺されているのが、メイドに代わって、朝食を運んで来たレティシア・ブラックロックによって発見されるが、頭痛とアスピリンの件については、映像上、言及されていない。


(8)

<原作>

原作の場合、アーチー・イースターブルック大佐(Colonel Archie Easterbrook - インドから戻った軍人)には、ローラ・イースターブルック(Laura Easterbrook)と言う若妻が居る。従って、アーチー・イースターブルック大佐は、スウェッテナム夫人(Mrs. Swetlenham)との間に、恋愛関係はない。

<TV ドラマ版>

TV ドラマ版の場合、アーチー・イースターブルック大佐は、飲酒癖のため、妻から離婚され、現在、一人暮らしとなっている。また、ロンドンに住むローラ(Laura)と言う娘が居るが、離婚後、全く会えていないと言う設定も、付け加えられている。

原作の場合、文学青年エドマンド・スウェッテナム(Edmund Swetlenham)の母の名前は、スウェッテナム夫人となっているが、TV ドラマ版の場合、サディー・スウェッテナム(Sadie Swetlenham)と、フルネームが設定されている。

TV ドラマ版の場合、アーチー・イースターブルック大佐は、現在、サディー・スウェッテナムと交際しているが、サディー・スウェッテナムの息子であるエドマンド・スウェッテナムは、そのことを快く思っていないと言う設定も追加されている。

また、ルディー・シャーツを撃った銃は、アーチー・イースターブルック大佐が机の引き出しから盗まれたものであるが、彼は、その銃の許可証を持っていなかった。彼と自分の母親の交際を快く思わないエドマンド・スウェッテナムが、警察に対して、そのことを証言したため、アーチー・イースターブルック大佐は、ダーモット・クラドック警部によって、一時、拘束されてしまうことになる。


(9)

<原作>

原作の場合、ジュリアン・ハーモン(Julian Harmon - 牧師)とダイアナ・ハーモン(Diana Harmon - ジュリアン・ハーモンの妻)の家に滞在しているミス・ジェイン・マープルは、牧師が飼っている猫がランプをショートさせて、牧師館内が停電したことから、ルディー・シャーツが殺害された際、リトルパドックス館内を停電させた方法に思い当たる。

<TV ドラマ版>

TV ドラマ版の場合、原作とは異なり、ジュリアン・ハーモンとダイアナ・ハーモンは登場しないため、ミス・マープルは、エイミー・マーガトロイド(Amy Murgatroyd - 養鶏業者)とリジー・ヒンチクリフ(Lizzie Hinchcliffe - 養鶏業者で、エイミー・マーガトロイドの同居人)の家に滞在している。ミス・マープルが、就寝前に、ベッドの上でルディー・シャーツが殺害された事件のことを検討していた際、ベッド脇にあるランプのコードのうち、剥き出しになった部分に、コップの水をかけ、家中を停電させたことから、ルディー・シャーツが殺害された際、リトルパドックス館内を停電させた方法に思い当たる。


(10)

<原作>

原作の場合、エイミー・マーガトロイドとミス・ヒンチクリフの2人が、家において、ルディー・シャーツが殺害された事件のことを振り返っていた際、ルディー・シャーツが開けたドアの横に居たエイミー・マーガトロイドは、ある人物が問題の室内に居なかったことを思い出した。その時、電話が掛かってきて、その電話を受けたミス・ヒンチクリフは、車で出かけて行く。エイミー・マーガトロイドは、ミス・ヒンチクリフが運転する車の後を追いながら、「彼女が、そこに居なかった。(She wasn’t there !)」と叫んだ。

自宅へと戻る途中、ミス・ヒンチクリフは、ミス・ジェイン・マープルを車に乗せる。自宅に戻ったミス・ヒンチクリフとミス・マープルの2人は、エイミー・マーガトロイドが絞殺されているのを発見する。

<TV ドラマ版>

原作の場合、養鶏業者で、エイミー・マーガトロイドの同居人の名前は、ミス・ヒンチクリフとなっているが、TV ドラマ版の場合、リジー・ヒンチクリフと、フルネームが設定されている。

TV ドラマ版の場合、エイミー・マーガトロイドは、台所の引き出しから包丁を取り出した際、外で鳴った雷の光を受け、ある人物が問題の室内に居なかったことを思い出した。

リジー・ヒンチクリフは、外で豚に餌を与えていた。

エイミー・マーガトロイドは、外へと飛び出して、リジー・ヒンチクリフに対して、「彼女が、そこに居なかった。」と叫んだが、生憎と、激しい雷雨のため、リジー・ヒンチクリフの耳には届かなかった。

雷雨の中、びしょ濡れになる洗濯物を取り込もうとするエイミー・マーガトロイドの背後から、何者かが近付き、彼女を絞殺。

寝室から階下へと降りて来たミス・ジェイン・マープルが、窓から、外に倒れているエイミー・マーガトロイドを見つけて、外へと駆け出す。エイミー・マーガトロイドの元に駆け付けたものの、為す術もないミス・マープルが、悲しみに暮れているところへ、リジー・ヒンチクリフがやって来て、驚愕する。